2015.01.08

寝坊、寝不足、二度寝……あなたの睡眠の悩みに答えます!

福田一彦×荻上チキ

科学 #荻上チキ Session-22#睡眠#寝不足

どうして毎日眠たいの? どうして夜は眠れないの? 私達と切っても切り離せない睡眠。最先端の研究からその秘密にせまります。TBSラジオ 荻上チキSession-22 「寝坊、寝不足、二度寝……あなたの睡眠の悩みに答えます!」より抄録。

「気合い」だけじゃどうにもならない

荻上 今夜のゲストは、江戸川大学社会学部人間心理学科教授の福田一彦さんです。よろしくお願い致します。

福田 よろしくお願いします。

荻上 福田さんは日本睡眠学会の理事も務めておられると伺いました。福田さん自身はよく眠れますか?

福田 人に早寝早起きしろと言っている手前、なるべく早寝早起きして健全な眠りを心がけています。

荻上 身をもって研究成果を実感しているんですね。睡眠の研究と言ってもテーマは人によって随分違うのでしょうか。

福田 そうですね。私は出身が心理学なので、睡眠障害のような病気ではなく、子供の眠りの発達を中心に現在は研究しています。今取り組んでいるのは保育園児の昼寝の問題です。保育園では日課として昼寝の時間がありますが、幼児期は昼寝が段々と少なくなっていく時期なんです。実際、昼寝の為に夜寝る時間が遅くなって、日中の子供の状態に悪影響を及ぼしています。そのような研究を通して、社会を変えていこうと思っています。

荻上 政治にも関わってきますね。「睡眠基本法」とか作ってほしいですね。

福田 実際に「睡眠」は一般の方からの誤解が非常に多い分野です。教育の中に睡眠の知識を与えられるようなものを入れておくなど、睡眠に関する知識を得る機会はもっと与えられるべきだと思います。たとえば、睡眠というとどうしても「気合い」と言われたりとかですね……。

荻上 聞きますね、「気合い」。

福田 実は眠りというのは脳の中にある生物時計でコントロールされているので、意志だけじゃどうにもならない所があります。眠りの基本的なメカニズムを知った上で考えていただきたいですね。

荻上 事前に、番組スタッフが新橋でインタビューを行ったのですが、お酒飲んで失敗という方も多かった。お酒と睡眠との関係はいかがですか。

福田 アルコールには催眠作用といって眠気を催す作用があります。ですから飲んでいる間に居眠りしてしまう事もあります。アルコール自体は実は比較的早く分解されてしまうので、暫くすると急に蘇る方いますよね。

荻上 いますね(笑)。

福田 もう一つ利尿作用もあるので、眠りを促す作用もありますけれども、途中でおしっこをしたくなって当然目が覚めます。そのため全体としては睡眠の内容を悪くしてしまう事になりますので睡眠薬代わりに使うのは絶対に良くありません。

羊が一匹、羊が二匹……

荻上 こんな質問メールも来ています。「歳のせいか最近寝付きが悪くなって困っている40代のおっさんであります。以前は眠れないと思った時には社民党の今後など不毛なことを考えれば2~3分で眠る事が出来ましたが、最近は民主党の議席回復の方法など相当不毛な事を考えているんですが中々寝付けません。頭の中で何を考えればよく眠れるのでしょうか」。確かに、よく羊を数えたりしますよね。

福田 考えている内は眠れないと思うんですよね。

荻上 ははは、そうですよね。

福田 羊を数えるという方法は世界中で行われています。そこで実際にイギリスの研究者が、羊を数えると眠れるか実験をされました。

羊を数える事と比較したのは、綺麗なビーチや滝を眺めながらなど、リラックスしている所を想像する場合です。そうしたら綺麗な景色の場所で横になっている姿を想像した方がリラックスして眠れ、羊は全然だめだったという結果になりました。

では何故世界中で行われているかというと、恐らく羊飼いの逸話が理由です。昔は羊一頭ずつに税金が掛けられていたので、一頭でも逃げると大変な騒ぎになりました。ですからちゃんと檻の中に戻ったかどうかを数えるのですが、しかし単調な作業なのでその間に羊飼いが寝てしまったという話。勿論、実際に眠る際には役に立たない(笑)。

荻上 それも実証されているんですね。ちなみに、街のインタビューでは、「金縛り」によくあうという方もいらっしゃいました。これも睡眠障害なんですか?

福田 先ほど研究の紹介で発達の話をしましたけど、それとは別に金縛りの研究もやっています。よく心霊現象なんて言われますが、これはいわゆる夢を見る睡眠であるレム睡眠時に起こる現象で、夢と非常によく似ています。但し夢と違うのは、本人が起きていると思ってしまうところ。そのくらいはっきりと色んな物が見える。ただ実は、金縛りの最中に見えている部屋の様子などは全部、夢と同じような幻覚なんです。

金縛りは人工的に誘発する事が出来まして、赤外線のモニターカメラで寝ている方の顔を写していてもずっと目は閉じたままなんです。ところが起こしたら金縛りでしたと、部屋の様子がよく見えましたと、それから先生が白衣を着て入ってきました、と。でもそんな事は起こっていないんですよ。頭の中だけで再現されたものです。

荻上 ええー、錯覚なんですか。 驚きました。睡眠にまつわるこんなメールも来ております。

「当時私は午後5時からの仕事をしていたんですが、起きて目覚ましを見たらなんと6時。着替えもそこそこ家から飛び出してチャリンコに飛び乗り勢い良く走りだしたんですが、暫くしてふと夕暮れ時にしては人が少ないなと思い、冷静になって辺りを見回してみると、朝6時である事に気が付き一人苦笑いしてしまいました。ちなみに私の睡眠導入法はYouTubeで見つけた”World Most Relaxing Music”という音楽を掛ける事です」

とありますが、ヒーリング音楽を聞くのは効果的なのでしょうか。

福田 眠りそのものに作用する催眠術みたいな音楽はありません。ただリラックスするなど、眠りの準備状態を作るという意味では、好きな音楽を聴くなどするのはいいと思います。

荻上 香りはどうですか、アロマなどを使っている方もいると思いますが。

福田 女性に多いのですが、入眠儀式と呼ばれるものがあり過ぎる人の方がむしろやや神経質で病的だというデータもあります。寝なくても死なないやくらいに思っている人の方がよく寝たりしますね。

寝てないですね、日本人

荻上 こんなメールも来てます。

「睡眠の悩みですが起きたい時間よりかなり早く起きてしまう事があるのです。早朝覚醒っていうのかな、疲れていても3時間くらいしか寝ていられなくて、もう一回寝ようとしても全然寝られないという感じ。ストレス掛かるとそうなるとは聞きますが、何か回避する方法はないでしょうか。」

福田 その方が、何歳かは分かりませんが、ある程度年齢が高くなってくると早朝覚醒が出てくるのは仕方がありません。注意睡眠といって、翌朝の事を気にしている時には早めに目が覚めるのも自然なことです。ただ早朝覚醒は抑うつの自覚前に出てくるサインである場合もあり得るので、もしその原因となるような事があるならば気にされた方がいいかもしれません。

荻上 眠りの質というのはどういう風に分けられるんですか。

福田 質の善し悪しを気にされて、深い眠りをいっぱい取れた方がいいと考えられている方が多いですね。しかしその深い眠りを取ったかどうか、自分自身は自覚出来ません。

実際睡眠の主観的な質を左右しているのは寝付くまでの時間や夜中に何回目覚めたかなど、結局意識のある時間なんです。ですから短い時間で寝付けて朝までぐっすり目が覚めないというのが大事だと思います。

荻上 そもそも日本人は、平均的に寝ていないというデータがいくつかありますね。

福田 その通りなんです。OECD(経済協力開発機構)のデータでも必ず日本と韓国など東アジアの国が最も睡眠が短いと出てきて、日本は大抵1位か2位です。世界的に見てもこれは異様というか異常です。他の国では大人でも7時間~8時間くらい寝ているのが普通ですので、日本人はかなり夜の睡眠時間が短くなっていると言えます。

荻上 普段、睡眠6時間半~7時間ほど寝ているという話をすると「そんなに寝てんの?」って反応が返ってきますよね。それくらい、「寝ないことに慣れている」ということですね。

福田 今の大学生も大体6時間くらいが平均で、それで十分だと思っている子がほとんどです。ところが世界中を見ると大学生でも7時間半くらい寝ている所が多いです。

荻上 6時間で十分だというのはどうなんでしょうか。慣れているとか、日本人はそれで足りるとかなのか、それとも誤解なのか。

福田 完全に誤解ですね、大学生は6時間では十分じゃないですよ。だって昼間ちゃんと寝てますもん、授業中に。

荻上 そういえばそうですね(笑)。

福田 寝てしまうのは夜の睡眠が十分じゃないからで、夜ちゃんと寝ていればあんな事は起きないはずです。

睡眠と照明

荻上 なぜ日本の睡眠時間は短いのでしょうか。

福田 色んな理由があって一言では言えませんが、韓国と日本と台湾など東アジアの国が非常に短いという事は、ヒントになり得ます。例えばこれらの国は住宅照明に蛍光灯を使っていますが、欧米では皆無です。

実は蛍光灯の発する昼光色や昼白色の光には、最近問題になっている短い波長の光、いわゆるブルーライトを多量に含んでいます。それが睡眠に対して非常に悪い影響をもたらしている。ですから家の中の照明を見直していくのは重要です。

荻上 例えば夜は、リラックスするためにも間接照明を使った方がいいという話をよく聞きます。それは合っていますか?

福田 合っています。ブルーライトをあまり含まない照明というのが重要なんです。最近話題のLED照明、3色使っているかのような説明がされていますが、実際にはブルーだけが使われているものがほとんどです。黄色の光を出す蛍光物質との混色で白く見せているので、実際の光源は非常に強い青なんです。ですから夜の照明としてLEDはまだちょっと様子見た方がいいんじゃないかなと思いますね。

荻上 となると、従来からあるようなオレンジの白熱灯電球を使ったりする方がよいと。

福田 もうほとんど売ってないですが、夜そういうものを使うのはいいことだと思います。

荻上 なるほど。福田さんに今日持ってきていただいた機械は、明るさを計るものですよね。

福田 照度計ですね。これで計るとlx(ルクス)という照度の値が出てきますが、機械で計ったものと我々の目の感じ方というのは随分違うんです。我々の目の感覚は対数に従います。つまり物理的なレベルで言うと10倍違うものが、我々の目だと2倍にしか感じられない。

分かりやすい例を挙げると、室内撮影をしているカメラを急に窓の方に向けた時、真っ白くなった後に段々絞りが追い付いて外が見えてきますよね。でも我々の目は室内と窓の外を同時に見る事が出来る。これは光の強さを上手く調節してくれているからこそなので、そういう意味ではいいんです。

でも逆に言うと外と家の中での明るさの違いがよく分からない目でもあります。明るい部屋にいれば目から光が入っていいんじゃないかという思われがちですが、実際の照度は屋外と屋内では随分違います。家の中に閉じこもっている方は簡単に昼夜逆転をしてしまいますが、その理由は外に出て目から光を取り入れていないからですね。

荻上 昼は、屋内にいても明るいと感じてしまうのですが。

福田 でも実際は照度で言うと屋内は精々300~500lxなのに対し、屋外だと曇った日でも3000lxくらいあります。快晴だと10000lx軽く超えてきますので、全く違います。

荻上 測ってみると違うんですね。

安眠のための工夫

荻上 無印良品くらしの良品研究所と、オムロンヘルスケア株式会社が行った、「眠りのための工夫をしているか」というアンケートがありますね。こちらでは54.1%、実に半分以上の方が「工夫している」と答えていました。新橋の駅前で安眠のために行っている工夫も訊いてきました。

「出来るだけ休日でも、普段と起きる時間をずらさないようにしたり、あとはゴールデンタイムって言われている10時から2時くらいに出来るだけ寝るとかやっている」

「寝付きはいいので結構すぐ寝れるんだけど、途中でトイレ起きたりするとまた寝れなくなっちゃったりするんで、トイレとかやること全部済ませて心配事を無くして寝る」

「食べてからすぐ寝ると寝つきがいい」

といった反応がありました。休日でもちゃんと起きるという方いらっしゃいましたが、どうでしょう。

福田 とてもいいと思いますよ。実際は普段寝られないからといって休日に昼まで寝ているという方が多いんです、寝溜めのパターン。

寝溜めというのは絶対に出来ないんですよ。休日でも平日でも大体同じ時間に寝て大体同じ時間に起きるというのをずっと続けるのが一番いい。例えば休日の前は大体夜更かしになっている人は結局後ろにずれていて、睡眠時間を朝寝坊で稼いでいる。いわば週末だけ海外旅行して、時差ボケ状態を自分で作り出しているようなものなんです。

荻上 ええと、完全論破されていますね、私の寝方の悪さが(笑)。先ほど「ゴールデンタイム」という発言もありましたが、これはどうでしょう。

福田 睡眠についてはデマが多いんですが、これもその一つです。この時間帯に成長ホルモンが出てお肌を綺麗にすると言われていますね。

実はホルモンには2種類ありまして、リズム依存性といって寝ていても起きていてもある一定の時刻になると出てくるというもの。もう一つは寝ないと出ないものでこちらは時間関係なく寝れば出るというもので、成長ホルモンは後者です。

荻上 じゃあゴールデンタイムなんてないじゃないですか。

福田 そうなんです。成長ホルモンは睡眠依存性のホルモンなので深い眠りをすればいつでも出る、別に10時から2時なんて決まってないんです。

荻上 基本的には普通に寝ていたら出ているものなんですね。

福田 勿論、規則正しく早寝早起きというのが基本です。成長ホルモン以外にも、リズムがずれてしまうと発ガン性が高くなったりだとか、動脈硬化が進んで心臓発作や脳梗塞の原因になったりするとも知られていますので、お肌だけの問題じゃありません。

荻上 早寝早起きって何度か会話に出ていますけれど、私たちは22時から25時までラジオをしているので、普通の人の早寝早起きの時間帯では暮らせません。基準みたいなものはあるんでしょうか。

福田 どこかで折り合いをつけなければいけないのですが、一番いけないのは色んな時間帯に寝たり起きたりする事です。日によって寝る時間が違うとか、細切れに2~3時間ずつ一日の内に何回も寝るとかは、最悪のパターンです。

荻上 ぐうの音も出ません。

早寝早起きなんて出来ない!

荻上 メールでの質問が来ております。

「金融関係という仕事柄、夜中も起きていけなければいけない時があります。毎日7~8時間のまとまった睡眠時間が確保出来ません。昼寝などで時間数をカバーしているつもりなのですが、どうも眠い。ちょこちょこ寝ながら眠りを確保するのは無謀ですか?寝方のコツなどありますか?」

福田 無謀どころか絶対にやっちゃいけない事ですね。量を確保するとしても、夜眠るのを中心にしてください。睡眠時間確保に集中するあまり昼間など普段寝ないような時間帯にちょこちょこ寝るというのは、かえって不健康になります。

荻上 じゃあこちらのメールはどうですか。

「私は介護の現場で働いていて、出勤時間が7時半/9時/11時半16時半の4パターンがあって、午前中の出勤時間の場合は朝4時半に起きて、夜勤の場合は14時に起きるようにしているんですが、こういう交代勤務の人にとって一番よい睡眠方法ってあるんでしょうか。」

早寝早起きがいいのはとてもよく分かりました。でも出来ないんです、セカンドベスト教えてください、ということだと思うのですが。

福田 これは非常に難しいですね。ただ16時に出勤するからといってその前に長く寝てしまうのはさっき言った時差ボケを作り出しているようなものなので、基本的には夜のどこかで必ず寝るようにする。これは雇用環境次第なので中々解決は難しいですが、色んな時間帯に寝るのは良くない事だけは頭のどこかに入れておいてください。

荻上 以前睡眠学の方に来ていただいた時に、そうやってリズムがずれた場合、起きている時は外に出て、身体に「今、昼なんだ」と分からせるようにするなど、工夫で多少のカバーが効くと聞きました。

福田 夜勤の後などですよね。その際に「光」は非常に重要なんです。目から入った光の情報は脳の中の生物時計に届くので、外に出るというのは非常に重要で有益な方法だと思います。

荻上 食べてすぐ寝ます、という方がいました。これはいかがですか。

福田 お腹が空いてしょうがない時にスナックを食べるというのは眠れない時の方法として推奨されてはいます。ただ寝る直前の食事は肥満のもとですし、また夜更かしをして夜型の眠りになっているだけで、同じ量食べても太りやすいですね。

一定のリズム

荻上 さて、こんなメールも来ています。

「常夜灯ではなく真っ暗にして、目覚まし時計を二つ枕元に置き(アラームを30分ずらしてセット)、寝る時に朝起きたい時間と同じ数枕を叩きます。明日7時に起きたいから7回叩く。そして「明日7時、明日7時」と呟きながら眠ります。これがいつもの生活スタイルです」

福田 やっている事と願っている事がまるで矛盾している……。そもそも規則正しい生活をして規則正しい睡眠をとっていれば大抵同じ時刻に目が覚めるはずです。

荻上 先生がずっと言っているのはベストな眠りというのをまず知ってくれと。そしてやっぱり早く寝るというのが出来るんだったらした方がいい、という事ですよね。

福田 そうですね。例えば夜更かししちゃった場合でも、その分朝寝坊になろうではなく、いつもと同じ時間に起きてください。普段より短い睡眠になっちゃったとしても。足りなかったとしたら次の夜に取ってください、昼間ではなくて。夜寝る、昼間はちゃんと起きてるという一定のリズムを守る事をまず頭に置いておいていただきたい。

荻上 自分自身の気を付け方はいくつか伺いました。照明とか早寝早起きとか。でも子供の寝かしつけについて気になるという方が多いんですよ、これまた。

「先日ものすごいものを見てしまいました。夜中「ゴトゴト」という音に目が覚め、廊下に出てみるとそこにいたのは6歳の我が息子。「何してるの?」と声をかけると「ちょっと友達と遊んでくるの」との答えが。「何言ってるの、早く寝なさい」と私が叱ると「はーい」と答え自分の寝床へ。翌朝息子の話をすると「え、え、何で夜中に遊びに行くの?」との答えが。実は昨日も似たような行動を……。母親としてちょっと心配になっています。病院に行ったほうがいいものなのでしょうか。」

これはいわゆる夢遊病という事になりますか。

福田 一般的に夢遊病と呼ばれるものですけれども、専門的には睡眠時歩行と言います。”夢”っていう字書きますけど、実際には夢とは全く無関係です。いわゆるノンレム睡眠といって夢と直接関係をしない睡眠の時に不十分な覚醒状態になって、頭が寝ぼけた状態で起きてる。本人の頭はちゃんと働いていないので、記憶にも残らないという事です。少し年齢が経つとこれは自然に少なくなっていくと思います。

荻上 寝付きが悪い子供をどうしたらいいですかという質問も今日はたくさん来ています。

福田 昔と比べてお子さんの寝る時間はものすごく遅くなっています。我々の頃は子供は8時に寝るもんだと言われていましたが、今は小学生でも10~11時ぐらいまで起きているのは別に珍しくなくなっています。

まず子供だけでも早く寝かせる習慣を付けるというのは非常に大事です。あとは幼児期だと保育園で昼寝のある所はまだ多いので、そのせいで夜眠れなくなるというケースは多いですね。

荻上 眠れないって話とはまた別に、起きやすくするコツはどうなんですか。合った目覚ましの掛け方だとか。例えば3の倍数で眠ると良いと聞いたことがあります。

福田 90分の倍数の話ですかね。レム睡眠の周期が90分だからと言う話ですけれど、レム睡眠の周期は実際には、正確に90分というわけではないのであまり意味がありません。またレム睡眠時に起きると夢を覚えています。夢はどちらかと言うと悪夢の方が多いので、その最中にわざわざ起きると一日が悪夢から始まる事になりかねませんので、90分の倍数というのはあまり気にする必要はありません。

「長く寝た時より短い睡眠の時の方がバッと起きれたりするのは睡眠が浅いからですか?ベストな睡眠は何時間なんでしょうか。」

福田 先ほどから申し上げているように、量より規則性をまず第一に考えていただきたいのと、長けりゃいいってもんでもないんです。短すぎても長すぎても死亡率が上がるとか、動脈硬化が悪化するというデータもあります。

荻上 今日はいつにも増してメールの数が多いです。このの番組に出る事によって福田さんは夜更かししている事になりますけどね(笑)。

という事で今夜は江戸川大学社会学部人間心理学科教授の福田一彦さんをお迎えしました。ありがとうございました。

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プロフィール

福田一彦心理学

1958年生まれ。江戸川大学社会学部人間心理学科教授。睡眠の発達や発達期における睡眠問題の研究、健常者における睡眠麻痺(金縛り)の研究などを行っている。1981年早稲田大学第一文学部卒業、1988年早稲田大学文学研究科博士後期課程単位取得退学、1987年学術振興会特別研究員、1989年東邦大学より医学博士授与(論文博士)、1988年より福島大学教育学部講師、1991年より同助教授、2003年より同教授、2004年より福島大学共生システム理工学類教授、1993年より1994年に文部省在外研究員としてBrock University (Ontario, Canada) で研究に従事。2010年より現職。著書にPHPサイエンスワールド新書『金縛りの謎を解く』2014年などがある。

この執筆者の記事

荻上チキ評論家

「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」スーパーバイザー。著書に『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『未来をつくる権利』(NHKブックス)、『災害支援手帖』(木楽舎)、『日本の大問題』(ダイヤモンド社)、『彼女たちの売春(ワリキリ)』(新潮文庫)、『ネットいじめ』『いじめを生む教室』(以上、PHP新書)ほか、共著に『いじめの直し方』(朝日新聞出版)、『夜の経済学』(扶桑社)ほか多数。TBSラジオ「荻上チキ Session-22」メインパーソナリティ。同番組にて2015年ギャラクシー賞(ラジオ部門DJ賞)、2016年にギャラクシー賞(ラジオ部門大賞)を受賞。

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