「同性カップル、里親に」報道から考える今後の課題

2017年4月5日から6日にかけて、大阪市が男性カップルを養育里親に認定したことに関して、多くの報道がありました。また、翌7日には塩崎恭久厚生労働大臣が記者会見において、同性カップルの里親を容認する発言をしました。

それらの報道を受けて、ネット上でさまざまな意見が交わされています。

 

いくつかの意見に見られる誤解、そしてこの報道から新たに見えてきた課題について述べたいと思います。

 

 

「男性カップル 里親に」のニュースは各紙が大きく報じた

「男性カップル 里親に」のニュースは各紙が大きく報じた

 

「養子縁組」ではなく「里親」のニュース

 

ネット上に、「先進国では同性婚の権利が先で、養子縁組の権利が後に認められたのに、日本は逆の動きになった。すごいことだ」というような意見が見られます。

 

しかし、それは間違いです。今回の報道は「養子縁組制度」ではなく、「里親制度」に関するものだからです。養子縁組制度の養親と養子の間には法律上の親子関係が発生しますが、里親制度の里親と里子の間にはそのような親子関係が発生しませんので、異なる制度です。(養子縁組につながる「養子縁組里親」という制度もあり、ややこしいですが、今回のケースは「養育里親」です)

 

養子縁組制度には、社会的養護(注1)の下で暮らす子どものための制度として「特別養子縁組制度」がありますが、同性カップルが特別養子縁組の養親になり、子どもを養育するためには、法律改正が必要となります。現在の日本の法律では、同性カップルは特別養子縁組の養親になれないのです。

 

(注1)社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと。(厚生労働省のHPより)

 

一部の追加報道にあるように、「里親制度」においては法律上同性カップルを排除していないのにも関わらず「運用上」里親になれない事例が紹介されています。

 

「なれない」と自治体が回答することもあれば、当事者が「なれない」と思い込んでいることもあったようです。今回は「運用上」きちんとやっていこう、という話なのです。

 

NHKが配信した記事によると、日本大学危機管理学部の鈴木秀洋准教授が、「今回、法律で排除されていない同性カップルが里親と認定されたのは、あるべき運用と言える」と述べています。まさに「あるべき運用」なのです。

 

アメリカでは、同性カップルの養子縁組が認められるよりも以前に、同性カップルの里親が子どもを引き取って養育する事例がありました。

 

偏見の強い時代には、同性カップルは行政から「あなた方のような人たちには普通の子どもを委託できない」という言い方をされ、身体に障害があるなど他の家庭から敬遠されがちなお子さんが委託されることが多かったそうです。そのような状況の中で、彼らは愛情を持ってお子さんを育て、その姿は地域の人々から尊敬を集めることになった、という話があります。

 

また、ゲイカップルがダウン症の少年の里親になるという映画『チョコレートドーナツ』(2014年公開)では、二人の関係性について、いとこ同士だと嘘をつくシーンがあります。偏見に晒されて、二人の関係について偽るカップルもいたようです。

 

『チョコレートドーナツ』は1970年代のアメリカを描いた作品ですが、最近では、同性カップルの里親は地域に溶け込み、地域の一員として子育てしています。

 

私は実際にアメリカに行き、女性カップルの里親ファミリーに会いましたが、彼女たちは里親コミュニティで信頼される先輩里親として活躍しておられました。また、そこで暮らす10代の女の子は、彼女たちの愛情に包まれて、健やかに成長しています。

 

また、家庭養護の国際会議でお会いしたオーストラリアの男性カップルの里親ファミリーは、チャーミングな男の子を育てていました。その後、彼らのお子さんが健やかに育つ様子を伝えてくれていますが、とてもあたたかい気持ちにさせられます。

 

さて、そのような同性カップルの里親の話が、どのように養子縁組の議論と関わるか、です。ここ数年、先進国では同性婚制度の議論が一気に盛り上がっています。同性婚制度と併せて、法律上の親子関係を成立させる養子縁組制度も議論となっています。同性婚制度と養子縁組制度が共に可決される国、同性婚制度の後に養子縁組制度が可決される国があるようです(注2)。

 

(注2)ILGA(the International Lesbian, Gay, Bisexual, Trans and Intersex Association)が公表している地図では、同性婚制度や同性カップルの養子縁組制度について示されている。

http://ilga.org/downloads/03_ILGA_WorldMap_ENGLISH_Overview_May2016.pdf

 

欧米などでは、同性カップルの養子縁組の議論において「彼らにきちんと子育てができるのか」という意見があったのですが、地域で暮らしている同性カップルの里親家庭がすでに存在していたため、「彼らにも子育てができる」という反論につながったとも聞きます。

 

日本においては、同性カップルの里親についてはまだ始まったばかりですが、離婚後、同性パートナーと子育てしている方など、すでに同性カップルで子育てしている方はたくさんおられます。今後、日本で同性カップルの養子縁組制度の議論が起こったとき、欧米と同じような反論が起こるかもしれません。

 

今回の報道をきっかけに「同性カップルの権利」「LGBTの権利」の側面から、さまざまな議論が活発になるでしょう。それは歓迎すべきことだと思います。

 

しかし、この報道は「親元で暮らせないお子さんにあたたかい家庭が用意された」というニュースでもあります。まずは、社会的養護の下で暮らす子どもたちについて関心を深め、よりよい社会的養護のあり方について皆さんが考えるきっかになるようにと願っています。

 

里親さんたちからも、「今回ほど里親制度について一斉に報道されたことはない」との声が届きました。厚生労働大臣の「同性カップルでも男女のカップルでも、子供が安定した家庭でしっかり育つことが大事で、それが達成されれば我々としてはありがたい」という言葉に、LGBT当事者だけではなく、里親さんたちから歓迎の声があがっています(注3)。

 

(注3)4月7日毎日新聞 同性カップルに里子『ありがたい』

https://mainichi.jp/articles/20170407/k00/00e/040/207000c

 

みなさま、ぜひ「社会的養護」について、関心を持ってください。【次ページにつづく】

 

 

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