「集団的自衛権」のリアル――自衛隊の戦略的活用を考える

集団的自衛権に何を思うのか――アフガニスタンなどで武装解除・平和構築の現場を体験した伊勢崎賢治氏、元防衛官僚でイラク自衛隊派遣にも携わった柳澤協二氏が語り合う。憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン「マガジン9」が主催する第32回マガ9学校『集団的自衛権と自衛隊「積極的平和主義」はホンモノか』の模様を一部抄録。

 

 

2枚のパネル

 

伊勢崎 ぼくと柳澤さんは、「自衛隊を活かす 21世紀の憲法と防衛を考える会」というのをやっていて、現行の憲法の中で、自衛隊をどう生かせるのか考えています。

 

柳澤さんは、自衛隊をイラクのサマーワに派遣した張本人ですね。ぼくは、その時、アフガニスタンでDDRをしていたので「自衛隊を派遣するならアフガンだろう」と騒いでいて、はじめてビデオニュース・ドットコムで対談した時に、ああ、この人が自衛隊を出したのかと思いました(笑)。今日は柳澤さんと集団的自衛権についてお話できればと思います。

 

柳澤 伊勢崎さんも私も、我慢ならんと感じているところがあって、戦争が好きか嫌いか、憲法が好きか嫌いかに関わらず、この話って間違っていると思うんです。日本は国家として何を戦略的に大事にしていくのか、もっと話し合うべきです。

 

伊勢崎 さて、5月15日に、安倍総理が記者会見をし、集団的自衛権について触れました(首相官邸HP 「平成26年5月15日安倍内閣総理大臣記者会見」http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0515kaiken.html )。

 

柳澤さんは先ほどの講演(マガジン9 集団的自衛権と自衛隊(その1)柳澤協二さん講演レポート http://www.magazine9.jp/article/shudanteki-jieiken/13052/ )で、安倍首相の会見でのパネルを「あり得ない想定」といって批判されてましたね。

 

柳澤 私は「なんだこりゃ」と、本当にのけぞるほどびっくりしました。海外で有事があったときに、赤ちゃんを抱えた母親、あるいはおじいさんおばあさんがアメリカの船に乗って逃げてくる、それを自衛隊が守らないでいいのか、という話でした。もちろん、守らなきゃいけないに決まっています。だけどそれと集団的自衛権と何の関係があるのかということです。

 

私は5年半官邸にいて、まさにそうした事態にどう対処するかを検討する仕事をしていましたが、どこかの国で紛争やクーデターが起こった場合には、観光客など民間人は民航機が飛んでいるうちに帰ってくるのが鉄則です。

 

最後に残るのは大使館員や、米軍関係の仕事をしている民間の技術者などでしょうが、これについても1997年に改定された日米防衛協力ガイドラインには――これは、私が防衛庁の実務担当者として改定作業に携わったのですが――こうした民間人の脱出(evacuation)には、おのおのの国が基本的には責任を持ってやるんだと書いてあります。つまり日本人の救出については自衛隊機が行くんだということですよね。

 

であれば、それは単に自衛隊として行けばいいのであって、集団的自衛権は一切関係ない。日本人を守るのだから、警察権か、個別的自衛権の範疇です。万が一アメリカの船飛行機が運ぶのを自衛隊が守ることになったとしても、守る対象は船や飛行機ではなくて中にいる日本人なんだから、その場合の理屈はやはり警察権か個別的自衛権でしょう。

 

だから、安倍総理が言ったようなことは、まったく「あり得ない想定」です。本来は全然違う話ですが、「親子の絵」のような、すんなり受け入れられるようなシンボルを使って説明していく――というよりは売り込んでいく。これは典型的な、シンボル操作による世論誘導です。

 

 

(画像は首相官邸HP 総理会見時におけるパネル資料 http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/__icsFiles/afieldfile/2014/05/15/20140515_kaiken_panel.pdf より)

(画像は首相官邸HP 総理会見時におけるパネル資料 http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/__icsFiles/afieldfile/2014/05/15/20140515_kaiken_panel.pdf より)

 

 

伊勢崎 二枚目のパネルの駆けつけ警護についても重要なごまかしがあります。この図では、日本のNGO職員や日本職員に対して、武装勢力が攻撃したときに、自衛隊員――ブルーヘルメットをかぶっているので、国連PKO部隊ですね――が駆けつけ警護をできない、それでいいのか、という議論ですよね。これは、根本的におかしいです。

 

国連職員や、国連と提携するNGOを敵から守るのは、正当防衛の話になります。ぼくは、国連PKO部隊を統括したことがありますが、これは当たり前の認識です

 

柳澤 それはそうです。

 

伊勢崎 議論すること自体が国連ではタブーです。国連なんですから、自国の人を優先的に助けることはできません。ですから、日本のNGOを守ろうというこの図自体が、国連の感覚からするとすごく不謹慎です。

 

 

 

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