カレー、チンして食べたら治りました――スプリング・躁鬱・スーサイド!

カレーをチンして食べたら、死にたい気持ちが治ってしまう!?――『坂口恭平 躁鬱日記』(医学書院)著者の坂口恭平氏、『自殺』(朝日出版社)著者の末井昭氏、「べてるの家」の向谷地宣明氏による、「自殺」をテーマにしたトークイベントの模様をお送りする。(構成/山本菜々子)

 

 

クレオール坂口恭平(4歳)

 

末井 『自殺』を書いた末井です。母親がダイナマイトで自殺しました。工員やキャバレーの看板描きやらを経て、白夜書房という会社で編集者をやってました。今は辞めてフリーで原稿を書いたり、編集の仕事をしています。

 

坂口 坂口恭平です。まぁ、躁うつ病の患者でございまして、この度『坂口恭平躁鬱日記』を出版いたしました。

 

向谷地 みなさん、こんばんは。向谷地と申します。僕は本を書いていないんですが、トークゲストということで今日は呼ばれました(笑)。簡単に自己紹介をすると、北海道にある「べてるの家」で生まれ育ち、精神保健の分野に関わっています。今日はすごく楽しみにしてきました。

 

『自殺』が去年の11月で『坂口恭平躁鬱日記』が12月に出たと。近い時期に出た本ですが、末井さんは坂口さんの本を読んでどう感じましたか。

 

末井 面白いです。僕も原稿書いたりしていますが、ものを創る人に対して、すごく刺激を与える本だと思いました。そうじゃない人にも面白いんですけどね。僕は『躁鬱日記』を読んで、1週間ぐらい前からですけど、自分でも日記を書き始めましたから。

 

それと、鬱の時と、躁の時の日記が入ってるんですけど、鬱のときの日記がすごい怖いんですよ。自己反省の反復というか、無茶苦茶暗いんですね。自分に才能があるんだろうかとか、そういうことが延々と続くんですよね。僕も鬱のときにノートにいろいろ書いていたんですけど、内容は違っても似てるんです。

 

でも躁になるとガラッと変わって、無茶苦茶元気なんですね。元気というか、なんというか、現実のような、現実でないような世界に行っちゃってるみたいなところがあって、その差がすごく面白いというか、怖いような感じがしました。

 

あとなんだろう。家族の物語ですよね。フーさんっていうね、いい奥さんがいらっしゃって……

 

向谷地 陰の主役のような存在ですよね。

 

末井 そうですね。それと、アオちゃんっていう女の子と、弦くんていう男の子のお子さんがいて、この4人の関係っていうのがすごくいいんです。バラバラな家族も多いと思うんですけど、これ読むと「家族っていいなぁ」と思って嬉しくなりますよね。

 

アオちゃんと坂口さんが自転車で走ってるところがいいですね。読んでて風が吹いてくる感じがするんです。アオちゃんと坂口さんは対等ですよね。親と子という感じじゃなくて、対等に付き合ってるようなとこがあったりして、そういうとこがすごく面白いなと。

 

坂口 アオは、「私が生んだ」って言いましたからね。僕のことを生んだと。

 

末井 あっ、アオちゃんが坂口さんを生んだ?

 

坂口 そうなんですよ、逆らしいんですよ。「私がここで出る」と自分で選んだようなんです。それを聞いて、泣いちゃって、アオに向かって「お母さ~ん!!」って抱き付きました。アオの世界で一本線がつながっているようなんですよね。僕は、アオのことを子どもだとあまり思ってない部分があるんです。

 

向谷地 あとがきで「クレオール坂口恭平(4歳)」というのが出てきますよね。もう一人の自分であると。それも興味深かったです。

 

坂口 本を読んでいない人にも説明をすると、妻のフーちゃんが、鉛筆をなめながら、「2人いることは確認してるのよね」と僕に言ったんです。

 

僕は躁鬱なので、躁と鬱と2人の人間がいて、2人までは確認ができてるけれども、それ以外はおぼろげで、輪郭がはっきりしていないと。だから、3人目の恭平を作ることを、今年の目標にしたらいいんじゃないかと言われました。僕も、なるほど、3人目かと。

 

向谷地 躁でも鬱でもない、3人目ということですね。

 

坂口 アオに「ママが言うには僕は3人いるらしい」と話しました。すると、アオが「3人目はもういますよ。しかも、その人はもうすでに描いていますよ。この前あげた絵をみてください」と言ったんです。

 

実は、その話が出るちょっと前に、「壁にこれを貼っておいてください」と鬱状態で寝ている僕にアオが絵を持ってきたことがありました。お札のような感じで、人間みたいなのが一人いて、虹がかかっていました。

 

その時は、これはアオを描いているんだろうなと思っていましたが、絵をよく見たら横に「パパ」と書かれていました。少し怖くなりましたね(笑)。アオは「3人目のパパは4才」と教えてくれました。

 

向谷地 それが、クレオール坂口恭平だと。クレオールというのは、たとえば異なる言語を話す人々が集まって生活するようになると、自然発生的に発達する混合言語のことですね。宗主国の上層言語である英語やフランス語と植民地の現地語が統合されて発達するとか。

 

坂口 そうです。友だちにこの話をしたら、「それってクレオール文学じゃん」と言われたので、読んだことないですけど、「クレオール坂口恭平(4歳)」と名付けることにしました。

 

向谷地 まさに、クレオール坂口恭平は、アオちゃんが生み出してくれたんですね。

 

 

jisatsu_jacket

 

 

パラボラアンテナ

 

末井 弦くんは今何歳ですか?

 

坂口 1歳になりました。

 

末井 弦くんが、なにか神さまみたいな感じありますよね。笑ってるだけで、泣かないんですよね。

 

坂口 彼は両手にますかけ線があるんです。徳川家康もそうで、1万人に一人しかいないらしいです。

 

向谷地 すごい手相なんですね。

 

坂口 そういう話を家でしてて。アオが「私の手相は?」ってやってきて、見たら僕の手相に似ているんです。それだけなんですけど(笑)。

 

僕は、時々体がぼご~って変形してパラボラアンテナみたいになるんですよ。そのときに、色々なことを受信できて、すごい偶然が起きたりするんです。僕だけではなくて、そういう偶然って、みんなありますよね。

 

先日も仲がいい女の子と、獣のようにセックスをしている夢を見まして。夢であっても、申し訳なかったので、その子に「すまぬ」と謝ったんです。そうしたら、「実は、私、まだ誰にも言ってないんだけど……」って言うんです。

 

「エッ、オレのこと好きなの?」って思ったんだけど、そしたら、「実は妊娠が昨日わかって」って。「だから、セックスとか裸とか、言われて、びっくりしたんだけど」と。

 

なんかあるのかなぁっていう話とかを、つい先週しましたね。なんかパラボラアンテナみたいなときあるんですよ。

 

向谷地 なにか受信するんですね。

 

坂口 そう、みんな気づいていないで受信してるはずなんですよね。

 

末井 胸騒ぎとかあるし、受信しているのは確かなんでしょうね。

 

 

 

シノドスを応援してくれませんか?

 

人々はますますインターネットで情報を得るようになっています。ところが、ウェブ上で無料で読めるのは、信頼性の低い記事やエンタメ記事ばかり。そんなウェブ環境に抗うべく、誰でも自由にアクセスできる本当に価値ある記事を、誠実に配信していきます。そうしたシノドスの活動を持続的なものとするために、ぜひファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」のパトロンになってください。⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

無題

 

・人文・社会科学から自然科学、カルチャーまで、各界の気鋭にじっくりインタビュー
・報道等で耳にする気になるテーマをQ&A形式でやさしく解説
・研究者・専門家たちが提案する「こうすれば●●は今よりもっとよくなるはず!」

・人類の英知を伝える「知の巨人」たち
・初学者のための「学びなおしの5冊」

……etc.  

https://synodos.jp/a-synodos

1 2 3 4
シノドス国際社会動向研究所

vol.238 特集:尊厳を守るために

・荻上チキ氏インタビュー「学校空間をもっと自由に――いじめを減らすために本当に必要なこと」

・【天皇制 Q&A】河西秀哉(解説)「『権威』と『象徴』の狭間で――天皇制を問い直す」

・【今月のポジ出し!】畠山勝太「こうすれば民主主義はもっと良くなる」

・齋藤直子(絵)×岸政彦(文)「『Yeah! めっちゃ平日』第十一回」