シノドス・トークラウンジ

2024.09.26

2024年10月23日(水)開催

【レクチャー】「あたらしい」丸山眞男(全3回)

山本昭宏 ホスト:芹沢一也

開催日時
2024年10月23日(水)20:00~21:30
講師
山本昭宏
ホスト
芹沢一也
場所
Zoom【後日、アーカイブ動画での視聴も可能です】※本レクチャーは10/23、11/20、12/18の全3回です。
料金
7500円(税込)

丸山眞男という名前を見て、複雑な思いを抱く人は多いのではないか。

彼を論じた書物はいまなお定期的に発表されるし、近年は文庫で読めるようになったために「古典」としての社会的位置も定まっている。彼の透徹した思考と緻密な論理、そして深い教養については、誰もが認めるところだが、「近代主義」「国民主義」が批判の対象になることもある。近代日本の思想を考える際に避けて通れない巨人であることは疑えないが、さりとて「いまさら丸山眞男でもあるまい」と考える人もいるだろう。

では、2020年代の現代において、丸山眞男を読み直す意義はどこにあるだろうか。

丸山が書いたものだけでなく、座談やノートにまで視野を広げれば、彼の横顔がより明瞭に見えてくる。その横顔とは、社会における人間の活動――内的世界と外的世界の関係から生まれる思想の表現としての人間の活動――について根本的な関心を抱き続けた思想家としての顔である。丸山にとっては、超国家主義の分析も、福沢諭吉への関心も、現実社会に向けた言論活動も、そうした関心の表れのひとつだった。こうした根本的要素に注目するならば、社会が変化しても人間の活動がある限り、丸山の分析が古びるということはないはずである。

しかし同時に、丸山が生き、また分析対象とした社会と現代社会とでは、一見すると異なる部分も多い。SNSによって可視化される人びとの関心の束、右派勢力の世界的伸長などの現象。思想面では、人間の主体性という近代的思惟そのものを相対化しようとする視座が定着しつつある。

あたらしくみえるこれらの現象を抱え込んだ現代社会をより総合的に理解するために、本レクチャーでは、丸山の思想からあえてツールとしての分析格子を取り出してみたいと考える。幸いなことに、丸山の文章や発言は明晰かつ論理的であるため、道具のように分析方法を取り出すことは比較的容易である(誰もが「超国家主義の論理と心理」で展開された構造的把握を思い浮かべるだろう)。

ただしそれは、彼の思想が生み出された歴史的・社会的文脈を無視して、有効性の名の下に切り取るという作業を意味しない。むしろ逆である。彼の思想が育まれた磁場を確認し、彼の言葉を吟味し、彼が何を目指したのかを把握しようとする試みを通して、生きたツールを掴み直すほうが面白いし、そうして手にした道具は紛失の恐れも少ないはずである。

したがって、全三回のレクチャーは、基本的には時系列にそって丸山の思想を追いつつ、毎回の後半部においては丸山の思想を通して現代社会をいかに理解できるのかという問いに踏み込んでいくことになる。

全三回の概要は以下の通りである。

なお、第一回の問題意識は全三回を貫くだけでなく、現代日本社会を再把握するためにも肝要であると思われるので、場合によっては第二回にまでずれ込むかもしれない点をおことわりしておく。


【イベント概要】

日程 全3回 20:00〜21:30
   10月23日(水)第1回「超国家主義」論とその周辺:〈8・15革命〉との関係を通して
   11月20日(水)第2回「日本的」思想というものはあるのか:60年代の『日本の思想』と『忠誠と反逆』を通して
   12月18日(水)第3回 複眼主義か相対主義か:80年代の『「文明論之概略」を読む』
形式 Zoomを使用したオンラインレクチャー
講師 山本昭宏
料金  7,500円

【講師】

山本昭宏
神戸市外国語大学准教授。1984年生まれ。専門は日本近現代文化史、歴史社会学。著書に『大江健三郎とその時代』『戦後民主主義』『残されたものたちの戦後日本表現史』。