2022.11.30

ネイティブ並みの発音は必要ない!?世界の英語話者の現状とは?

シノドス英会話コーチングの芹沢一也です。

コーチングをしていてしばしば感じるのは、少なからぬ学習者がネイティブ信仰をもっているということです。これは無意識的な場合が多いのですが、いずれにしても、英会話上達の足かせとなっています。

まず理解してほしいのは、子どもの頃に英語圏で過ごさない限り、ネイティブ並みの英語を身につけるのは(ほぼ)不可能だということです。

ネイティブというのは生まれたときから英語に囲まれ、その中で英語を身につけているのですから、たとえて言えば、小さいころからピアノを習っていたり、野球の英才教育を受けていたりするのと同じです。

それを大人になってから、一日数時間の学習で追いつこうというのは、大人になってからピアノの練習をはじめ、プロの演奏家になろうというのと同じくらい無謀なことです。ですので、ネイティブの英語というのは決して目指すべきゴールではありません。

しかしここ日本では、ネイティブ英語、とくにアメリカ英語に対する信仰がとても強いです。リスニングあるいは発音教材のほぼすべてがアメリカ英語です。また、たまにSNSに広告が流れてくるのですが、アメリカ人のように英語を発音できないと通じない、あるいはビジネスでは相手にされないと、真顔で言っているようなスクールもあります。

しかし、そんなことはもちろんありません。世界で話されている英語はきわめて多様です。例えば、国連のホームページに行って、動画を視聴してみてください。各国の代表が母語のアクセントに影響された英語で堂々と発言しています。

一例として、国連総長アントニオ・グテーレスの記者会見の動画を貼っておきます。質問しているジャーナリストたちも含め、多様な英語が行き交っているのが分かるかと思います。

もうふたつほど、あげておきます。まずは、WHO事務局長のテドロス・アダノムの記者会見。

そして、EU大統領のシャルル・ミシェルのスピーチです。

アメリカ英語の発音でなければダメだ、というのが妄想だと分かったところで、では発音はどのくらいがんばればよいのでしょうか? 答えはとても簡単です。日本人の英語を聞いたことのない外国人と、ストレスなくコミュニケーションできるのであれば、まったく問題ありません。それ以上の上達をめざすことは、趣味の領域に属します。

そもそも、いくら発音をがんばってみても、日本語なまりは残ります。これは大人になってから日本に来て、日本語を流暢に話すようになった外国人でも、一言発すればすぐに日本語ネイティブではないと分かるのと一緒です。

それに立場を反転させて、例えば外国人と日本語で話しているとき、相手の発音、そんなに気になりますか? もちろん聞き取れないようだと困りますが、言っていることが理解できるならば、日本語ネイティブ並みの発音で話してほしいなど、露ほども思わないのではないでしょうか。むしろ注意を向けるのは、何を話しているか、つまり「話の中身」ですよね。「この人、日本語の発音がいいから友だちになりたいな」などとは思いませんよね。

もし、アメリカ人のような発音を身につけなければダメだ、と思っているようでしたら、すぐにその考えは捨ててください。そのための時間を、世界の多様な英語を聞き取るためのトレーニングに使ってください。そして、「中身のある話」を英語できちんと伝えられるようになってください。そのためには、ある程度のところまで来たら、「英語を学ぶ」段階から、学問であれ趣味であれ「英語で学ぶ」段階に移ってください。

ところで、アメリカ英語ばかり聞いている方、ちゃんとイギリス英語も聞き取れますか? イギリス首相のリシ・スナクのインタビューを聴いて、確かめてみてください。

さて、ネイティブ信仰の弊害は、発音だけにとどまりません。以前、ニューズウィークに興味深い記事が載りました。タイトルは「ネイティブの英語はなぜ世界でいちばん通じないのか」。そこには次のように書かれています。「国際ビジネスにいちばん適応できずにいるのは、環境に応じて自分の英語を変えられない英語の『ネイティブ』たちだということが、数々の研究で明らかになっている。」どういうことでしょうか?

そもそも世界には、どのくらい英語が話す人がいるのでしょうか? だいたい、次のような数字があげられます。母語として英語を話す人が4億人くらい、第二言語として英語を話す人が3億人くらい、そして外国語として英語を話す人が10億人くらい。グローバルな国際環境では、圧倒的多数の人が外国語として英語を話していることになります。

それゆえ、ニューズウィークの記事にあるように、英語ネイティブが母国で話しているような英語で押し通すと、「国際的な環境で働き慣れた人たち」から理解してもらえない、というようなことが起こるわけです。ここから大切なのは、ネイティブの英語ではなく、「国際的な英語」を話すことだと分かります。

国際的な英語というのは、さまざまな国の非ネイティブが、コミュニケーションの「ツール」として使う英語のことです。誰もが理解できる単語を文法のルールにのっとってきちんと並べ、明晰でシンプルな英語で表現することを心がけます(現地で生活するのでない限り、「ネイティブは〇〇と言う・言わない」といった類の知識を学ぶ優先度は高くありません)。

私たち日本人は、むしろ「明晰でシンプルな英語」を話す非ネイティブに学んだほうがはるかに効率的です。たとえば、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリの英語はまさにお手本としてぴったりでしょう。

みなさんは、なぜ英会話を学んでいるのでしょうか? それは異なった国の人びととコミュニケーションをとるためでしょう。そうであるなら、日本人にとって大切なのはネイティブの英語よりも、むしろ非ネイティブのアジアの人びとが話す英語です。日本人が日常的に触れる機会が多いのは、アジアの英語だからです。

現在、アジアの人びとの英語力が、急速に伸びています。アジア諸国の政府は、欧米や日本のトップレベルの大学、大学院に学生を留学させ、語学力や専門知識をもった優秀な人材を多く揃えるようになりました。いまでは企業経営者・管理職、政府高官、政治家の多くが博士号を取得しており、外国メディアに流暢な英語で受け答えをしている場面も珍しくありません。

このことは、アジア諸国の教育水準が格段に向上し、今後、ますます経済的に発展していくことを意味します。日本はアジアとの結びつきをより一層、強めていくでしょう。アジアの国々とのビジネスはますます活発になっていき、人びととの交流も盛んになっていくはずです。そこで話される言語は、言うまでもなく「国際的な英語」です。

そのような中、ネイティブ信仰をもってアメリカでしか通じない表現(スラング)を一生懸命覚えても、あるいはアメリカ英語しか聞き取れないようでは、ビジネスの機会を逸するばかりか、もっとも大切な「人との信頼」を醸成することもできないでしょう。また、ネイティブ信仰の強い方は、アジアで話されている英語を下に見る傾向がありますが、そうした意識は百害あって一利なしです。

このような問題意識をもって、「アジアの英語を聞く」ための動画を作成することにしました。アジアで話されている英語に親しむために、アジアの人びとによる多様性に富んだ英語を紹介していきます。また同時に、日本で学び、働くアジアの人びとの声を取り上げることによって、「日本の中のアジア」を可視化していきます。実践的な英会話力を身につけたい学習者に最適の動画教材です。どうぞご活用ください。

SYNODOS ASIA / シノドス・アジア
https://www.youtube.com/@synodosasia2022/featured

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たんに単語や文法、フレーズを記憶するだけでは、英語は話せるようになりません。

「簡単な英語なのに、その場でとっさに出てこない!」
「意見はあるのに、英語でうまく伝えられない!」

多くの学習者が抱えるこうした悩みの原因は、日本語で発想してしまうことにあります。
日本語で考えているかぎり、いつまでたっても英会話は上達しません。
では、どうすればいいのか?

カギとなるのは「語順」です。
英語の語順感覚を身につければ、自然に英語で発想できるようになります。
しかし、そのためには特別なトレーニングが必要です。

「シノドス式シンプルイングリッシュ」は、このために独自に開発された英語学習法です。
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