政府と日本銀行の政策協定(アコード)はどうあるべきか

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政府と日銀との政策協定(アコード)に関する報道が活発化している。報道によれば、1月21日・22日に開催される日銀政策決定会合にて政策協定の公表がなされるのではないかとの観測もあるようだ。政府と日銀が共同で文書を公表するということで思い出されるのが、昨年10月30日に当時の財務大臣、経済財政担当大臣、日銀総裁の連名で公表された「デフレ脱却に向けた取組について」(http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121030a.pdf 以下「共同文書」と略す)だろう。以下ではこの文書を題材にしながら、政府と日銀が新たに政策協定を結ぶのならばどのような内容を折り込むべきかを考えてみたい。

 

 

共同文書の問題点

 

まず共同文書についてみておこう(共同文書および10月30日の日銀の金融政策に関しては、synodos journalに掲載した拙稿をあわせて参照いただきたい https://synodos.jp/economy/1437)。共同文書は、1.で課題の表明と政府および日銀の意思表示がなされ、つづいて2.で日銀の政策スタンスの表明、最後に3.で政府の取組の表明というみっつの内容から構成されている。

 

1.における課題の表明と政府及び日銀の意思表示をより具体的に記すと、「デフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰すること」が課題であり、この課題に対して一体となって政府と日銀が努力するというものである。一見すると何ら問題がないように思える。だが、2.以降を読んでいくと、問題点が明らかになってくる。

 

どういうことか。2.では日銀の政策スタンスが記載されており、最初に1.の課題について日銀の認識が示されている。これを読むと、デフレから早期に脱するためには、政府による成長力の強化と金融面からの後押しのふたつの要素が必要だと日銀は解釈しており、その認識に沿って強力な金融緩和を行っていくと表明していることがわかる。ただし、以上の日銀の認識は従来と変わらず、強力な金融緩和の中身は「実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置」であって、これも従来と変わりがない。つまり「共同文書」における日銀のスタンスは従来と同じであるということだ。

 

3.の政府のスタンスの表明についてはどうだろうか。政府は、以上の日銀の方針に従って強力な金融緩和を行うことを日銀に期待している。これは日銀が従来路線に従うことを政府は是としていることを意味する。そして政府は適切なマクロ経済運営に加えて成長力強化の取組として、「モノ」「人」「お金」をダイナミックに動かすために、規制・制度改革、予算・財政投融資、税制など最適な政策手段を動員するとしている。

 

だが規制・制度改革を行い、予算・財政投融資や税制を変えることでデフレから脱却できた事例を寡聞にも筆者は知らない。さらに政府は「デフレ脱却等経済状況検討会議」で点検し、日銀は同会議で定期的に報告するとのことだが、「デフレ脱却等経済状況検討会議」はなんら法的な権限をもたない。仮に政府が今後の物価動向の報告に影響を与えた日銀の金融政策に不満を述べ、具体的な対応策を迫ったとしても、日銀が対応策を講じるインセンティブは皆無に等しいのである。

 

再度、共同文書の問題点をまとめておこう。筆者は大きくふたつの問題点があると考える。

 

ひとつ目の問題は、日銀が現状維持のスタンスを改めて表明する一方で、政府の取組の表明が追加されたことで、共同文書が結果的に「デフレ脱却に対する政府の責任と役割を明文化する文書」になってしまったことである。こうなってしまったのは、共同文書における課題を「デフレ脱却」と設定したことに原因があるのではないか。

 

政府が行う財政政策や成長政策、日銀が行う金融政策を総動員することが「デフレ脱却」に必要と捉えれば、政府の役割を明記することになる。「日銀は十分に金融政策を行っている」と考えれば、デフレ脱却に向けて一歩前に進めるためには政府の責任と役割を明文化することが必要になるだろう。政府と日銀の政策手段についての割り当てが曖昧ならば、互いの政策責任を回避するということにもつながり、本来の共同文書としての意味をなさなくなってしまうことにもつながるというわけだ。

 

そしてふたつ目の問題は、政府と日銀の取組を担保するのが「デフレ脱却等経済状況検討会議」という法的な権限をもたない会議であったということである。共同文書が公表された後に開催された会議は11月12日開催の1回のみだが、会議の議事要旨(http://www5.cao.go.jp/keizai1/deflation/2012/1112_youshi.pdf)をみると、政府および日銀が行う政策の説明にとどまっているようである。恐らくこのままのかたちで続いたとしても実のある成果はなかっただろう。目的を達成するためにどういう場で何を議論するのかをはっきりさせておく必要があるということだ。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.266 

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