震災の痛みと共に生きていくために

東日本大震災から二年が経過した。少しずつ薄れはじめた震災の記憶のなかで、いま被災地はどうなっているのだろうか。何が求められているのだろうか。自身も震災によって最愛の母親と愛犬を亡くすという辛い経験を乗り越えて、被災地のいまと向き合い、伝えつづけるジャーナリスト佐藤慧氏にお話を伺った。(聞き手・構成/出口優夏)

 

 

民間による助成金支援が必要な理由

 

―― 自己紹介を兼ねて、ご自身の活動内容についてお聞かせください。

 

ジャーナリストとして、もともとはサブサハラアフリカとよばれるアフリカ南部の貧困地域や紛争現場をおもに取材していました。しかし、東日本大震災が発生してからは、ぼくの両親が住んでいた岩手県陸前高田市を中心として、被災された方々への取材も継続的に行っています。

 

また、友人たちとともに東日本大震災復興支援非営利団体「NPOみんつな」(http://www.mintsuna.net/)を運営し、被災された方々への支援活動を行っています。震災発生当初は緊急物資支援が中心でしたが、現在は地元の方々による草の根の小さな活動団体に助成金支援をする活動が中心になっています。たとえば、子育てをしている女性を支援している地元の助産師さんの団体に月々5万円の助成金を給付するというかたちで、現在は10団体ほどに助成金支援を行っています。

 

もちろん、行政の助成金もありますから、ぼくたちが助成金支援をおこなう必要性を疑問視される方もいるかもしれません。しかし、行政の助成金システムというのは、応募手続きのプロセスがとても複雑で、さまざまな書類、審査を経る必要があります。なので、地元のお母さんたち2、3人でやっているような小さな団体にとっては、行政の助成金はハードルが高い場合も珍しくありません。

 

なおかつ、仮に行政による助成金を受けられたとしても、受け取った助成金ごとに別々の収支、活動報告を提出しなければなりません。そういった事務処理作業だけで、本来の活動業務が大幅に圧迫されてしまいます。もちろん本来であれば、そのような作業は各団体の責任のもと厳正におこなわれるべきものです。しかし、緊急で必要とされている活動の場合、本来の活動を行う負担になってしまうのであれば元も子もないということで、小さな団体のなかには行政の助成金はあきらめて、自腹で活動をつづけているところが多くあります。ならば、ぼくらみんつなのような民間の団体が、地元の方々がもっと気軽に使用できる助成金をつくればいいのではないかと思いました。

 

みんつなの活動資金は、もともとはぼくらが震災直後に全国の皆様から預かった募金によるものです。もちろん、募金してくださった方々の気持ちのこもった大切なお金ですので不明瞭な使い方は許されませんが、あくまでも「募金の再配分」であるため、使用用途は各団体が臨機応変に決めることができますし、会計報告は各々の団体が各自に行っています。

 

言うなれば、「募金をしたいけれどどこに募金したらいいのかわからない」という支援者と、「活動資金が必要だけれど助成金を受けられない」という地元の支援団体のマッチングのような作業を行っています。支援先の決定は、この助成プロジェクトの代表であるぼくと、地元出身のメンバーとのリサーチで決定していますが、根本にあるのは「個人的な信頼」です。すべての人々を支援できるわけではない以上、現地でいただいた縁から、必要と思われる箇所に支援をおこなっています。

 

 

―― 震災発生から2年が経過しますが、被災地支援も転換期にはいってきたのではないでしょうか?

 

実際、どんどん被災地から支援団体が姿を消し、メディアに取り上げられることもむずかしくなってきました。ぼくたちみんつなも、メンバーとしては多くの人が参加しているのですが、実質的に活動しているのは現在では数人です。ほかのメンバーは手が空いているときに作業を手伝ってもらうというかたちで関わっていただいています。

 

みんつなは基本的にはメンバーに給与を支払ったり、経費を負担したりということはしていないので、移動費や、本来の仕事を休んだ場合の経済的損失を考えると、ほかに仕事をもっている大人たちが被災地に関わりつづけるというのは厳しいですよね。ぼくはジャーナリストとして、本業のためにも毎月現地に通うことが可能でしたので、ほかの人よりも自由に支援に関わることができました。被災地への関心が薄れてきたいまだからこそ、支援や発信をつづけていくことに意味があるのではないかと考えています。

 

 

―― みんつなの今後のプランはあるのでしょうか?

 

みんつなを立ち上げた当初から、3年間は継続して活動していこうと決めていました。そして、いまのペースで活動していくと、ちょうど震災から3年が経過する2014年の春で活動資金が尽きることになります。なので、残りの1年は引きつづき助成金支援を行っていく一方で、現在ぼくたちが支援している団体が、今後も自立的に活動を行っていくことができる体制づくりをしていかなければならないですね。

 

また、みんつなの活動が終了したあとも、ぼくの本業を生かした記録、発信は継続していきたいと思っています。

 

 

 

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無題

 

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