ただの復興支援に留まらない物語のあるプロダクトを目指して

継続的な収入源確保のために

 

ミサンガの売り上げは順調でした。しかし、ミサンガのようなチャリティーグッズは震災から時間が経つにつれて売れなくなってしまうと感じていたので、継続的な収入源づくりには適しません。そこで、売上の半分を次の活動への資金として積み立てつつ、具体的に何を行うのかをお母さんたちとともに考えていくことにしました。

 

すると、お母さんたちからはふたつのやりたいことが出てきました。ひとつは、みんなで集まって作業ができる集会所が欲しいというもの。震災後しばらくは、お母さん方の一人が経営する民宿にみんなで集まって作業をしていたのですが、2011年秋にやってきた台風による土砂崩れで被害を受けてしまいました。

 

もうひとつは、地産の魚をみんなに振る舞う食堂のようなものをやってみたいというもの。地元で取れる魚の中には、サイズが小さい、需要がないなどの理由から、市場に乗らないものがたくさんあります。そしてそれを、自分たちの家では美味しく調理して食べている。そういった魚を使った料理を、いろんな人に振る舞ってみたいというのは、お母さんたちの震災前からの夢だった。しかし、漁村の女性たちだけでは、建物をつくるお金も集められないし、ということで想いはあっても実現できなかったんですね。

 

そこで「集まれる場所が欲しい」「食堂をやってみたい」というふたつの想いから話を進めていき、食堂を立ち上げることに。しかし、建物のなかで食べていただくだけでは収支をあわせるのが難しいので、お弁当屋さんとしてはじめることになりました。お母さんたちが自分たちで「ぼっぽら食堂」と名づけました。「ぼっぽら」とは、「急に・突然・準備なしに」といった意味の浜の言葉で、良い意味で計画を持たず日々やるべきことを柔軟に取り組むお母さんたちのメンタリティがあらわれた名前になっています。

 

こうした経緯で、つむぎやとは別に、お母さんたちが主体の法人「一般社団法人マーマメイド」を設立し、お弁当の販売収益のみで経営を持続させられるところまできました。

 

 

地域に眠る素材を活かして

 

普段はマーマメイドのように「何がやりたい」という内容ありきで動くことが多いのですが、OCICAの場合は素材探しからはじまっていました。

 

名前の通り、牡鹿半島には多くの鹿がいます。とくに震災直後の車があまり走っていないときは、鹿が山から下りてきていて、「なんでこんなにいるんだ」っていうくらい頻繁に遭遇しました(笑)。鹿角が1年に1回生え変わることは知っていたので、これを使えないかなとずっと考えていたんです。でも、入手方法や加工方法のあてはまったくなかった。

 

そんなある日、道の駅で美味しい鹿肉の缶詰を見つけたんです。「鹿の加工している人がいるんだ」と思い、すぐに会いに行きました。鹿の猟師で食肉加工業もされている三浦さんという方なんですが、伺ってみると「まあ、とりあえず食え」と、自己紹介もしないうちに美味しい鹿肉をご馳走してくださって(笑)。事情を話すと、「そういうことなら、おれが集めてやる」と地元猟友会の仲間から鹿角を提供して頂けることになりました。また、牡鹿半島の鮎川浜で、趣味で鹿角の加工をしていた方が「そういうことならどこへでも教えに行ってやる」と言って下さって、加工の問題も解決しました。

 

これで素材の条件は整い、やりたい人がいれば動き出せるという状況が揃ってから、牧浜のお母さんたちと出会いました。もともと、牧浜の女性たちは、ほとんどの方が牡蠣の殻むきをしていましたが、その養殖施設も、加工をする作業場も津波で流されてしまいました。約半数の方の家は流され仮設住宅に、もう半数の方の家は残った。

 

ここに距離があり、かつてのように行き来するのが難しくなった上、日々支援物資はたくさんやってくる。買い物に行く必要もなく、仕事もなくなってしまったので、とくに一人暮らしの方は家を出る理由がなくなってしまった。それを地域の方々は気にかけていて、かつての牡蠣むきの仕事のように、みんなで集まって仕事ができないか、という状況がありました。

 

それなら鹿角をつかって何かつくっていこう、ということで、まずは練習も兼ねて鹿角で好きなものをつくろうというワークショップからはじめました。その後、自分たちで考えた鹿角アクセサリーを一度仙台パルコの催事で売らせてもらったのですが、まったく売れなかった(笑)。これはまずいと思い、本格的にデザイナーさんを探し始めました。

 

一つひとつかたちが違う鹿角をひとつのプロダクトに落とし込むことは難しく、なかなか良いデザインに出会えなかったのですが、紆余曲折を経て、 NOSIGNERの太刀川英輔さんと出会いました。太刀川さんは実際に牧浜に来てくれて、お母さんたちがどういうものをつくりたいのか、どういうものならつくれるのか、ということを引き出すワークショップをした上で、今のOCICAのデザインを提案してくれました。

 

 

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