福島第一原発事故後、甲状腺被ばくを予防する「安定ヨウ素剤」服用の実態は?

原子力災害が起きると、放射性ヨウ素が環境中に飛散することがあります。放射性ヨウ素は、体の中に取り込まれると甲状腺に集まりやすく、とくに子どもの甲状腺がんの発生リスクとされています。

 

甲状腺の放射性ヨウ素による内部被ばくを防ぐために、「安定ヨウ素剤」が使われます。安定ヨウ素剤は放射線を出さず、甲状腺にたまります。甲状腺が安定ヨウ素で満たされていれば、放射性ヨウ素の吸収を妨げ、内部被ばくを防ぐことができます。

 

東京電力福島第一原子力発電所事故の直後、福島県は、放射性ヨウ素の飛散量が安定ヨウ素剤を服用するべき水準に達していないと予測しました。そのため、安定ヨウ素剤の配布・服用の指示を行いませんでした。ただ、原発周辺地域では、独自に配布・服用の指示を行なった市町村がありました。福島県三春、大熊、双葉、富岡の4町です。

 

このうち、大熊、双葉、富岡の3町は住民が町外へ避難しました。そのため、安定ヨウ素剤の服用状況が避難所ごとに異なるなどの事情もあり、実態把握は難しいと考えられます。一方、三春町には、避難指示が出されませんでした。

 

三春町は、福島第一原発事故の4日後、40歳未満または妊婦のいる世帯を対象に、安定ヨウ素剤の配布・服用指示を行ないました。対象となった世帯のうち94.9%の3134世帯に安定ヨウ素剤が配られました。

 

京都大学博士課程所属でひらた中央病院(福島県平田村)などに勤務する西川佳孝医師らは、原発事故当時0~9歳だった961人(2017年にひらた中央病院で甲状腺検査を受けた住民)を対象にアンケートを実施しました。その結果、安定ヨウ素剤を実際に服用したのは、配布・服用指示を受けた63.5%の601人にとどまりました。

 

また、「安定ヨウ素剤を服用しなかった」と答えた人にその理由を質問した結果、「安全性への不安があったため」が164人(46.7%)で最も高く、「配布されてすぐに避難したため」(10.3%)や「国や県の指示ではなかったため」(9.7%)を上回りました。

 

 

 

 

また、2歳以下では、3歳以上に比べて服用率が低かったこともわかりました。乳幼児に関しては、安定ヨウ素剤(錠剤)を砕いたりすりつぶしたりしなければならないため、服用率が低くなったとみられます。

 

研究チームは、「このような調査結果は世界的に例がない。今後、放射線災害対策を考える際には、周辺地域の保護者や子どもに対して、安定ヨウ素剤の効果や副作用、配布方法、内服指示について、日頃から十分説明しておく必要がある」と話しています。

 

Stable Iodine Distribution among Children after the 2011 Fukushima Nuclear Disaster in Japan: An Observational Study

 

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シノドス国際社会動向研究所

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