「あちらを立てればこちらも立つ」――『ソーシャルインパクト』他

『「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』(メタモル出版)/内科医 NATROM著

 

「ニセ医学」とは、医学に見せかけておきながら、実は医学的な根拠がまったくない医学のことをいう。著者のNATROM氏はインターネット上で、『NATROMの日記』というブログで医学やニセ医学について情報発信を行っている内科医である。

 

風邪を引いたときや虫歯の治療などを含めても、日常的に医学に関わる人は多くないだろう。そんな人が耳に馴染みのない病名を診断されたとき、がんのように場合によっては死のリスクもある病名を診断されたとき、病院に行くほどでないような気がしているけれど身体の不調を感じているときに、医学を装ったニセ医学をなんとなく説得力のあるようなかたちですすめられてしまったら、不安を拭うために手を伸ばしてしまってもおかしくない。

 

「いやいや、自分はそんなものに騙されないよ(笑)」と思う人もいるかもしれない。でも考えてみて欲しい。信頼のおける人が、なんだか怪しい健康法を行っているケースがないか。いま何らかの形で治療行為を受けているとして(あるいは健康のために行っているなにかでもいい)、それがまっとうな医学なのか、それとも荒唐無稽なニセ医学なのか、医学的根拠を示すことはできるだろうか。

 

本書の冒頭にもあるように、医学とニセ医学の境界は不明瞭であり、素人には判断できないグレーゾーンがある。「このキーワードがでていたら怪しい」「これに当てはまればニセ医学」という、わかりやすい判別方法はないのだろう。そして、おそらくそういう近道的な正解があると考えることこそ危険なのだ。もし、その判別の仕方がニセモノだったら?

 

本書には驚くほど多くの、わかりやすいニセ医学の例が挙げられている。「がんは治療するな」「麻薬系の鎮痛剤は身体に悪い」「気功で、がんが消える」「水で体が変わる」。それぞれの事例に、怪しさの根拠が書かれている。データがない。他の論文がまったく示されていない。論理の飛躍がある……。そこから、騙されないためのリテラシーを培っていくしかないのだろう。

 

普段は騙されない自信があっても、苦しいとき、藁をもすがる気持ちになっているときに、「これで治る」と言われたら手を伸ばしてしまいたくなるものだ。騙される方が悪いのではない。騙す方が悪い。だからこそ、手を伸ばさないためにも、身近な人に手を伸ばさせないためにも、そして手遅れになる前に、自分の命を守るために、本書を手に取って欲しい。(評者・金子昂)

 

 

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