「宇宙SF」の現在――あるいはそのようなジャンルが今日果たして成立しうるのかどうか、について

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付録:宇宙を扱ったおすすめのSF私選(本文中で触れられなかったものを中心に)

 

■エドモンド・ハミルトン『フェッセンデンの宇宙』(河出文庫)

 

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スペース・オペラ全盛期の中心的な作家(日本でアニメ化もされた「キャプテン・フューチャー」シリーズ(創元SF文庫他)が著名)であり、アメリカン・コミックスのシナリオライターとしても膨大な仕事を残した作家の代表的な短編、表題作「フェッセンデンの宇宙」と「向こうはどんなところだい?」(別題「何が火星に?」)を収録したアンソロジー。

 

「フェッセンデン」は「実験室における人工宇宙の創造」という古典的な、しかしいまやアカデミックな宇宙論研究でも論じられるテーマを提示したあまりにも有名な作品。「向こうは」は当時のSFにおいて宇宙探検物語が「天才科学者の発明」から出発することが多かったのに対して、初めて政府・軍隊が主導する巨大プロジェクトとしての火星探検・開発を、夢も希望もない悲惨なリアリズムで描いた先駆作。火星に斃れた同僚の実家を訪問する主人公が古いSF雑誌のコレクションに遭遇するあたり、SF的夢想と現実との断絶について描いた、メタSFとしての側面をも持つ。

 

 

■フレドリック・ブラウン『天の光はすべて星』(ハヤカワ文庫SF)

 

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これも「SF的夢想と現実との断絶」を非常に早期(1950年代)に主題化した作品。奇想を武器にSFとミステリー双方にまたがって活躍した作家の珍しくシリアスな長編で、「未来の普通小説」といった線をねらって書かれたもの。宇宙開発が火星基地の建設という踊り場まで来たところで停滞してしまった未来(といっても20世紀末)のアメリカで、木星ロケット計画の実現のために奔走する元宇宙飛行士の姿を描く苦いメロドラマ。

 

今では歴史的価値しか持たない作品だが、そう割り切って読んでみるとなかなか面白い。宇宙開発への壮大な夢が「過ぎ去りし未来」となったわれわれの現状を、結果的には見事に予言してしまっている。自分の書くSFもまたそうした「夢」の一部に他ならないことをブラウンが十分に自覚していることは、少年時代の主人公をとりこにしたSF小説を、いまやナンセンス奇想SFの古典として名高い自著『発狂した宇宙』(ハヤカワ文庫SF)にしているあたりに十分にうかがわれる。この意味でハミルトン「向こうは」と対をなす作品である。

 

ちなみに、なぜか今でも日本では新刊が手に入り、結構読まれている。

 

 

■オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』『スターメイカー』(国書刊行会)

 

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「ポストH・G・ウェルズ」ともいうべきイギリスの古典SF。前者は十億年以上にわたる地球人類の未来史を、そして後者はその地球人類史をも泡沫に帰せしめてしまう、広大な宇宙における多様な宇宙生命の興亡の歴史を語る。ダイソンが「ダイソンスフィア」の着想を得たのは後者からである。どちらも小説として面白いものではない。小説として読めるものを求める方には「超人類もの」の古典にして最高作であるステープルドン『オッド・ジョン』(ハヤカワ文庫SF)を勧める。

 

 

■ロバート・フォワード『竜の卵』『スタークエイク』(ハヤカワ文庫SF)

 

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物理学・天文学の知識を動員して、架空の天体と、そこにおける生物、そして文明を――つまりはリアルな「異星人」を描こうというSFは一定数存在する。その中でも古典というべきものが、重力が赤道直下で3G、極地では600G以上に達する惑星に生きるムカデ型知的生命を主人公にしたハル・クレメント『重力の使命』(ハヤカワ文庫SF)であるが、小説としても今日の科学知識の水準からしても、今読むにはちょっとつらい。それに対してこの連作は(それでももう30年前のものだが)現代版『重力の使命』を意識してプロの科学者が書いたもので、中性子星の上に生きる知的生命と人間との接触を描いており、もう少し新鮮な気持ちで読めるはず。

 

しかしこの路線の上でもっと今日的な、読むに堪えるSFが読みたい場合には野尻抱介『太陽の簒奪者』、グレッグ・イーガン『ディアスポラ』、そしてなにより、銀河中心の超巨大ブラックホールを周回する小惑星に暮らす生命体を主人公としたグレッグ・イーガン『白熱光』(早川書房)を読むべきであろう。ただし相当に難物。著者のサイトにおける科学解説(英語)なしではつらい。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.265 

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