死にたくないんですけど iPS細胞で死を克服できるのか――今週のシノドスエディターズチョイス

『比較福祉国家』(ミネルヴァ書房)/鎮目真人、近藤正基

 

福祉国家。すなわち、所得保障や社会サービスを通じて、生まれてから死ぬまでに立ち現れるさまざまな生活上のリスクに対処し、わたしたち国民の生活を安定させるために資源の再配分を行おうとする国家のあり方。

 

現在、国家のこの振る舞いほど、議論が紛糾するものはない。年金、医療保険、生活保護などをめぐって、世代間の対立から怠け者へのバッシングまで、財政上の制約から個人のモラルにいたるまで、日々、軋轢が生まれ非難の応酬が行われ、けっして健全とはいえない風景がすっかり出来上がってしまっている。そしてそれは多かれ少なかれ、先進国に共通したものである。

 

とはいえ問題は、わたしたち一人ひとりの生活や生命だ。たんなる直感や印象、一時の激情などで議論がなされていいわけはない。ましてや政策立案や制度設計をしていいわけがない。多様なアプローチや分析視角から世界の福祉国家を比較した本書には、冷静に福祉国家について考えるための理論やデータ、各国事例がバランスよくつまっている。しかも簡明にして平易だ。まず手に取るべき一冊としてお勧めする。

 

 

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『「社会を変える」のはじめかた』(産学社)/横尾俊成

 

クラフト調のかわいらしい表紙であるが、本書は政治を扱っている。

 

著者の横尾氏は、1980年代生まれ。博報堂の元広告マンで、現在東京都港区議会議員を務めている。

 

なぜ、政治家を目指すようになったのか語る「博報堂を辞めました。政治をはじめました」、山崎亮氏・駒崎弘樹氏などとの対談を収録した「欲しい未来を手にする6つの方法」など、「社会を変えたい」と思っている人が、どのような政治的アプローチができるのか。若手議員からみた、「社会を変える政治の使い方」が綴られている。

 

 

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『アフリカ社会を学ぶ人のために』(世界思想社)/松田素二編

 

等身大のアフリカ。しかしながら、これを描くのがとても難しい。

 

まずは本書がいうところの「500年のひずみ、200年のゆがみ」がある。それは15世紀以降のヨーロッパとの接触の結果、推し進められた奴隷貿易と、19世紀以降の植民地支配とがアフリカにもたらし、いまなお清算されていない暴力によるものだ。独立後、このゆがみに強く規定され、民族紛争や貧困、低開発に苦しめられたアフリカは絶望の大陸であった。

 

ところが近年のアフリカは打って変わって、希望の大陸として語られるようになった。石油や天然ガス、鉄鉱石やボーキサイト、ウランといった豊富な天然資源を獲得するために、欧米や中国、インドなどが大量の資本を投下した結果、世界経済のなかでもっとも高い成長を遂げるようになったからだ。

 

かくしてアフリカは、「国際社会のお荷物」から「世界経済成長の牽引車」へと劇的に変化した。だが、と本書はいう。かつて絶望の時代にアフリカ社会を未開視していたまなざしと、今日の希望の時代に豊富な資源に向けられているまなざしは、いずれも植民地時代のそれと深層においては変わらないのではないか、と。

 

本書が目指すのは、「同情や救済の対象」でも「資源の供給減」でもない新しいアフリカ像だ。そのために人類学、社会学、霊長類学、歴史学、言語学、文学、政治学、経済学、医学、農学などをベースに活躍するフィールドワーカーたちが大動員されている。彼らが描き出す“いま”のアフリカの姿を読み、その潜在力がもたらす希望をぜひ感じてほしい。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.273 

・山本貴光「語学は裏切らない――言語を学び直す5冊」
・片岡栄美「趣味の社会学――文化・階層・ジェンダー」
・栗田佳泰「リベラリズムと憲法の現在(いま)と未来」
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