ALSとの遭遇――『宇宙兄弟』作者とALS患者の想い

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味わうことと食べること

 

小山 おふたりはどんなときに楽しいって思うんですか?

 

岡部 楽しいことはないですね。でも嬉しいことはたくさんあります。今日みたいに小山さんとお話しできるのも嬉しいです。

 

小山 ありがとうございます。ぼくも嬉しいです。

 

橋本 仕事をするときは、犬系で選んでいます。

 

小山 犬系?

 

橋本 一緒に暮らしている犬を連れて行ってもいい仕事を選ぶようにしているんです。今日の会場はダメだったので連れてきていませんが。岡部さん、楽しいことがないなら本でも貸しましょうか?

 

小山 あっ、本ってどうやって読むんですか?

 

橋本 電子書籍です。パソコンで操作して読んでいます。

 

岡部 私は読んでもらっています。装置もあるけど、設定に時間がかかるんです。

 

川口 私の母もALSだったんですけど、その頃はパソコンも普及していなくて、患者に有用な情報は患者会に加入しない限り入ってこなかったんですよ。テクノロジーの進歩ってすごいです。昔は10年単位でいろんなものが変わっていったけど、いまは5年もしないで変わっていく。『宇宙兄弟』が活躍する未来だったら、もっと変化が早いんじゃないかな。

 

橋本 私はデパ地下でショッピングをするのが好きです。ストレス解消ですね。

 

川口 橋本さんご自身はお食事は経管栄養で鼻から胃に管で流し込んでいるんですけど、橋本さんが用意してくれたものを私たちが美味しいって食べて楽しんでいるのを見るのが好きみたいね。だから、時にはとっても高いワインを振る舞ってくれたりするんですよ。

 

小山 味覚はあるんですよね?

 

川口 味はわかるんでしょ? でも鼻で空気を吸うことができないので匂いはあまりわからないんですよね? 岡部さんは胃ろうですよね。

 

岡部 舌が委縮しているのでだいぶ鈍くなっていますが、味はしますので、ときどき口に入れます。でもそれは飲み込むのではなくて、味わうだけです。

 

小山 それはスプーンかなにかで、ですか?

 

岡部 そうですね。シリンジを使って液体を口の中に垂らして、あとは胃に直接入れています。

 

 

アートがひとの価値観を変えていく

 

小山 先ほどから何度か、プププーという音がなっていますが、これはなんのアラートですか?

 

橋本 気管に痰が詰まって気道圧が上がるとアラームが鳴るんです。すぐ吸引しないと苦しくなります。いまは自動で痰を吸引してくれる吸引器もありますね。

 

川口 きっとALSのケアはオール機械化されて、そのうち家族やヘルパーの仕事は機械のインジケーターのチェックとか、調整とかメンテナンスのほうにいくんじゃないかな。

 

小山 なるほど、メカニックな方向にいくのかもしれないですね。関係性もかわってくるのかな。

 

岡部 脳から直接意思を読み取れるようになれば、発声できない人も普通にお話できるようになりますよ。

 

小山 ああ、そうか。そうですよね。

 

岡部 だからコミュニケーションが自由にできる機械が欲しいですね。次に考えることで動かせる車椅子やベッド、家電が欲しいです。

 

川口 佐渡島さんともお話させていただきましたけど(地球で生きる宇宙飛行士――『宇宙兄弟』はなぜALSを描いたのか? 川口有美子×佐渡島庸平)、ALSの患者さんも宇宙飛行士も機械を付けていないと死んじゃうのは一緒ですよね。機械に対して150%の信頼がないと生きていけない。でも、呼吸器のことを「人間性を奪っている!」ってバッシングする人もいる。たぶんビジュアルが悪いのも一因かと。チューブだらけだからスパゲッティ症候群なんて言われちゃう。

 

小山 見た目が違うと印象も変わりますね。

 

川口 そうそう、むしろ「私もつけたい!」って思わせるくらいのデザインなら変なスティグマもとれるかと。

 

アートで医療のイメージを変えていくことができる気がします。だから小山さんも漫画の中でどんどんアイディアを出しちゃってください。きっと誰かが作ってくれますよ。いまだって人工呼吸器などの生命維持装置を埋め込み式にする話もあるくらいなんですから。

 

小山 それはすごいなあ! そんな発想なかったです。シャロンもそういうことに前向きに取り組めるようになるといいですね。

 

川口 病気に関係なく、シャロンは、50代60代の女性にとっての憧れの存在になって欲しい(笑)

 

橋本 ぜひやってください!

 

 

シャロンはこれからどう描かれていくのか

 

最後に記念撮影

最後に記念撮影

 

 

川口 そういえば岡部さんと橋本さんって、宇宙に行ってみたいですか?

 

岡部 ぜひ! いまでもそうとう変わった生活なので、宇宙に行っていろいろ経験してみたいです。

 

橋本 私は反対。宇宙はみるもの。アポロ11号で月にうさぎがいないことが分かってガッカリしたんです。

 

小山 あはは(笑)

 

岡部 じゃあ、もっと遠くに行けばいいんだよ。

 

橋本 ブラックホールで会いましょう。小山さんは宇宙に行きたいんですか?

 

小山 行きたいです。地球みたいな星に興味があるんですよ。他の星の生き物をみてみたい。

 

川口 そういえば『宇宙兄弟』に宇宙人はまだでてこないですね。

 

小山 そうですね。いまのところは(笑)

 

今日はおふたりにお会いできて本当によかったです。お会いする前のイメージで描いていたらツラいことばかりになってしまっていたかもしれません。おふたりが機械と一緒に生きていて宇宙飛行士にそっくりなことも、こんなにも活動的だということも、今日来ていなかったら実感できなかったと思います。シャロンを元気に描けるかもしれないと思ったら、気持ちがワクワクしてきました。

 

岡部 やった! こんなに素朴な人から、あんなに大きな作品がうまれるのですね。ここにも宇宙があるみたいです。これからも頑張って欲しいです。

 

橋本 岡部さんの素晴らしい言葉のあとですいませんが、小山さんにお会いできたことをみんなに自慢します(笑)。今日はありがとうございました。

 

(2014年4月30日 新宿にて)

 

■8月9日(土)映画「宇宙兄弟#0」ロードショー!

 

日本中を夢と感動で包み込んだあの国民的コミックの、まだ描かれていない《本当の始まり》。

「約束だ。俺らは二人で宇宙飛行士になる。」

 

幼い頃に誓った宇宙飛行士への夢 ― 兄弟揃って月に立つために、兄・南波六太と弟・日々人は、幾多の苦難を乗り越え、果てしない夢に一歩ずつ近づいていく。

 

2008年に雑誌モーニングで連載開始されたコミック「宇宙兄弟」。その巧みな物語構成に、私たちは興奮し、涙した。単行本は1400万部を突破し、2012年のテレビアニメ化および実写映画化を経て、全世代注目の国民的作品となった。そして2014年夏、その夢の原点が、原作者・小山宙哉オリジナル脚本によってシリーズ初のアニメーション映画となる。これは、原作でもテレビアニメでも見ることができない、宇宙兄弟第0話である。

 

http://wwws.warnerbros.co.jp/uchukyodai-movie/

 

 

 

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