人生の再出発をサッカーに懸けた男たち――『ホームレス・ワールドカップ日本代表のあきらめない力』(蛭間芳樹)他

『ホームレス・ワールドカップ日本代表のあきらめない力』(PHP研究所)/蛭間芳樹

 

連日、ワールドカップ日本代表の話題でもちきりだ。日本でもすっかり人気行事となったワールドカップであるが、実はホームレスだけが参加できるワールドカップがあることを知っているだろうか。日本代表のチームの名は「サムライジャパン」ならぬ「野武士ジャパン」。2011年、日本代表としてホームレス・ワールドカップに参加した。

 

『ホームレス・ワールドカップ日本代表のあきらめない力』は、野武士ジャパンの3年間を監督の蛭間氏が記録したものである。

 

そう書くと、カリスマ性のある熱血指導者がホームレスを集めてサッカーの指導をし、ワールドカップで優勝し、選手たちはみな路上生活から卒業した……といったハッピーなストーリーを期待してしまうが、彼らの前には大きな壁が立ちふさがる。

 

彼女には「ホームレスと私どっちが大事なの?」、選手には「若造のくせに偉そうなことを言うな」と言われてしまう。日本代表を選出するも、メンバー内で衝突が起こる。パリでのワールドカップに出場しようとしたら、渡航目的を理解してもらえず「パスポートが発行できない」と手続きを断られてしまう。「ホームレスを応援している企業となると、まずブランドイメージが悪くなる」とスポンサーが集まらない。ホームレス・ワールドカップに出たものの、圧倒的な実力差に一勝もできない……。

 

ドラマのように何もかも簡単にうまくいくわけじゃない。しかし、くじけそうになりながらも、選手たちは諦めない。

 

 

「俺はいままでいろんなことから逃げてきた。でも、ここで逃げたらまた同じだ。みんな、何のためにここに来たんだ。人生をもう一度やり直すためだろ。もう一度、逃げずにみんなでチャレンジしよう」

 

 

人生の再出発をサッカーに懸けた男たちの姿は胸に迫る。ワールドカップでサッカーへの関心が高まる今日この頃、ぜひ、ホームレス・ワールドカップにも注目してほしい。(評者・山本菜々子)

 

 

 

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.279 

・川口俊明「全国学力テストの失敗は日本社会の縮図である――専門性軽視が生み出した学力調査の問題点」
・神代健彦「道徳、この教育し難きもの」
・大賀祐樹「懐疑的で楽観的な哲学――プラグマティズム」
・平井和也「世界の知性は新型コロナウイルスをどう見ているのか」
・川名晋史「誰が、なぜ、どこに基地を隠したか」
・石川義正「「空洞」の消滅──現代日本「動物」文学案内(4)」