紛争地の人々へ、生きる選択肢を

小さな声を、世界に届ける

 

―― 最後に、瀬谷さんがこの仕事をする上で、心の支えとしているものは何ですか。

 

2010年7月、私がソマリアで訓練した20代前半のファヒアという女性が、帰宅途中に民兵に撃たれて命を落としました。彼女は研修を受けている最中に私にいったことがありました。「ソマリアでは女性であるというだけで教育も受けられず、自国のために何かしたいと思っても、何をしていいのかわからなかった。でもJCCPが来て、訓練を受けて、自分が貢献できる道がやっと見つかった。その目標に向かって自分は生きていこうと思った」と。彼女からいわれたその言葉はとても心に残っています。

 

日本にいると、ある内戦の被害者が50万人から60万人出ましたなどといったニュースを聞きます。しかし、この10万人は大きな誤差です。そして、その人たちが上げる声の多くは、世界の誰にも届かない。一方、現地で活動をしていると10万人一人ひとりの顔が見えてきます。一家が虐殺にあい、村が焼き討ちになり生きる希望を見失っても、なんとか生きて、社会を変えたいと思っている人たちがたくさんいます。手段さえあれば、前向きに生きていける人たちが大勢いるということを伝え、日本にいる私たちができる支援と現地をつなげることが、私の義務ですし、活動する心の支えとなる成果だと思っています。

 

 

ケニアの国内避難民の子どもたちと

ケニアの国内避難民の子どもたちと

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.272 

・荒木啓史「遺伝か環境か?――ゲノム科学と社会科学の融合(Sociogenomics)が教育界にもたらすイノベーション」
・神代健彦「道徳を「教える」とはどのようなことか――「押しつけ」と「育つにまかせる」の狭間を往く教育学」
・中里透「財政のことは「世の中にとっての」損得勘定で考えよう!」
・伊藤昌亮「ネット炎上のポリティクス――そのイデオロギー上のスタンスの変化に即して」
・穂鷹知美「マルチカルチュラル社会入門講座――それは「失礼」それとも「人種差別的」? 」
・福原正人「戦争倫理学と民間人保護の再検討――民間人殺害はなぜ兵士殺害より悪いのか」