NATOとロシアの和解? 

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欧州版MD計画での協力

 

NATO首脳は、19日の時点で、米国のMDと欧州の一部の加盟国が進めているMDとを2020年までに連結することで合意し、それにロシアの参加も要請することで合意していた。NATOはイランの弾道ミサイルを脅威としており、米国と欧州のMDを連結することで、その脅威に備えようとしている。イラン対策としては、ロシアからの情報は有益だ。

 

さらに、欧州全域を覆うMD網は、西欧各国が自前で運用するミサイル探知システムなどを、米国が東欧に展開するMD計画に順次統合して構築されることになっており、財政危機を抱える西欧諸国にとっては将来の軍事コスト削減というメリットもある。

 

NATO側はロシア側のレーダーがNATO加盟国への攻撃の情報を検知した場合に、NATO側に即時に通報するシステムを提案した。しかし、ロシアの立場は異なっており、NATOの計画よりもさらに深い協力を想定していた。非公式会合で、メドヴェージェフ大統領は、ロシアと欧米のMDの統合を提案していたのである。

 

メドヴェージェフ大統領は、その後の記者会見でその統合提案について、「各防衛区域上のミサイル防衛」を目的としていると説明した。ロシア当局筋によれば、同案の趣旨は、ロシアとNATO諸国が各々の領域の上空に飛来してきたミサイルを撃墜する責務をもつということだという。つまり、ロシアはNATO領域に向かうミサイルが、ロシアの上空を通過する際に、そのミサイルを撃墜する責務をもつことになり、その逆もしかりというわけである。

 

また、ロシアのロゴジンNATO常駐大使は、ロシア側の提案は「事実上、欧州・大西洋地域の周囲に集団的ミサイル防衛システムを構築することを求めたもの」だと説明し、NATO側の提案はロシアが懸念している「内向きの防衛システム」であり、ロシアとしては外部を標的とするかたちの協力を求めていることを明らかにした。

 

だが、オバマ米大統領らNATO首脳陣は、ロシア側の提案に対し、「本件は、技術的な専門家によって検討されるべきだ」と述べ、外交的には婉曲に拒否したという。 そして、本件については、専門家がNATO、ロシア双方のシステムが連携できる方策を検討し、2011年6月に予定されている国防相級の「NATOロシア理事会」で報告することになった。

 

いずれにせよ、ロシアとNATOはMD協力をすることで合意したものの、どのような枠組みで協力をしていくかという詳細については今後の検討に委ねられており、まずは上述の「NATOロシア理事会」がカギとなりそうだ。しかし、ラスムセン事務総長は、「カナダ西部から(東回りに)ロシア極東までが単一の屋根で覆われる」と意義を強調し、防空情報の交換のみならず、将来的にはミサイル撃墜に関する協力も可能であるとしている。

 

 

MDでの意見対立~ロシアの新たな外交カード?

 

だが、MDでの協力を楽観視することはできまい。メドヴェージェフは、「MDには建設的な側面と危険な側面がある」と述べ、「われわれの参加は完全に同等の権利がなくてはならない」とし、対等性と透明性が保障されなければ、協力を拒否すると明言している。

 

やはり、ロシアとNATOのあいだには相互に深い不信感があるのだ。

 

NATOはロシアに配慮し、ウクライナとグルジアの加盟を棚上げしたが、別の稿で述べたように、米国はウクライナに対し「NATO加盟の門は開いている」と述べたり、グルジアに対しても将来の加盟についてちらつかせたりしており、ロシアのNATOへの警戒感は消えていない。

 

メドヴェージェフ大統領は、「欧州MD協力に失敗し、NATOが一方的にMDを配備すれば、ロシアの核戦力弱体化を防ぐため軍事的な対抗措置があり得る」と、核戦力の均衡を崩してはならないと厳しく警告している。ロシア軍部も、MDはイラン対策ではなく「ロシアの戦力を削ぐことが真の狙いに違いない」と疑い強め、核抑止力が鈍化することに警戒感を強めているという。

 

他方、NATO側もロシアには不信感を持ちつづけており、冷戦終結後にNATOに加盟した中東欧諸国のロシアへの警戒心はとりわけ強い。そのため、NATOはメドヴェージェフが望む「対等の協力」に応じることには抵抗があるようだ。

 

現状ではNATOは、「ロシアとは情報交換にとどめ、MDの指揮権にまでは関与させない」という立場をとっている。そのため、上述のメドヴェージェフ大統領のMD提案についても、それが当初の交渉ポジションなのか、あるいは、西側のMD計画を阻止するための戦術なのか、判断に苦しんでいるという。

 

実際のところ、ロシアはNATOと共通で利用できるMDシステムを簡単に構築できるとは思っていないとも考えられており、協力を約束することで今後の交渉カードとして利用する意図があるともみられている。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.266 

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