世界は経済で決まる!?

大学受験で高校生は、数多くの大学・学部の選択を迫られます。しかし高校までの教育では、それぞれの学問について、ほとんど知識が得られない状況にあるのではないでしょうか? 何の情報も持たない高校生に、将来の大きな岐路となる大学・学部の選択を迫ることは、高校生だけでなく大学にとっても望ましくないと思います。

 

そこでシノドス・ジャーナルは今年から、悩める高校生のために『高校生のための教養入門』と銘打っての連載を開始いたします!「大学ってどんなところ?」「○○学って何をやるの?」などなど。そんな素朴な質問を、大学の先生にぶつけていきます。ときには大学の先生ではなく、社会で働く方々にお話をうかがうことも……?

 

記念すべき第一回は、経済学者・飯田泰之氏にお話をうかがいました。経済学はどんな学問なのか。経済学を勉強してなんの役に立つのか。経済学を勉強することの楽しさとは? 高校生だけでなく、すでに大学を卒業されている方もぜひご一読いただけると幸いです。(聞き手・構成/小島瑳莉)

 

 

―― 飯田先生のご専門についてお聞かせください。

 

ぼくの学問上の専門はマクロ経済政策学の実証分析です。財政支出、失業率、金利やGDPのような様々な経済変数のあいだに、どんな統計的な関係があるのかを調べるのが一番典型的な仕事。また、その統計的な関係に近い理論モデルは何かということを考えるのも研究の一部です。

 

経済学の研究は「理論」と「実証」に大別されます。実証派は、実際の経済を説明できるモデルをみつけ、それを使って経済政策の効果などを予想します。一方、理論派は、論理的に導かれたモデルが現実の経済現象を説明できるのかどうかに主な関心を持っています。ぼくはその実証派にあたりますね。

 

 

―― そもそもマクロ経済学ってなんですか?

 

経済学は、大きく「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」の2つにわけられています。大学では主に「ミクロ経済学」「マクロ経済学」「統計(計量経済学)」の3分野が教えられていて、この3つをやれば、経済学を一通り勉強したと言えるでしょう。

 

まずはミクロ経済学についてお話をします。ミクロ経済学は、個人や企業の行動選択がどのように決まるのかを明らかにするものです。一人ひとりがどのように行動するのかがわかれば、それが1億2千万人集まった日本経済が、どのようにモノを需要するかがわかるはずですよね。また、企業の活動を見れば、それぞれの企業環境・技術環境、原材料費などで、商品にいくらくらいの値段がついて、どのくらいの量を供給するのかがわかるはずです。

 

ミクロ経済学では、経済には需要と供給が一致するように価格や数量を調整する力があり、それによって効率面において最適な環境が作られると考えます。高校の授業で習った「見えざる手」は、この「市場を調整する力」のことですね。

 

しかしマクロ経済学は、この「見えざる手」の力が十分には働かない ―― 遠い先には調整されるかもしれないが、あまりにも時間がかかると考えます。たとえば、価格はそう動かないので需要と供給が一致しないまま経済が推移すると考える学者もいる。その他、現在のマクロ経済学は、ミクロ経済学は、「見えざる手」の力が働くために必要な条件をそもそも満たしていないのではないかとも考えています。

 

放っておいても「見えざる手」の力によって最適な状態になるのであれば、何もする必要はありませんよね。でもその力が働かないとしたら、じつは最適な環境なんて達成できないとしたならば、調整を待つだけではなく現在よりはましになるように策を尽くすべきだという議論になる。ミクロ経済学の考え方をそのままマクロの経済に適用すべきか、それともマクロにはミクロと異なる理屈が必要なのかというのが、経済学の大きな対立軸になります。

 

考え方は異なりますが、どちらかが間違っていて、どちらかが正しいというわけではありません。例えば風邪を引かないためにぼくたちができることは二つありますよね。ひとつ目は、風邪の予感がしたので、栄養ドリンクを飲んで、湯船にゆっくり浸かって、ぐっすり眠る対処法。これがいわばマクロ経済学の考え方。もうひとつ、そもそも体調を悪くしないように、体を鍛えて、毎日規則正しく生活をする対処法。こちらがミクロ経済学の考え方になります。どちらも決して間違った対処法ではありませんが、想定している時間の視野が違いますね。

 

少し具合が悪くて体育の授業を休みたいときに、「体を鍛えないのが悪い!」と先生に言われたら困りますよね。反対に保険の先生に「きみは体が弱いからずっと保健室のベッドで寝ていなさい」という言葉に毎日従っていたら体は弱ってしまう。ミクロ経済学とマクロ経済学は、場合によって使い分けながら、どちらも使いこなすことが大切なんです。

 

iida

 

 

 

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