2017.07.28

地球の外に生命を探せ!

『地球外生命は存在する!』著者、縣秀彦氏インタビュー

情報 #新刊インタビュー#アストロバイオロジー#地球外生命#エンケラドス

宇宙人は存在するのか。古くから、人々はその存在を探るべく宇宙にメッセージを発してきた。未だ宇宙人からの返事はない。しかし近年、観測技術の向上により、太陽系内外を問わず、生命の可能性を秘めた天体が見つかってきている。果たして地球外生命体は存在するのか。探査の最前線を、『地球外生命は存在する!』の著者、縣秀彦氏に伺った。(取材・構成/増田穂)

幅広い生命の定義

――単刀直入に伺います。地球以外にも生命体は存在するのでしょうか。

いないと証明できません。例えば家にゴキブリがいるというのは、見つければいいので簡単です。しかし反対に「いない」と言い切れるかというと、これは大変難しい。ゴキブリは物陰に隠れているわけですから、いても気づかないことの方が圧倒的に多いのです。

宇宙人も同じだと考えています。「いる」ということは発見すればすむ話です。確かに今のところ宇宙人は見つかっていません。しかし、今現在見つかっていないからと言って、いないと証明したことにはなりません。

ゴキブリは1匹いたら、家にいるのがその1匹だけだった、ということはまずないですよね。芋づる式に見つかります。宇宙人、地球外生命体捜しというのはそういうものだと思っています。最近はアストロバイオロジーという新しい学問領域で、そうした地球外生命に関する研究が行われています。

――アストロバイオロジー……。あまり聞き慣れないです。

日本語で言うと「宇宙生物学」です。1990年代くらいから始まった、かなり複合的な学問領域で、生物学、化学、宇宙物理学、天文学など、さまざまな分野の人たちが参入しています。特に若い世代が続々と集まってきていて、とても活気のある領域です。

アストロバイオロジーはまだまだ発達段階の研究領域です。学問的に確立しているとは言い難い。現段階のアストロバイオロジーは、どちらかというと、さまざまな科学分野の研究者の中で、生命にかかわるテーマに関心をもった人たちが集まり、情報共有をするためのプラットフォームになっている感じです。具体的には、生命とは何か、地球上のどこで発生したのか、どのような進化をしてきたのか、宇宙にも生命はいるのか、そういうテーマです。

――生命に関わる研究、とのことですが、そもそもどのようなものを「生命」というのですか。

それは大変難しい質問ですね。もちろん、古典的な生物学ではほぼ統一した定義が存在します。高校の教科書にも書かれていますが、(1)自分と他の物を区別できる、(2)代謝をする、(3)自己増殖する、さらに(4)進化の可能性がある、を付け足す場合もあります。

(1)は、自分と他の物との間に境界を持つということです。(2)は必要なものを取り入れて、いらないものを排出する行為。例えば人間は呼吸をして必要な酸素を取り入れ、不必要な二酸化炭素を排出しています。(3)は分裂したり、子孫を残すことですね。(4)はそのまま、進化するかどうかです。これが生物学界での古典的な生命の定義です。

しかし、こうした定義は揺らいでいます。子孫を残そうとしないものは生命ではない、なんてありえないですよ。未婚の方やお子さんを持たないご家庭もあるでしょう。

それに、最近ではAI技術が目覚ましい発展を遂げています。例えば将来、非常に高度な知能を持つAIが作られたとしましょう。もちろん最初は人工的に生み出されます。しかしその後は、彼らが自分で自分を作れるようになるかもしれません。今でも工場の多くはオートメーションされたライン上で製品を作っています。将来的にはロボットがロボットを生み出す日が来る、つまり自己増殖する日が来るかもしれません。

ロボットは電気をチャージしますから、熱を発します。必要な電気エネルギーを取り入れ、不必要な熱を放出する。代謝の条件も揃います。自分と他の物との境界を持つことは言うまでもありませんし、自動学習機能で進化するかもしれません。そう考えると、本当に生命の定義は揺らいでいるんです。

アストロバイオロジーでは、さらに話は複雑です。先ほど申し上げた通り、アストロバイオロジーはさまざまな分野の科学者が参加する学際的なプラットフォームです。したがって、それぞれの分野の研究者が、それぞれの定義で話をします。

「生命」も、生物学を背景に持つ方でしたら、先ほどの定義で一通りの合意はとれるかもしれません。しかし宇宙物理学者の連想する「生命」はもっと広い。例えば人間が理解しているタイムスケールとは別に、ナノ秒みたいな単位で生きている生き物とか、別次元に住んでいる生き物とかがいるかもしれません。SFみたいですが、そうした可能性も研究の範疇です。

ポイントは熱源と水の存在

――そうすると、宇宙で捜している生命も、かなり広い枠で捉えて捜しているのでしょうか。

捜している生命は大きく分けると2つに分けられます。一つはとにかく「生き物」、もう一つは「知的生命体」です。前者をA、後者をBとしましょう。Aの方は、あまり進化していません。要は有機物、つまり炭素を材料とする生物で、顕微鏡で見ないと見えないくらいの非常に小さなものです。地球上でも、生命はそうした微小なものから始まり、38億年をかけてゾウやシロナガスクジラのような大きなものまで幅広いバラエティを生んだのです。

Aについては、地球以外の太陽系内の天体のどこかにいないか探っています。一番近いところでは、地球の上空500kmを周遊している国際宇宙ステーション(ISS)で、エアロゲルという宇宙空間の粒子を採取する物質を置き、そこに付着したものの中に微生物がいないか調べています。「たんぽぽ計画」というものです。

他に代表的なものと言えば火星探査です。火星探査は1960年代から繰り返し行われています。さまざまな目的で探査が行われていますが、その一つが生命探査です。火星に生命が存在する可能性は否定できないですからね。あとは木星の衛星や土星の衛星にも生命の可能性を否定できない衛星があります。こうした天体での生命探査には、直接探査機を送って、そこにいる生命、もしくは生命の化石を採取する手法での調査のほか、代謝によるメタンや二酸化炭素の排出の痕跡がないか観測する手法が取られています。

今のところ、確実な生命の証拠は全く見つかっていません。同時に、これは本当に生命がいないのか、我々の探査能力が足りないだけなのかもわかりません。可能性はまだゼロではないのです。

――どういった条件から、生命の可能性を判断しているのですか。

一つのポイントは液体の水があるか否かです。地球の場合は明確です。表面の7割を海に覆われています。地球規模で考えると非常に薄い膜のような海ですが、そのおかげで生命が生まれ進化しました。生命は、有機物の一つで非常に高分子です。有機物の化合は水がないと進みにくく、高分子の化合は水がなくては起こり得ないと考えられています。したがって、水の存在が生命の可能性の重要な判断材料になるのです。

水は、熱源となる太陽から近すぎると蒸発してしまいますし、反対に遠いと凍ってしまいます。ですから、暑くもなく寒くもない、太陽からのちょうどいい距離に位置していることが重要です。そうした水が存在できるエリアを、ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)といいます。

しかし、ハビタブルゾーンにあるからといって、生命が存在できるわけではありません。例えば月は地球と同じくハビタブルゾーン内にあります。しかし水も大気もほぼありません。したがって生命も存在できないのです。天体のサイズも重要なのです。

――先ほどお話にあった火星は、ハビタブルゾーンに存在し、水もあるとされています。

ええ。火星は地球の10分の1の重さの小さい天体です。これが何を意味するかというと、惑星としての進化が早いということなんです。火星でも、進化の過程で、地球と同じように表面が海で覆われていた時代がありました。しかし、今ではなくなってしまっている。ただ、水があったということは、今表面になくても、どこかに保存されているわけです。火星の地下に凍結した状態で残っていると考えられています。そこに、バクテリアなどのそこまで進化していない生き物の痕跡が残っているかもしれません。

――土星や木星の衛星についてはいかがですか。

土星や木星の衛星はもう太陽のハビタブルゾーンからは外れているので、表面は凍っています。ただ、さまざまな証拠から、氷に覆われた内部に液体の水の部分がありそうなんです。確実に水があるのは木星の衛星エウロパ。同じく木星の衛星ガニメデはおそらくあるだろうと言われています。

土星の衛星エンケラドスにも確実に水があると考えられています。しかもエンケラドスではその水が割と表面に近いところにあると考えられているので、もし生物がいるとしたら比較的容易に見つけることができるかもしれません。

――エウロパやエンケラドスは太陽系のハビタブルゾーンの外に位置していますが、寒すぎないんですか?

確かに太陽からは離れていますね。ただ、宇宙での熱源は太陽のように光っている恒星だけではないんです。土星や木星を周回している衛星は、みな氷の塊です。おっしゃるように寒いですから。ではなぜその内部が一部溶けているのかというと、潮汐力が働くからなんです。

――潮汐力、ですか。

木星には60以上もの衛星が見つかっていますが、エウロパは比較的木星に近いところにあります。すると、重力で互いに引き合う力が起こるのです。月と地球でも重力が働き、潮の満ち引きが起こります。それが潮汐力です。潮の満ち引きって結構大きな運動ですよね。それだけのエネルギーが発生しているということなんです。エネルギーが発生するということは、熱が発生するということです。つまり、潮汐力によってエウロパの内部は熱を持ち、その結果として氷が溶けるのです。

ちなみ木星にはエウロパより内部にイオという衛星があります。イオはより木星に近い分、潮汐力も大きく働きます。エネルギーで地下が暖められて、イオでは火山がぼんぼん爆発しています。つまり、太陽からのハビタブルゾーンから外れていても、そうした熱源があれば、「ハビタブル」なんです。これもアストロバイオロジーの中で定義がまとまっていないこところですね。

知的生命体は太陽系外に

――B、つまり知的生命体の方はどのように探査しているのでしょうか。

知的生命体に関しては、地球以外の太陽系の天体にいる可能性はゼロ、全くありません。SF映画では火星に地底人がいる話などもありますが、もし人類と同等以上の生命活動をしている生命体が地下に存在していたら、代謝の影響で周囲の環境に何らかの変化が起こるはずです。しかし、そうした変化は一切検知されていません。

また、生き物は高度に進化すると、コミュニケーションを行います。その情報伝達の際には、電波が使用されると考えられます。通信において電波以上に便利なものはありません。ですから、知的生命体の可能性は、人工的な電波の有無によって判断できます。そうすると太陽系では、地球以外からは一切人工的な電波は出ていないのです。

一方で、地球からはばんばん人工電波が出ています。太陽系の外側でも、近いところであれば観測できるほどです。つまり、近隣に知的生命体がいて、電波観測をしていたら、向こうも我々の存在に気付いているはずですし、それに対して、何らかのリアクションをしてくるはずだと想定されます。しかし、そうしたことも起こっていません。こうした点を考えると、太陽系内に知的生命体が存在するというのは考えにくいんです。

――となると、可能性は太陽系の外側ということですか?

その通りです。しかし、太陽系の外側というと、今度は遠くて行けません。微生物がいても確認のしようがないんです。したがって、太陽系内での生命探査とは別のアプローチが必要になります。具体的に一つは環境条件ですね。オゾンや液体の水など、その星に生命の条件と考えられている環境条件があるかを観測して調べることになります。もう一つは我々がコミュニケーションを取れるような電波を出す知的生命体が存在するか捜すということになります。

――具体的にはどのような天体が候補としてあがっているんですか。

2009年にケプラーという宇宙望遠鏡が打ち上げられました。ケプラー宇宙望遠鏡は、はくちょう座の方向を丹念に調べて、その方向にたくさんの太陽系外惑星を発見しています。その中のいくつかは恒星からのハビタブルゾーンに位置している地球と同じくらいのサイズの惑星であることがわかっています。そうした惑星にはやはり期待が高まりますね。

ケプラー以外が最近見つけたもので注目を集めているものもあります。ケンタウルス座アルファ星Cb、もしくはプロキシマbといわれる惑星です。ケンタウルス座のアルファ星というのは太陽系から4光年ちょっとの距離にある、太陽からもっとも近い距離にある恒星です。3つの恒星が連なっている連星で、2つの太陽がお互いの周囲を回っていて、その外側を残りの1つが回っています。この1番外側にある恒星をプロキシマといい、そのごく近いところにある惑星がプロキシマbです。このプロキシマbが地球と近いサイズで、生命の可能性が否定できない惑星です。

プロキシマbに知的生命体がいたらおもしろいですよ。電波や光を信号にしてメッセージを送れば、10年もしないうちに返事が返ってきますからね。生きているうちに8回くらいは宇宙人とコミュニケーションが取れる。もちろん、お互いに仲良くやろうという意思が必要になりますが、それができたら楽しそうじゃないですか。

――どんなメッセージが返ってくるのかわくわくしますね。

でしょう。ただ、プロキシマbに関しては生命の可能性を疑問視しなくてはならない部分もあります。先ほど申し上げた通り、プロキシマbは恒星との距離が非常に近いのです。恒星は、光や熱だけでなく放射線も発しています。これだけ近い距離にあるということは、それだけ多くの放射線を浴びているということです。強烈な放射線の中、生命が普通に生きていけるのか、疑問は残っているんです。

――うーん、地球外生命への道はなかなか難しいですね。

とはいえ、プロキシマbにも放射線に強い何かしらの生物が存在するかもしれないので、可能性はゼロではありません。私は今後の探査を楽しみにしていますよ。

高まる系外生命体への期待

――系外惑星での知的生命体の探査は、今あったようにハビタブルゾーンに位置する地球サイズの惑星、ということで捜しているんですよね。

ええ。惑星にはバラエティがあって、木星や土星のようにガス惑星は地面を持たないんですよ。こうした惑星は水素などのガスで構成されていて、内部に行けばガスが圧縮されていますが、基本的はぼや~っとした状態です。そういうところに存在する水は、非常に細かい水滴の状態で存在しています。有機物の化合が起こるには、足りないんです。必然的にガス惑星では有機物を主成分とする生命の可能性は低くなります。

――なるほど。だから岩盤の存在する地球型惑星が候補としてあがるんですね。

そうです。岩盤でなく、氷でもいいのですが、固まった地面を持っていることが必要になります。それで地球型、地球サイズ、ということが重要になってくるんですよ。

――先ほど先生は太陽系内の生命体の可能性の話をした際、恒星からのハビタブルゾーンに位置しなくても、潮汐力によってハビタブルになっている可能性があるとご指摘されていました。一方で現在の太陽系外での生命探査は、恒星からのハビタブルゾーンに位置しているかを重要な見極めポイントとしていますよね。しかし潮汐力のことを考えると、生命の可能性はさらに広がるのでしょうか。

いいところに気付きましたね。その通りです。恒星から離れた惑星や衛星については、単に見つけられるか否かの問題なんです。現在系外惑星は3600個ほど見つかっています。そしてそのうちの10数個がハビタブルゾーンに存在する地球サイズの惑星です。しかしその10数個以外の系外惑星に衛星がある可能性は十分にあります。そしてその衛星が、惑星との潮汐力により水を持ち、生命が存在可能になっていることもあり得ます。今注目しているハビタブルゾーンにある地球型惑星以外にも、可能性のある星は無限にあるんです。

今後の探査の行方

――今後こうした星々への調査はどのように行っていくのでしょうか。

A、つまり太陽系内の生命体探査については、実際に探査機を送ってそこに行くという方法が取られています。火星がその最たる例で、しょっちゅう探査機が行っていますし、今後の計画もあります。日本の場合はフランスと共同でMMXという探査計画があります。こちらでは、2023年に火星の衛星、フォボスかダイモスに軟着陸して、サンプルリターンを行う予定です。フォボスやダイモスに生命がいる可能性は低いですが、実際に火星の衛星から物質を持ち帰り、それらを分析することでなんらかのヒントが得られるかもしれません。さらに、米国NASAでは火星有人探査も検討されています。ロボットが行って調査を行うより、まだ人間が行った方が調べられることは幅広いですからね。

それ以外で生命の可能性が一番有力な太陽系内の天体はエンケラドスです。しかしエンケラドスは非常に遠い。地球からは太陽との距離の10倍も距離があって、そこまで探査機を飛ばすのはなかなか難しく、現段階では探査計画はありません。一方で木星の衛星エウロパは古くからその存在が確認されていて、注目されていることもあり、探査機を飛ばしたいという声は上がっています。ただ、具体的な計画は固まっていません。

――太陽系内の探査といってもなかなか難しいところがあるのですね。系外惑星探査の方はいかがですか。

太陽系外で生命体を探す上で一番手っ取り早いのは、宇宙人が発している電波を受信することです。中には地球に生き物がいることを知っていて、電波信号を送っている生命体がいるかもしれませんから、その電波を受け取る作業もできます。こちらはSETI(セチ)というプロジェクトで、アメリカのフランク・ドレーク博士が先頭にたって行われてきました。

地球への電波信号でなくても、知的生命体がいて電波を発している天体があれば、それを傍受することも可能です。現在SKA(Square Kilometer Array)という世界最大の電波望遠鏡を作る計画が進行しています。南アフリカとオーストラリアにたくさんの電波望遠鏡を並べて、1キロメーター四方の望遠鏡と同等能力の電波望遠鏡群を作ろうというものです。SKAにはいろいろな研究テーマが課せられていますが、その一つは知的生命体が出している人工電波を捕捉するというものです。

同じく複数の電波望遠鏡を並べて大きな望遠鏡と同じ精度の観測施設を建設するということでは、2013年に完成したチリのALMA(アルマ)望遠鏡などがあります。ALMAは現在66台の電波望遠鏡から構成されていますが、SKAでは何百台もの望遠鏡を並べようとしています。

――壮大な計画ですね。

ええ。あとはケプラーに続く宇宙望遠鏡の企画ですね。TESS(テス)といいます。現在の望遠鏡技術では、ハビタブルゾーンに地球型の惑星があることはわかるのですが、その天体の細かい様子はわかりません。TESSは遠からず打ち上げられる予定で、これが成功したら太陽系近傍の恒星をより丹念に調べることが可能になります。

同じく系外惑星を丹念に調べるという意味では、国立天文台が行っているTMT計画もありますね。直径30メートルの望遠鏡を作って、主に赤外線を観測しようとするものです。口径が30メートルあれば、口径8.2メートルのすばる望遠鏡の13倍もの集光力になるんです。すると、系外惑星の明かるさの変化や、表面の大気の組成などを調べられるようになります。30メートル級の望遠鏡は2020年代に世界中で3台稼働する予定です。

――系外惑星の環境の詳細がわかるようになり、生命の可能性もより具体的に判断できるようになるんですね。

そうです。例えば大気にオゾンが発見されれば、光合成をする植物がいる可能性を示します。オゾンは微弱なので、確認は難しいかもしれませんが、他にも二酸化炭素、メタン、酸素や水があれば、生命の期待が持てます。もちろんメタンや二酸化炭素などは生命以外からも排出されるので、生命存在の確証とはいきませんが、可能性にはなります。

あとは、仮にその惑星に光合成をする植物があれば、遠い宇宙からその惑星を見た場合、可視光線に比べて赤外線でとても明るく輝くという「レッド・エッジ」という現象が起きます。これは、光合成する植物が可視光を吸収し、必要の無い赤外線を反射しているからです。レッド・エッジを観測できれば、生命の可能性に繋がってきます。

他にも、天体の表面が液体の海なら、恒星の光がそこだけ強く反射するので、自転の周期に合わせて星の光り具合が変化します。そうした星の光り具合に変化のある天体が観測できれば、そこには海の可能性、ひいては生命の可能性ということになります。

これらが生命の確証というわけではありません。あくまで可能性です。しかしこうした天体に向けて信号を送ってみて、反応を見ることはできます。こうした探査の中から、遠からず別の生命体の示唆するシグナルが見つかるかもしれません。宇宙は可能性に満ちているんですよ。

――無限に広がる宇宙の中で、他の知的生命体と出会い、交信ができる日が近づいていますね。縣先生、お忙しいところありがとうございました!

ご支援ください

地球外生命体の可能性を魅力たっぷりに語ってくださった縣秀彦先生がお勤めの国立天文台は、国際天文学会と協力して、来年春に天文に関する科学コミュニケーターの育成に関する国際会議を開催予定です。経済的な理由から、参加が難しい発展途上国の科学コミュニケーターを会議に招待するため、クラウドファンディングに挑戦中です。一人10万円、30名の招待を目指しています。ぜひ、ご支援ください:https://camp-fire.jp/projects/view/21790

途上国での天文学普及の重要性については、こちらで縣先生が熱く語られています。ぜひ合わせてご覧ください。

夢と希望を与える天文学――天文の力で世界を平和に

国立天文台普及室長、縣秀彦准教授インタビュー

https://synodos.jp/science/20049

プロフィール

縣秀彦国立天文台 天文情報センター・准教授/普及室長

1961年長野県生まれ。信濃大町観光大使。東京学芸大大学院修了(教育学博士)。東京大学教育学部附属中・高等学校教諭等を経て1999年より国立天文台勤務。現在、天文教育研究会会長など。『面白くて眠れなくなる天文学』(PHP出版)、『地球外生命は存在する!』(幻冬舎)、『星の王子さまの天文ノート』(河出書房新社)、『オリオン座はすでに消えている?』(小学館)など多数の著作物を発表。NHKラジオ深夜便「ようこそ宇宙へ」を担当、NHK高校講座「地学基礎」にも出演中。

この執筆者の記事