円高が好きな人たちの「正体」とは?

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日本経済再建の「本丸」は公務員給与にあり?

 

飯田 ただ、一つだけ日銀寄りの人が言うことが正しいのは、今回のバーナンキFRB 議長の「2%宣言」は、いわゆるインフレターゲットではないんですよね。たとえばイギリスのようなインタゲではない。

 

安達 つまり法的な拘束力がない、ということですね。

 

飯田 そうなんです。その違いがあるのは確かですが、でもやっぱりバーナンキが言うと効くんですよね。

 

安達 ただ、ステートメントを見ると、2%というゴールは書いてあって、そこにいたるFRBの考える経路も書いてある。だからコミットメントの仕組みはできているので、それはインフレターゲットであると……

 

飯田 言ってよい、と。

 

安達 少なくとも経済学部的には、インタゲだと言ってよい。法学部的にはダメなのかもしれない。

 

飯田 ああ、なるほど。だからやっぱりアメリカでは効いている。

 

安達 効いていますね。

 

飯田 日本でも「効く」ようにするためには何が必要なんでしょう?

 

安達 基本的にはコミットさせないといけないと思うんです。誘導目標を法的に定めるためにはどうするか、とか。ちゃんと明文化してやらないとやっぱりダメだと思いますね。

 

飯田 でも、明文化してもやらなかった場合は、どうしましょうか?

 

安達 その場合はどうしましょうか? 達成期間の設定と、罰則規定を作るんですかね。

 

飯田 いちばん恐いのは、法律で2%と決まったとたんに、日銀が徹底した吸収オペレーションをやって、もっとデフレにして「インフレーションターゲットをやったらデフレになりました」って言いはじめることです。そうなったらどうしようか、と。

 

安達 なるほど。しかしそれは……

 

飯田 けっこうあり得るんじゃないかと思っているんです。

 

安達 結局、目標値を日銀が決めちゃいけないということですよね。

 

飯田 そうです。さらに言えば、デフレ下では手段の独立も与えないほうがいいんじゃないか、とさえ思うことがあります。おそらく2%のインフレーションターゲットを法律で定めたとしても、何もしないというオプションがありますから。あとインフレ率が上がってきても、例えば2000年と06年のゼロ金利解除みたいに、将来に高いインフレ率が予想されたとかいって引き締められたら……

 

安達 絶対に効かない。

 

飯田 だからその意味でも、いまはすごくまずい状況にあるんじゃないかと。南宋の末期とか、朝鮮が日本に併合されたときとかって、けっこうそのノリだったりするそうです。官僚がライバル組織に対抗するために、国を滅ぼしてしまう。

 

安達 ああ、なるほどね。だからもう日銀ではなくて、公務員の給与額を名目GDPに連動させるとか、そういう拘束ですね。

 

飯田 そう、まったくそれだと思いますね。

 

安達 インセンティブを与えないといけない。

 

飯田 誰かがツイッターで言っていたんですが、地方公務員の給与は原則としてその地方の経済水準にがっちり連動させられている、と。

 

安達 まあ、たしかに。

 

飯田 なぜ国家公務員は日本経済に連動させていないんだ、と。そのとおりでございます(笑)。

 

安達 そうですね。だから公務員の給料を、名目成長率とリンクさせちゃえばいいんです。

 

飯田 公務員の毎月の給与は民間の給与水準と連動させる、ボーナスは名目GDPに連動させる、といったシステムにすると全然違ってくると思いますよね。

 

安達 全然違いますよね。もう、そういうインセンティブを与えないといけない。

 

飯田 マイナス成長だったらマイナスにします、と。企業だって業績に連動させますよね。

 

安達 それが当たり前のような気がするんですよね。外部ショックで業績が悪くなっても、民間会社は責任取りますからね。「一生懸命やりましたけどダメでした。だから給料は減らしません」ってことはない。

 

飯田 ない。そんなのはあり得ないですよ。例えば製造業なんて、この円高による打撃には彼ら自身の責任などないのに、給料はがっつり減らされていますよね。ちなみにぼくの大学は私立大学なので、「投資運用の失敗」という教員とは無関係の理由でしっかり給料削られていますし(笑)。その一方で公務員は、なぜ下がりにくいのか。GDPと給与を連動させて、マイナス成長ならばマイナスにする。逆に名目成長率が高いときは、公務員の給料もボンボン上げればいい。

 

安達 そうそう。

 

飯田 「インタゲ導入しろ!」とか、ぼくもいろいろ言っていますけど、じつはそこが本丸かもしれない。

 

安達 基本的な発想が違うような気がするんですね。「人口が減っているからデフレは解消できません」とか彼らは言いますが、日銀の仕事は「物価の安定」です。物価安定の目標として1%の上昇率を定めているのに、その水準で安定させていない。つまり「仕事をしていない」という結論になるはずなんです。

 

飯田 どの会社でもそれは同じだと思うんですよね。「いや、でもこんなに残業してがんばっています」なんて言い訳にはならないはずです。

 

安達 そう、それはおかしいんです。だから本当は、「責任」こそが最大のポイントなんです。

 

(2012年2月8日 光文社にて収録)

 

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