2023.08.16

スローガンは 『旅に出よう』――第34回東京学生映画祭

文化

日本でもっとも長い歴史をもつ国内最大規模の学生映画祭、「東京学生映画祭」が、8/18(金)~20(日)にかけて渋谷ユーロライブで開催されます。そこで東京学生映画祭企画委員会の金煕秀さんたちに、今回の見どころや今後の意気込みについてお話を伺いました。

――東京生映祭について教えてください。

 東京学生映画祭は「東学祭」としても知られている、日本でもっとも長い歴史をもつ国内最大規模の学生映画祭です。学生が製作した映像作品を全国から募集して、コンペティション形式でグランプリを決めています。

東学際は、学生ならではの自由な発想や感覚を大切にしていて、多くの方々のご協力をいただきながら、学生のみで企画・運営を行っています。学生映画と映画界全体の振興に貢献しながら、映画を志す学生と映画界の架け橋になっていくことを目的としています。

過去の出身監督には、『EUREKA』青山真治監督、『君に届け』熊澤尚人監督、『アヒルと鴨のコインロッカー』中村義洋監督、『君の膵臓を食べたい』月川翔監督、『ちはやふる』小泉徳宏監督、『溺れるナイフ』山戸結希監督などの方々がいます。

――第34回となる今回の見どころについてえてください。

 今年のスローガンは 『旅に出よう』です。沢山の方々に「映画」という旅に東学祭を通して出てほしい、またその手助けをしたいという思いから掲げたコンセプトです。

今年は3日間、コンペと特別企画上映、全部合わせて29作品を上映します。とくに、去年よりプログラム数を増やし、もっと多くの学生監督の作品を映画館で流して、普段、触れる機会の少ない学生映画の魅力を観客たちに届けようとしています。

また、ゲスト審査員として、石井岳流監督、首藤凛監督、長谷川和彦監督、原恵一監督、幸洋子監督にお越しいただく予定です。プロの監督さんから見た、今の時代の学生映画のコメントや感想を聞けることも、東学際ならではの一つの見どころだと思います。コンペ以外にも8ミリ・16ミリ特集やオダギリジョーさんの特別講義など、色んな企画も準備したので是非楽しみにしてください!

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――コンペ以外に企画されている、ふたつのイベントについて教えてください。

藤崎(8ミリ・16ミリ特集) 今回の企画に関しては、学生映画の時代を振り返る、というのが1つのコンセプトになります。チョイス自体はわたしの好きな自主映画や好きな監督の作品を並べたみたいなところはもちろんあるのですが、わたしが今の学生映画に思うところみたいなものも少し関係しています。

わたしは映画祭の運営が今年で2年目になるのですが、去年ここに入って沢山の学生映画を観たとき最初に思ったのは、すごくクオリティが高いな、ということでした。ミニシアターで上演されてもおかしくないような映画も何本もあって、それは純粋に驚いたしすごいと思ったのですが、そういう作品を多く観ていくうちに、少しだけ不満のようなものを覚えるところがありました。

今までぼくが観てきた数少ない学生映画というのは、今回流すような作品であったり、今回、審査員で来ていただく石井岳龍さんの学生時代の作品だったりするのですが、そのあたりの作品はプロの作品と比べると予算もないし、やはり粗かったり拙かったりします。しかし、そこを超える何かが、画面から情熱みたいなものが伝わってくるのです。今までの映画なんか知るか、みたいな。

ぼくはそう思っていて、やはり今フィルムからデジタルになって、映画を勉強できるところも増えて、撮りやすくなったし、みな上手くなって、それはとてもいいことだと思うのですが、そういったところから飛びぬけた当時の学生映画の自由さ、みたいなものを今の学生に体感して欲しいな、と思いました。

そして、それにはやはり、なるべく当時と同じように、フィルムで上映することも必要だと思いました。そうしたところが今回の企画の狙いになります。もちろん最初に言ったように、自分が大好きな作品を単純にスクリーンで観たかった、というのもあるのですが。いずれにしても、どれも凄くレアな作品です。

多胡(オダギリジョーさんの特別講義) オダギリさん企画にあたっては、わたし自身がオダギリジョーさんのことが大好きだというのが始めにあります。これは完全な私心になってしまうのですが、わたしが映画を好きになったきっかけは、オダギリさんなのです。『時効警察』を見て、オダギリさんのことを好きになって、オダギリさんが出演される映画を見るうちに、映画自体も大好きになったという流れです。オダギリさんは、インディーズや大作を問わず、本当に多くの映画に出演されています。オダギリさんのおかげで多くの映画に出会えたので、東学祭のゲストとして呼びたかった。

あとは、PFF×早稲田大学の「マスターズ・オブ・シネマ」(※1)です。わたしは早稲田ではないので、あとからオフィシャルレポートを読んだのですが、学生のために心を砕いていろいろなことをお話されています。今後の映画界を支えていく若者のために、こんなに考えてくださっているんだと、本当に嬉しく思いました。早稲田だけではなく、多くの若者にオダギリさんの言葉を直接届ける機会を作るために、このイベントを企画しました。

オダギリさんは、俳優だけではなく、『ある船頭の話』のような映画、『オリバーな犬』シリーズのようなドラマと、本当にさまざまなフィールドで活躍されています。『ある船頭の話』は、静かな いかにも日本映画という作品で、『オリバーな犬』シリーズは、カオスな  エンタメに振り切った作品というように、正反対の作品を監督しています。(今回上映する 『時効警察』二期8話と『さくらな人たち』はオリバー寄りです)さらに、オダギリさん自身も、ご自身の監督作に出演している。これほど多岐にわたって活躍されているのはオダギリさんだけではないかと思います。

また、あるインタビューで、オダギリさんが映画に出始めた2000年代初頭は「作家性や芸術性が重視され、インディーズ映画も盛んに作られ、映画界が賑やかで、すごく楽しい時代だった」(※2)、「自分たちが最後の「映画俳優」の世代」(※3)とおっしゃっていました。そんなオダギリさんに、ご自身の目で見たこの20年ほどの日本映画界の変化や未来、若者へのメッセージを語っていただくトークショーは、とても価値のあるものになるはずです。お客さんからの質問タイムもあるので、ぜひお越しください!

(※1)PFF×早稲田大学の「マスターズ・オブ・シネマ

(※2)オダギリジョー×麻生久美子インタビュー

(※3)オダギリジョー×池松壮亮×麻生久美子インタビュー

――今後の気込みをお聞かせください。

 映画を志す学生たちの目指す場所、本客的にプロの世界に入る前の「登竜門」的な存在にしていきたいと思っています。将来有望な学生監督を発掘して、多くの人々に知ってもらう機会を作ると同時に、業界でのネットワークを広げる場として、東学際の立ち位置を広げたいです。

さらに、東学際で入選、受賞したことが監督たちにとって、今後もずっと自慢のできる受賞歴であって欲しいです。来年で東学際はもう35回目を迎えますが、今まで先輩たちが築いてくれた「東学際」を引き継いで、もっといろいろなことにチャレンジして、認知度の向上、映画関係者と学生の出会いの場の充実などの目標を成し遂げるようがんばります。これからも東学際への応援よろしくお願いします!

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