2013.04.06
荻上チキ対談集Ⅰ
こんにちは! シノドス編集部です。
日々、新たな問題が生まれ、社会はめまぐるしく変化していきます。あんなにも報道が過熱した社会問題が、短期間のうちに、解決の糸口を掴めぬまま忘却の彼方へ追いやられてしまう。あまりにも多くの問題が存在するために、いま社会がどんな問題を抱えているのか整理できない。一つ一つの問題についても、様々な専門家が多種多様に語るために、何が問題とされていて、どんな解決策があるのかまとめきれない……インターネットの普及によって入手可能な情報が増えた分、わたしたちは着実に情報を整頓する必要性が高まっています。
そこでシノドスは、いままで電子マガジン「αシノドス」に掲載してきた各領域の専門家の論考や対談などを、新たな切り口で再編集した電子書籍「シノドス新書」を発刊することにいたしました。
私たちの社会が抱えている数多の問題を、特定のテーマでまとめ情報を整理することで、それぞれの問題の輪郭をよりはっきりと捉え、いま私たちが必要としているものに気がつくことができるのではないでしょうか。
社会問題だけではありません。日進月歩で開発が進み、新しい未来を切り開いていく科学技術。文学や映画など、私たちの人生を豊かにする様々な文化。このように、シノドス新書は多種多様なラインアップで、いまあなたが必要としている情報をお届けいたします。
記念すべき第一号は『荻上チキ対談集Ⅰ』と題し、シノドス編集長・荻上チキがおこなってきた数多くの対談の中から5つの記事を収録。メディアや雇用、社会福祉から教育まで、各領域の専門家との刺激的な対話は、いまわたしたちが抱えている社会の問題を改めて考えるにふさわしい内容となっていることでしょう。
第1章は、2012年11月、荻上チキ『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』の出版にともなって行われたインタビュー。足を引っ張りあう「ダメ出し」ではなく、代案を出していこうと呼びかける「ポジ出し」。シノドス編集長・荻上チキなりの、そしてシノドスなりのマニュフェストをまずお読みください。
続く第2章は、ジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介氏との対談。2011年12月に津田氏が代表を務める有限会社ネオローグがインターネット国民投票サイト「ゼゼヒヒ http://zzhh.jp/」をオープン。本対談はゼゼヒヒが公表される以前に行われたものになります。津田氏がなぜ政治メディアを作ろうと考えたのか、新しいネットメディアにはどのような可能性があるのか、熱い対話をお楽しみください。
若年雇用問題は近年、ことあるごとに話題になっています。特に二極化の進む非正規雇用と正規雇用を対立関係におき、正規雇用は幸せで、非正規雇用は不幸せであると論じられることが多々あります。第3章では、労働経済学を専門とする安藤至大氏をお招きし、不景気や少子高齢化を抱える日本の雇用はいまどんな状況にあるのか。そして望ましい雇用のあり方を実現するためには何が必要なのか、荻上と語っています。
シノドスは2012年6月に、荻上チキと作家・大野更紗さんを編集長に、「見えない障害」を可視化するメールマガジン「困ってるズ!」を立ち上げました。その背景には、障害当事者にとって望ましくない支援法の成立がありました。本人ではなく専門家が、その人のできることと必要な介助を決めてしまう。その人が何に困っているのか、どんなニーズがあるか知った上で、介助を考えなくてはいけないのではないか。第4章では小児科医であり、脳性麻痺をもつ熊谷晋一郎氏に、望ましい支援のあり方について、障害者支援の現状についてお話いただいています。 ※メルマガ「困ってるズ!」は終了しました。
第5章はルポライター・鈴木大介氏との対談。昨年、芸能人の親族が生活保護を不正受給していたことが発覚し、生活保護に対するバッシング報道が急増しました。しかし「不正受給」の前に、生活保護をもらえるはずの人たちが生活保護をもらわない「不受給」にこそ、目を向けるべきなのではないか。本対談後にワリキリをする女性への調査をまとめた『彼女たちの売春(ワリキリ)』を出版した荻上チキと、同時期に出会い系サイトを使った援助交際を行う少女への取材をまとめた『援デリの少女たち』を出版した鈴木大介氏が、生活保護とそれを巡る社会問題について話し合います。
荻上チキは「データに基づいた議論を行おう」と提案し、政治や経済など、様々な専門家の話を聞いてきました。本書最後にあたる第6章では、ユニセフジンバブエ事務所教育担当官の畠山勝太氏と、教育政策のあり方について問いなおしています。畠山氏の豊富なデータによって、日本で世間を騒がす様々な教育政策が検証し、教育政策のあり方を説得力を持って語ることができます。世界ではどのような教育政策が行われているのか。学歴と所得にはどのような因果関係があるか、データに基づいたいじめ問題の議論を行うとき、なにがみえてくるのか。データに基づいた議論の意義を実感いただければ幸いです。
以上、1つのインタビューと5つの対談を収録。各論者による「ポジ出し」の競演をどうぞお楽しみください!
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プロフィール
荻上チキ
「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」スーパーバイザー。著書に『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『未来をつくる権利』(NHKブックス)、『災害支援手帖』(木楽舎)、『日本の大問題』(ダイヤモンド社)、『彼女たちの売春(ワリキリ)』(新潮文庫)、『ネットいじめ』『いじめを生む教室』(以上、PHP新書)ほか、共著に『いじめの直し方』(朝日新聞出版)、『夜の経済学』(扶桑社)ほか多数。TBSラジオ「荻上チキ Session-22」メインパーソナリティ。同番組にて2015年ギャラクシー賞(ラジオ部門DJ賞)、2016年にギャラクシー賞(ラジオ部門大賞)を受賞。