2017.02.03

「終身刑化」が進む無期懲役刑の実態

浜井浩一×巡田忠彦×荻上チキ

政治 #荻上チキ Session-22#無期懲役刑#終身刑化

法務省は昨年11月、無期懲役刑に関するデータを公表した(法務省「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」)。それによると服役中の無期刑者は2015年末時点で1835人。仮釈放が認められた受刑者は一桁にとどまり、服役期間が50年を超える受刑者も12人におよぶことがわかった。服役期間の長期化、所内での死者、数少ない仮釈放と、事実上の終身刑化が進む無期懲役。無期刑制度、受刑者の実態と、考えるべき課題について専門家に伺った。2016年12月10日放送TBSラジオ荻上チキ Session-22「塀の中でも老老介護〜終身刑化する無期懲役刑の現実」より抄録。(構成/増田穂)

荻上チキ Session-22とは

TBSラジオほか各局で平日22時〜生放送の番組。様々な形でのリスナーの皆さんとコラボレーションしながら、ポジティブな提案につなげる「ポジ出し」の精神を大事に、テーマやニュースに合わせて「探究モード」、「バトルモード」、「わいわいモード」などなど柔軟に形式を変化させながら、番組を作って行きます。あなたもぜひこのセッションに参加してください。番組ホームページはこちら →https://www.tbsradio.jp/ss954/

生涯続く懲役

荻上 本日のゲストを紹介します。刑事政策や犯罪者の更生について研究されている龍谷大学教授浜井浩一さんと、無期刑で服役中の受刑者を取材したTBS報道局の巡田忠彦解説員です。よろしくお願いいたします。

浜井・巡田 よろしくお願いします。

荻上 まず、無期懲役制度とはどういった制度なのでしょうか。

浜井 無期懲役刑は海外ではライフ・センテンスといわれていて、直訳すると終身刑にあたります。終身刑には、仮釈放を認める終身刑と認めない終身刑があり、日本の無期刑は仮釈放を認める制度とされています。ただし、釈放といってもあくまで仮なので、懲役刑そのものは死亡するまで維持されます。恩赦がない限りは出所後も本籍地は刑務所となり、生涯に渡り保護観察がつくことになります。だからライフ・センテンスなのです。

また、仮釈放制度があるとはいえ、法務省の報告書にもあるように、現状では仮釈放される人より刑務所内で亡くなる方のほうが圧倒的に多く、その数は年々増加しています。現状を鑑みると、事実上一生刑務所内にいる仮釈放のない終身刑と変わらない運用となっています。

荻上 無期刑と無期懲役刑の違いについてはいかがでしょうか。

浜井 無期刑には無期禁固と無期懲役があります。日本の場合、無期禁固刑は、理論上あり得る刑として存在していますが、実際に言渡されることはほとんどなく、事実上全員が無期懲役刑となります。懲役刑は拘禁刑であると同時に労働刑で、刑罰として労働が課せられています。交通事故などの場合で禁固刑となる場合もありますが、日本では禁固刑を処遇する体制がないため、請願作業という形で実際は懲役刑と同様の作業をすることになります。ちなみに、現在無期刑の45%ほどの人が60歳以上、つまり実社会では定年を過ぎた年齢ですが、受刑者である以上彼らは何歳になろうとも働き続けなければなりません。懲役刑に定年という概念はないのです。

荻上 海外では終身刑がある国もありますが、こちらと無期懲役の違いは何なのでしょうか。

浜井 先ほども申し上げた通り、日本の無期懲役刑も終身刑のひとつです。ただ、一般に終身刑というと、仮釈放のない終身刑を想像されるかもしれません。こちらの場合、一生涯刑務所から出ることはできません。アメリカは州によって制度が異なり、テキサス州などでは仮釈放なしの終身刑制度を導入することで死刑の言い渡しが減ったとする報告があります。これを受けて、日本でも死刑制度に関して、日弁連などでは、死刑廃止の代替刑として仮釈放のない終身刑を導入することも議論されています。

荻上 なるほど。一方で、無期懲役もあくまで仮釈放なので完全な釈放はないということですね。

浜井 基本的にはありません。例外的に仮釈放中に恩赦を申請し、認定されれば刑が消滅することはありますが、実際にそうしたことが認められることはまずありません。実際には生涯に渡り保護観察が続きます。

長期化する無期懲役

荻上 仮釈放の対象になるまでにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。

巡田 これまで有期刑の最高刑は20年で、これが基準になっていました。しかし、1990年代以降、併合罪などを厳罰化する動きが起こり刑法が改正され、有期の上限が30年になりました。これに伴い、有期刑以上の罰であるはずの無期刑受刑者が20年前後で出所してしまうという矛盾が生じました。結果として、現状では30年を超えないと仮釈放が難しくなっています。今では無期刑の判決を受けて、一生刑務所暮らしになることを覚悟する受刑者が非常に多いです。

浜井 30年以下で仮釈放になる人が全くいないわけではありませんが、巡田さんのご指摘通り、現在は30年が基準になっています。30年を過ぎると、刑務所長からの仮釈放申請がなかった場合でも、地方更生保護委員会という仮釈放の決定をする機関が、職権で仮釈放の検討を行うことができるようになります。まあ、現実的には、刑務所長の申請を受けて仮釈放審査が始まります。一般的には、有期最長刑を超える段階で実質的な仮釈放の検討が始まることになっています。

現在仮釈放になった人の平均在所期間が31年です。「早ければ10年、最長25年くらいで出所できる」などといわれることもありますが、これは間違いです。30年がひとつの基準であることは間違いなく、実際に30年以下で出所する人はいても例外で、ほとんどのケースは30年を越えています。しかも、そもそも仮釈放になる人自体が稀で、その数は年間10人にも満たないのです。その3倍近い人が刑務所の中で亡くなっています。10年で出てくるといったような誤解はなくなって欲しいですね。

荻上 厳罰化に伴い無期懲役刑の期間の平均も延びてきているのですね。

巡田 確かに昔は「頑張れば10年」のように言われていたことがありますが、その時入所した人たちは未だに服役しています。裁判員制度の導入などで厳罰傾向が進み、システム的には30年経たないと仮釈放の審査対象になりません。

浜井 刑法上は10年経つと仮釈放審査の対象になるので、10年という数字が出るのかもしれません。しかし実質的な審査が刑務所内で始まるのは早くても20年、現実的には30年です。30年以上前には確かに20年程度で仮釈放となる受刑者が一定数いましたから、その時入所した人たちは真面目に刑を務めれば20年後には出所できると思って頑張ってきたでしょう。ところが20年経ってみると厳罰化が進み、出所できず、仲間は死んでいく。絶望して意欲もなくなり、保安事故が増える悪循環も起こっています。

荻上 仮釈放が認められる割合はどの程度なのですか。

浜井 2015年末のデータでは、1835人の無期刑受刑者がいます。新規に25名が無期刑を言い渡されました。仮釈放になった人は11人いますが、内2人は再犯による入所からの仮釈放ですので、新規に仮釈放で出所したのは9名になります。この仮釈放数は近年では最も多い数値です。一方、22名が所内で亡くなっています。

荻上 世間では仮釈放される人がほとんどと認識されているようですが、実際に仮釈放される比率はとても少ないんですね。

浜井 過去10年を見ても仮釈放された人数は53人、所内で亡くなった人は164人です。仮釈放は圧倒的に少ないのです。

荻上 こんな質問も来ています。

「模範囚、恩赦などで無期懲役を全うする受刑者は少ない印象があるのですが、実態はどうなのでしょうか。また、無期懲役の受刑者とその他の受刑者で待遇は異なるのですか」

実際に仮釈放される数は大変限定的だというお話はありましたが、「無期懲役を全うする」という点はいかがですか。

浜井 繰り返しになりますが、無期刑受刑者の仮釈放はあくまで「仮」釈放です。刑務所にいなくとも、無期懲役刑自体は継続しています。恩赦が認められることはほとんどないので、死んで初めて刑を全うしたことになります。そうした意味で、私は無期懲役は終身刑だと考えています。

荻上 仮釈放中の面談や保護観察報告体制はどうなっているんですか。

浜井 基本的には他の受刑者の保護観察と同じく、月に数回担当保護司と面談し、問題があれば保護観察官が対応します。事案の重大性や本人の状況によって複数の保護司がついたり、保護観察官が直接担当する場合もありますが、こちらは例外的です。

荻上 移動の制限などはあるのですか。

浜井 長期間旅行に出かける場合などに制限や報告義務が課せられます。許可なく旅行に行くことで仮釈放の取り消しに繋がります。無期刑の場合パスポートの申請にも制限があります。

荻上 刑務所内での待遇の違いについてはいかがですか。

浜井 刑の長さによって刑務所が異なるので長期刑を執行している刑務所では雰囲気は異なりますが、無期懲役でも有期刑でも待遇自体に違いはありません。

荻上 無期懲役受刑者専門の刑務所があるということですか。

浜井 無期懲役刑専門ではありませんが、執行刑期10年以上の場合、受刑者はL(ロング)指標という専門の刑務所に入ります。さらに累犯性の高さで、初犯ならばLA、再犯ならばLBと分けられます。

先の見えない刑務所生活

荻上 巡田さんは実際に刑務所にいかれて取材をされたそうですが、どんな刑務所にいかれたんですか。

巡田 今話のあったLA指標、長期の初犯受刑者の刑務所です。旭川刑務所や岐阜刑務所はLB、専門的な言葉で言うと「犯罪傾向の進んだ人たち」が収容される施設です。私が取材したのは岡山刑務所ですが、状況は複雑でした。10年の有期受刑者と、無期懲役で先の見えない受刑者が共存して、同じ処遇を受けているわけです。

インタビューなどを通じて彼らの本音を聞くと、その微妙な関係を感じました。たとえば有期服役者にインタビューをすると、こっそり「自分は無期懲役でなくてよかった」と言うんです。一方で無期刑者からは先の見えない不安感を強く感じ、両者の間に溝を感じました。

浜井 有期の人は仮釈放にならずとも、満期が来れば出所できます。一方無期刑の人は頑張っていても出られる保障はありません。刑務官の中にも、目標を持たせられないことによる処遇の難しさを指摘する人がいます。

荻上 LAとLBで分ける理由は何なのですか。

浜井 累犯性もですが、「犯罪傾向が進んだ状況」には暴力団との関連性が含まれます。服役を通じてよくない風潮や価値観が広まることを防止する意味や、無関係の受刑者を暴力団独特の序列に巻き込まないようにするため、AとBは分けられています。

ただし、男子刑務所ではL指標か否かにかかわらずAとBを分けるのが原則になっています。しかし女子刑務所は数が少ないため、どんなタイプの受刑者も全て同じ刑務所で処遇することになっていて、これが現在大きな課題となっています。

荻上 岡山刑務所ではどのような話を聞かれたのですか。

巡田 いろんなインタビューをしました。たとえば19歳で入所したある無期懲役受刑者は、周囲にいる年長の無期懲役囚から、30年経って出所しても50歳だとうらやましがられるそうです。しかし彼は青春を全て刑務所内で過ごして50歳で出所することが果たして周囲の人より幸せなのか、疑問に感じているといいます。

荻上 それぞれが互いを比較しながら葛藤しているんですね。

巡田 そうですね。また、多くの入所者が生きることに懸命なことも印象的でした。絶対に生き抜くという思いなのか、皆さん与えられた運動時間を最大限に使っていました。懲役での労働も長くなることから、その作業に関して専門性も高くなっています。布団の綿の打ち直しや備前焼の作業などは名人級の腕前でした。人間は与えられた環境で何かに打ち込んでいくものなのだと強く感じましたね。

進む刑務所内の高齢化

荻上 収容者の高齢化に伴う介護問題はどうでしょうか。

巡田 受刑者間での老老介護です。介護は刑務作業の一環となっており、職員はほとんど関わっていません。たとえば岡山刑務所では、50歳の無期懲役囚が90歳の無期懲役囚を介護していました。刑務官の人手不足と同時に、何より人を殺めた人に人の世話をしてもらうことで教育の一環にしたいという思いがあるようです。

荻上 介護の教育的効果についてはどうお考えですか。

巡田 人の身体に触れること、弱い人を助けることを通じて心理的な面での効果はあると考えています。

浜井 感謝されることの重要性もあげられますね。受刑者の多くは、人生の中であまり感謝されてこなかった人が多いので、この効果は大きいと思います。

荻上 受刑者の高齢化と共に、収容人数の増加も指摘されていますが、キャパシティに問題はないのでしょうか。

浜井 確かにL指標に関しては高齢化が問題になっており、高齢受刑者の面倒をみる比較的年齢の若い経理担当の受刑者の不足は課題となっています。ただ、厳罰化が緩和されてきたことや、犯罪自体の減少により、過剰収容に関しては解消に向かっています。

荻上 特に若者の犯罪率が著しく減少していますが、結果としてL指標に入所する若者が減ってきているんですね。

浜井 なので刑務所の中でも老老介護になってしまうんですよ。

荻上 この傾向は全国的なものなのですか。

浜井 介護問題は少年刑務所以外のあらゆる刑務所で起こっています。所内の介護はどこも作業補助として刑務作業の一環として行われるので、介護ができる健康な受刑者を見つけることが、多くの刑務所で課題となっています。刑務所には、社会で普通に働けるような健康な受刑者はほとんどいないのが現実です。

荻上 職員を増やして対応する方法はないんですか。

浜井 一昨年法務省が行った刑務所内でのアルツハイマーの簡易テストで、60歳以上の受刑者の中に14%近くアルツハイマーの疑いのある者がいることが明らかになりました。こうした状況を踏まえ、介護の専門職員を採用する動きはでています。しかしあくまで刑務所内処遇の介護指導員としての採用で、実際の介護の大部分は受刑者にゆだねられることになります。

刑罰と福祉が絡みあう仮釈放問題

荻上 昨年11月には法務省が無期刑者に関する資料を公開しました。そこからは何が読み取れますか。

浜井 データ自体から見て取れるものは限定的です。しかしこれまで、政府がここまで詳細な無期刑受刑者の仮釈放状況のデータを公表したことはありませんでした。あえてこの時期に詳細なデータを出したことに大きな意味を感じています。恐らく無期刑受刑者の仮釈放状況に対する問題提起といった側面があるのでしょう。

L指標刑務所での受刑者の処遇問題は非常に深刻です。現場は相当苦慮しています。先の見えない刑務所生活や、その中で仲間が死んでいくのを目の当たりにして、受刑者は絶望的な気持ちになりながら自分を奮い立たせています。精神状況は不安定で、処遇には細心の注意が必要です。

仮出所に関しても、高齢になった受刑者の受け入れ問題や、被害者感情などさまざまな問題が複雑に絡み合っています。特に入所生活が長く、かつ高齢ともなれば出所後の生活も難しくなります。単純に模範的受刑者を仮釈放するという問題ではないのです。今回の公表データからは、深刻化する無期刑の諸問題に関して、無期懲役刑という刑罰がもっている問題をより多くの人に理解し、皆で解決策を考えるきっかけにしてもらいたいという、政府の意図を感じます。

荻上 仮釈放の審理はどのように行われているのですか。

浜井 刑務所内では刑期や懲罰の有無などをもとに定期的に仮釈放の審査を行っています。仮釈放が適切だと判断されれば、刑務所長が地方更生保護委員会に仮釈放の申請を行い、審理が始まります。審理の第一段階では、保護監察官による予備面接が行われ、刑務所内での生活態度、被害者に対する慰謝や反省の状況などの審査が行われます。これが通ると委員面接という地方更生保護委員会の委員による面接が行われます。

一般の受刑者と異なり、無期刑受刑者の場合、委員面接の後にも手続はあるのですが、委員面接を受けると仮釈放へ向けてある程度の期待感は出てきます。これを機に、出所を目指し模範的な行動をするようになる人もいますし、反対に夢見ていた出所が現実味を帯びてくると、社会が自分を受け入れてくれるのか不安になり、刑務所に残るためにあえて作業を拒否するような人もいます。

荻上 無期刑の長期化や仮釈放後の社会適応の問題ついて、参考になる海外の事例などはあるのでしょうか。

浜井 日本の刑務所はこれまで刑罰を執行する場所として存在してきました。ですから、長期受刑者が出所後の社会に適応できるようケアする体制は整っていません。たとえば30年前に判決を受けた受刑者は、携帯電話も自動改札も知らないのです。良くも悪くも刑務所内は、徹底した管理が行われている社会で、裁量や交渉の余地はほとんどありません。全て指示に基づいて行動する刑務所から、浦島太郎状態で社会に出たときに、きちんと社会に適応して再犯をせずに暮らしていける体制を作らなければなりません。

 

ヨーロッパでは、保安の厳しい刑務所から徐々に開放的な刑務所に移動することで、長期受刑者を社会環境に慣れされる体制が築かれています。日本にも中間処遇として更生保護施設で暮らす制度はありますが、期間が短く、まったく不十分です。こうした部分をより充実させる必要がありますね。

また、無期刑受刑者の事件では死亡者が出ている場合がほとんどです。こうした人を仮釈放するにあたっては、それを社会が許容する雰囲気が必要です。被害者感情へのケアと同時に、受刑者の生活や心情を社会に理解してもらえるよう努力を重ねていかなければと思います。

荻上 巡田さんはどう思われますか。

巡田 50代、60代の比較的若い世代の受刑者に関しては浜井先生のおっしゃるような支援が不可欠だと思います。同時に、80代を超える受刑者たちは、出所と同時に介護の必要がでてきます。こうした人びとの仮釈放に関しては、法務省と厚労省、つまり刑罰と福祉にまたがった対策を行っていく必要があると考えます。

荻上 先日国会で可決された再犯防止法はどう評価されますか。

浜井 犯罪者の更生を国だけの問題とせず、彼らが実際に生活する地方公共団体の責任でもあるとした点は評価に値すると思います。国と地方社会が連携を強化することで、これまで難しかった受刑者に関する個人情報共有も行いやすくなり、必要なケアが把握しやすくなります。基本的な方向性として、受刑者を社会に包摂しようという意思が見受けられました。

ただ、この理念を具体的にどう実現するのかに関しては、漠然としている印象です。刑罰と再犯防止をどう連動させるのかについても言及はありませんし、地方公共団体への規定も努力義務に留まります。国会答弁でも、再犯防止により国民を犯罪被害から守るという視点はうかがえますが、罪を犯した人も国民の一人であり、彼らをどう支援していくことで罪を犯さなくてすむ社会作りができるのか、という視点は欠けている気がしました。

荻上 受刑者をめぐる今後の議論で必要なことは何だと思われますか。

巡田 最近は法務省の中でも罰だけではいけないという意識が出てきました。今後は出所した人が当たり前に存在する社会のあり方について、より活発な議論がされるべきだと思います。

浜井 問題には2つの側面があります。ひとつは高齢化してしまった現状をどうするのか。もう一点は今後高齢化を防ぐためにどうするのか。両方を念頭に入れて福祉も絡めた刑罰のあり方を考えていく必要があるでしょう。

荻上 1990年代以降、犯罪の厳罰化が進み、長期化する無期受刑者の問題と同時に、厳罰化だけでは再犯を防げないことも明らかになってきました。今回公開された情報をもとに、今後の刑罰のあり方について有意義な議論をしていきたいですね。浜井さん、巡田さん、ありがとうございました。

プロフィール

巡田忠彦TBSテレビ解説委員

81年TBS入社。警視庁記者クラブ、司法記者クラブ、防衛記者会などで事件や裁判、安全保障など担当。社会部デスク、ニュース編集長。ソウル支局長。解説委員。事件記者時代から刑事政策、特に死刑制度や無期懲役囚の特集を制作。現在、報道特集記者。

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浜井浩一刑事政策、犯罪学、統計学、犯罪心理学

龍谷大学法務研究科教授。1960年生まれ。専門は、刑事政策、犯罪学、統計学、犯罪心理学。早稲田大学教育学部卒業後、法務省に入省。矯正機関や保護観察所で勤務。法務総合研究所の研究官や在イタリア国連犯罪司法研究所の研究員を務め、犯罪白書の執筆にも携わる。海外の犯罪の現状や刑事政策にも詳しい。著書に『犯罪統計入門』(日本評論社)、『刑務所の風景』(日本評論社)、『家族内殺人』(洋泉社新書y)『2円で刑務所、5億で執行猶予』 (光文社新書)、『犯罪不安社会』(光文社新書)、『実証的刑事政策論』(岩波書店)、『罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦』(現代人文社)、『発達障害と司法』(共著、現代人文社)、『新・犯罪論 ―「犯罪減少社会」でこれからすべきこと』(共著、現代人文社)など。

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荻上チキ評論家

「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」スーパーバイザー。著書に『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『未来をつくる権利』(NHKブックス)、『災害支援手帖』(木楽舎)、『日本の大問題』(ダイヤモンド社)、『彼女たちの売春(ワリキリ)』(新潮文庫)、『ネットいじめ』『いじめを生む教室』(以上、PHP新書)ほか、共著に『いじめの直し方』(朝日新聞出版)、『夜の経済学』(扶桑社)ほか多数。TBSラジオ「荻上チキ Session-22」メインパーソナリティ。同番組にて2015年ギャラクシー賞(ラジオ部門DJ賞)、2016年にギャラクシー賞(ラジオ部門大賞)を受賞。

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