性差別野次からみる、日本一議会改革の遅れた東京都議会の問題

形骸化する審議

 

飯田 野次以外に、議会活動をやりにくい状況はありますか?

 

塩村 学校みたいですけど、やっぱり人数が少ないと、そんなに仲良くしてくれないですよね(笑)。数で固まっちゃうところがあるので。

 

上田 役所からの情報提供が不平等。東京都の新情報を、テレビや新聞で知ることの方が多いんです。

 

塩村 そう! 酷いですよね。

 

上田 与党が完全に情報を握ってしまっているんです。例えば塩村議員が動物愛護についての質問をするために役所と内容のすりあわせをすると、それを与党に横流しするんですよ。質問の順番は自公が先ですから、私たちが質問する前に「都は動物愛護に真剣に取り組んでいて、こんなことに文句をいうアホなやつなんていないですよねー」みたいなお手盛りの質問をしてしまう。私たちはそのあとすごすごと問題を指摘する質問をしなくちゃいけないわけです。

 

塩村 情報量が都民の皆さまと同じ立場に立っているとは言えるんですけど……(苦笑)。「そんなことじゃ駄目だろ」と思われないようにしなくちゃいけないですよね。

 

上田 ほじくり系の質問をしようとしたら「質問が馴染まない」と都庁の職員から言われて却下されることもありました。馴染む/馴染まないの法的根拠を出せといっても出してこない。ないから出せないんです。

 

一年生議員や少数会派って議会運営のことをほとんど知らないので、無知に付け込んでくるんです。今回の処分要求書も、「処分対象者が特定されていないから提出できない」という報道がありましたが、地方自治法133条をよくみたら、別に特定しなくても議長の判断で懲罰委員会を開けるんです。ようは情報の非対称性があるんですよ。

 

塩村 与党が過半数を持っている時点で審議が形骸化しちゃっていて、野党の意見はなかなか通らないんです。どんなに動物愛護について知事の意見を聞きたくても、役所が答弁骨子書をつくって、知事はそれをみて発言するだけなんです。それじゃあ、知事の意見はわからないじゃないですか。

 

 

都議会の注目度が低い

 

飯田 国会の場合は、世間の目があるので、どんなに多数派でも野党との協議はかかせません。都議会でそれができてしまっているということは、その他の道府県議会や市町村議会は野次問題も含めて、もっと酷いことになっているのでは、と思ったのですが……。

 

上田 いや、それが違うんですよ。都議会は特に酷いんです。議会改革は地方議会の方が進んでいるところは進んでいるんです。財源が厳しいと議会改革が進むんですね。市民の目も厳しくなりますし、適当なことはできなくなる。東京はじゃぶじゃぶですから、日本一議会改革が遅れているんです。

 

飯田 なるほど、確かに県議会の場合、地方紙や地方局が地元密着型の報道をする。市町村だと生活に近いからいやがおうにも目につく。外からの目がある分、改革が進みやすいのかもしれませんね。東京の場合は……。

 

上田 都政新報と東京新聞くらいですね。大手新聞は国会への関心が高いですし、書いても自民党の提灯記事が多い。

 

塩村 最近は東京オリンピック・パラリンピックで取り上げられつつはありますが、東京である故に、国会の方に目が行ってしまって、都議会への関心が薄いんです。国会が国の方針を決めて、区政は身近な問題を決めている。じゃあ都政は何をやっているの? というのが皆さんの感覚だと思うので。

 

飯田 でかいことは国会、小さいことは区議会。都議会は、どっちなのかよくわからない……というのは都民自身ももっている感覚だと思います。

 

塩村 そういう意味では、今回の騒動は、都議会への注目度も高まり、個々の議員が外の目を意識する、いいきっかけになったのだと思います。

 

上田 国会は生中継が入っていますし、区議会は生活に近いところなのでぴりぴりしている。都議の中には、暇なはずなのに本会議休んでいる人もいるんですよ。

 

塩村 寝ている人も見ますよね。

 

今回は表に出てしまったことを隠ぺいしようとして、それができなかったわけですけど、他にも表に出ていないことがたくさんあると思います。実は議会が終わったあと、本人がすぐに謝ってくると思っていたんです。でも最初に来たのは記者さんで、「あれは酷い。今後の東京において問題になると思うから取り上げる。本人は来た?」と聞かれたんです。記者の方、上田さん、おときた駿議員、他党の女性議員など、皆さんが一気に情報を拡散してくださったことが、こうした問題に気付いてもらうのに欠かせなかったのだと思います。

 

上田 海外で報道されたインパクトは大きかったですよね。それに国民の皆さんが、都議会や自民党、みんなの党に電話をしてくださったのは、選挙でないかたちで政治に参加してくださったということなんだと思います。たった11分の質問で、小さな国会と言われている東京都の自民党都連をあわてさせたことは、都議会史上はじめてのことだと思います。

 

 

自公政党議員のフラストレーション

 

塩村 でも、自民党の議員さんも、ある意味、かわいそうなところはあるんですよ。

 

上田 私たちのような非自公政党は、好きな質問ができるんですけど、彼らは漬物石がいるので、好き勝手できないんです。議席を温めてるだけ。私たちに対する嫉妬心が野次にいってしまうのかもしれないですね。

 

飯田 なるほど。ベテラン議員や会派の本部決定にアタマを押さえつけられていると。その意味で官僚的・サラリーマン的な部分があるわけですね。

 

上田 フラストレーションがたまっているとどうしても……。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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