町に、舞台芸術祭という「フラグ」を立てる――KYOTO EXPERIMENTの取り組み

各地で芸術祭の開催が相次いでいる。地域や規模、扱うアートのジャンルなどはさまざまだが、必ず考えなければならないのは「フェスティバルと街(地域)との関係をいかに築いていくか」ということ。今年で5回目の開催となる「KYOTO EXPERIMENT(京都国際舞台芸術祭)」のプログラムディレクター橋本裕介さんと、実行委員長の森山直人さんに、京都の街とフェスティバルの関係について話をうかがった。(聞き手・構成/長瀬千雅)

 

 

劇場の枠を飛び越える

 

—— 私は普段、東京で仕事をしているのですが、最近、「京都の演劇祭が面白いよ」と言う人に複数出会いまして。

 

橋本 そうなんですか。

 

 

—— 今年こそ行こうと思っているのですが、その前にKYOTO EXPERIMENTの魅力を聞いてしまおう、ということで本日はやってまいりました。

 

森山 遠いところをありがとうございます。

 

 

フェスティバルメインビジュアル。公式プログラム参加アーティストでもある美術家の金氏徹平さんの作品が使われている。

フェスティバルメインビジュアル。公式プログラム参加アーティストでもある美術家の金氏徹平さんの作品が使われている。

 

 

—— さっそく今日(8月13日)の夕方、プレイベントがありますね。劇団地点の三浦基さんが演出する「はだかの王様」。子どものための音楽劇ということで、非常に楽しみなのですが、これもKYOTO EXPERIMENTで初演された作品なんですね。

 

橋本 2012年ですね。京都を拠点としている地点は、第1回から参加してくれています。今年は、フェスティバル/トーキョー12で発表して話題になった、イェリネクの『光のない。』を関西で初めて上演します。

 

 

—— 京都まで行くならやっぱりいくつかまとめて観たいなと思って、いつ、何を観に行くかプランを練ろうと、サイトで公式プログラムを見たのですが、TheaterなのかDanceなのか、よくわからない作品が……

 

橋本 たしかに、中にはカテゴライズし難い作品もありますね(笑)。

 

 

—— 西京極スタジアムが会場になる公演もありますね。contact Gonzo『xapaxnannan(ザパックス・ナンナン):私たちの未来のスポーツ』。

 

橋本 Sportsっていうカテゴリーを作らないといけないかもしれません(笑)。

 

森山 でも、ワールドカップやオリンピックの例を挙げるまでもなく、スポーツとは究極のドキュメンタリー演劇だとも言えるわけです。本当の意味で、筋書きのない。昔、寺山修司が「悲劇一幕 巨人対ヤクルト」っていう変な芝居を書いていて、要するに、試合の実況をすべて台本化するんですが。

 

 

—— へえ!

 

森山 なんと芝居は、野球に比べてつまんないのかという(笑)。そういうようなことも考えられてしまうぐらい、スポーツにはすごく演劇性があるんです。

 

 

—— contact Gonzoが広いスタジアムでどういうパフォーマンスをするのか俄然興味がわいてきました。そういったジャンルの境界を壊すようなものをやろうとしてるんですね。アーティストには、こういう作品をやりませんかみたいに持ちかけるんですか?

 

橋本 彼らに限らずこちらからこんな作品を作ってほしいなどというようなことはあまり言いません。初めてフェスティバルに参加するアーティストに関しては特に。

 

スタジアムでやりたいと言ったのは彼らです。contact Gonzoを結成した一人の塚原悠也さんは、中学高校でサッカーをやっていたそうです。大学で美学を学び、劇場スタッフを経てパフォーマンスを始め、今は世界のダンスフェスティバルに招聘されるなど活躍しているグループです。

 

森山 台風がこないでほしいですね。

 

 

—— 屋外公演だとそういう苦労もありますね。

 

橋本 はい。でも、サッカーの試合は雨でもやりますからね。

 

—— contact Gonzoは雨天決行、荒天の場合は中止になるんですね。運営上の苦労はたくさんありそうです。

 

橋本 私がお声がけするアーティストは、劇場の枠を飛び越えて、チャレンジングなことを提案される方々が多いので、われわれがそれにどれだけ応えられるかというところが、普段から試されているなとは思います。劇場のルールにのっとって、その中だけで公演をやっていれば、たぶんもっと楽なのかもしれませんが、そうやって常に試されることは大変なことというよりむしろ、私たち自身が、演劇やダンスについての考え方を新しくするチャンスなんです。

 

 

—— 新しいものを持ち込んできてくれる人たちなんですね。

 

 

地点「光のない。」 photo: Hisaki Matsumoto

地点「光のない。」 photo: Hisaki Matsumoto

 

 

 

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