学園祭の「ホモネタ」企画を考える――「芸バー」炎上、何が起こっていたのか

■「芸バー」中止は解決ではない

 

新聞報道によれば、大学に寄せられた批判は10件程度。ネット上では「寄ってたかっての批判で企画を潰すなんて」「人権団体が圧力をかけたらしい」との声も多かったが「寄ってたかっての批判」も存在しなかったようだ。いまなお不明な点は多い。「にじひろ」は、今後「芸バー」企画者との話し合いや、学校側への経緯説明を求めていく予定だ。

 

今回の炎上事件をきっかけに、LGBTについて関心を持った人たちとも繋がっていきたいと二人は話す。

 

「筑波には筑波なりの事情があって、そこに実際にLGBTもそうじゃない人も一緒に生活している。そのことを置き去りにしないでほしい。私たちのことは、私たちが決めたい」(Aさん)

 

 

個別に話して、わかってもらえた

 

さて、集会では「ホモネタ企画」について企画者と話し合えた例も報告された。

 

早稲田大学4年生の小阪真紀さんは、学園祭の数日前に、知人らが「ホモネタ」企画を準備していることに気が付いた。「100円を払えば同性から告白される恐怖体験が味わえる」「生きて還れよ」「万が一カップル成立したら景品をプレゼント」といった煽り文句を見て、とても胸を痛めた小阪さん。彼女自身はLGBT当事者ではないが、親友からのカミングアウトを受けて、この問題について深く考えるようになった1人だ。いぜんは「ホモネタ」を楽しむ側だったが、それが親友を傷つけていたことを知り、深く悔やんだ経験を持つ。

 

「LGBTはどこか遠くにいる特別な人ではなく、私たちの身近にいる友人も当事者かもしれない。この企画は、同性愛を侮蔑しているみたいで、人を傷つけるんじゃないか」と、企画者に話に行った。冷静な語り口につとめたが、心中は企画への怒りや悲しさでいっぱいだった。

 

「学園祭は日常の延長。日常にも、こういう『ホモネタ』は溢れている。だからこそ学園祭を、日常を考え直すきっかけにしたい」(小阪さん)

 

企画者の学生は「誰かをバカにする意図はなかった。このままでは誰かを傷つけてしまう」と話し、企画の取り下げを決めた。今回のやりとりを今後に活かすべく、早稲田祭運営委員会にも働きかけたいと小阪さんは話す。

 

一連の「ホモネタ企画」について、国際基督教大学ジェンダー研究センター職員の加藤悠二さんは「大学職員は学生たちの評価や処分ができる権力を持っている。職員が企画学生を呼び出して話を聴くこともなかなか難しい」と語った。

 

大学の外部からの意見に対しては、内部の人間は反発しやすい。かといって、教員や大学職員が学園祭の企画にコメントするのも難しい部分をはらむ。小阪さんのように学生間で話し合うことができたケースは、ある意味では望ましい例だと思われる。

 

 

女装や男装、同性愛のジョークが好きなあなたへ

 

以上のような学生たちの声を踏まえた上で、私たちは「ホモネタ」企画をどう捉えたらよいのだろうか。

 

女装・男装での接客やパフォーマンスは、学園祭においては定番のメニューである。ジェンダーを遊び、「当たり前」の枠から外れる体験は一般的には良いことだと筆者は考える。ただし、これらの企画が一歩間違えば、簡単に人を傷つけてしまうものに様変わりしかねないことには、やはり注意が必要だろう。

 

本稿では「芸バー」や早稲田大学の企画が、なぜ差別的だと問題視されたのかについて、紙面の都合上触れなかった。ある人には楽しい企画が、ときに別の人には苦痛に満ちたものになることがある……それが「ジェンダーや性のあり方を遊ぶ」際に、私たちの社会でたちのぼる現状だ。だからこそ企画者は、誰かが「それってちょっとどうなの?」と声をあげたときに、きちんと考えて応答できるような思慮深さを持ち合わせてほしい、と思う。

 

「ホモネタ」は日常会話や、テレビのバラエティ番組の中にも溢れている。学園祭で女装や男装、同性愛を扱った企画をやろうと思った人たちは、むしろ企画を「縁」だと捉えて当事者たちとの話し合いの場を持ってほしい。それは大学内外における多様性について考える良いチャンスになるだろう。

 

「だれもが安心できる環境」とは「不安なときに話し合える環境」のことでもある。せっかくの学園祭、気合いを入れて準備をするからには、だれもが楽しめる日にしたい。その想いがあれば、やれることはきっとあるはずだ。

 

サムネイル「Univoftsukuba2006.jpg」Kanrika

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vol.272 

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