性的マイノリティへのいじめをなくすために

LGBTコミュニティーと外部をリンクする

 

―― 今までのLGBT団体の活動では、なかなか国会に声が届くことがなかった。今回のキャンペーンはなぜ成功できたんでしょうか?

 

従来のLGBTコミュニティーでは、パレードや当事者の選挙立候補の応援といった楽しい話題づくりを重視していました。それがコミュニティーのなかに発信されて、盛り上がっていくわけですが、メディアや行政といった外部にはまったく伝わっていないという状況だったんです。

 

当たり前ですが、外の世界とリンクしていなければ取り上げようがありませんよね。また、、自助で生活できているLGBTの方たちが中心となっていた。彼らはLGBTの活動を楽しむ余裕がある人たちです。しかし、わたしたちは互助や公助が必要な人たち、つまりいじめや自殺など生死に関わるような問題に焦点を当てて呼びかけを行ってきました。その結果として、意外にもマスコミの方がわたしたちの活動に注目し、連続的に取材をしてくださったことで、より外の世界とリンクすることができたと思います。

 

また、政治家や行政とうまく連携していくということも重要です。従来のLGBTのロビー活動というのは、当事者たちが支持している政党や、仲良くしている議員のみに要望していくという縦割りのロビー活動のみでした。しかし、わたしたちはすべての政党に対して同じ内容の要望書を提出し、横並びのロビー活動を行っています。これによって、各政党間の足並みを揃えることができ、わたしたちの要望が実現されやすくなりました。

 

2009年に「超党派勉強会でっち上げ事件」というものがありました。これは、ある党がLGBTへの活動実績をつくるために、実際はその党単独で行っていた勉強会を、まるで超党派で行っているかのように見せかけていたというものでした。わたしが各政党の国会議員の方たちにご挨拶へ伺っていたときに「あの政党でやっている勉強会は一体何なの?」と聞かれたことによって露見したのですが、この事件のせいで各政党のあいだに不協和音が生じてしまった。これは当事者が政治家を上手くコントロールできていないことから生じる問題です。一つひとつの問題を当事者が主体となってコントロールしていくというのはとても負担が大きいので、対応策を考えていかなければいけないと思っています。

 

わたしたちがやりたいことは、当事者、メディア、専門家が連携して、日本政府にどう働きかけていくか、どう動かしていくか考えていくということです。自殺総合対策大綱の改正では連携が上手くいった例だと思います。当事者自身が、いろんな人に万遍なく働きかけをするということを、これからも重視していかなければならないと考えています。

 

 

国だけでなく各自治体へ

 

―― 最後に、今後の展望をお聞かせください。

 

通常、市民活動というものは、地域で啓蒙啓発を行って区議会・市議会議員へ、そこから都議会・県議会議員へ、最後に国会議員、というように地域から活動が拡大していくものです。

 

しかし、わたしたちの場合は国に働きかけるところから始めてしまったので、これからは地域に根差した活動を行う必要があると思っています。大きな方針を決めるのは国ですが、具体的にどうしていくかというのは自治体が決めることです。現在、東京都や世田谷区で行っている活動を足掛かりとして、他の自治体にも広げていきたいと考えています。

 

(12月8日 渋谷にて)

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.277 

・坂口緑「生涯学習論にたどり着くまで──人はいかにして市民になるのか」
・平井和也「ジョージ・フロイド殺害事件から考える米国の人種差別問題」
・野村浩子「日本の女性リーダーたち」
・安達智史「「特殊」を通じて「普遍」を実現する現代イギリスの若者ムスリム」
・太田紘史「道徳脳の科学と哲学」
・石川義正「「少女たちは存在しない」のか?──現代日本「動物」文学案内(2)」