シノドス・トークラウンジ

2021.01.26

2021年2月27日(土)開催

都市化時代の生態学――人と自然にとっての「都市」の価値

曽我昌史 ホスト:伊藤隆太

開催日時
2021年2月27日(土)14:00~15:30
ゲスト
曽我昌史
ホスト
伊藤隆太
場所
Zoom
料金
1100円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

対象書籍

人と生態系のダイナミクス3 都市生態系の歴史と未来

飯田 晶子 (著), 曽我 昌史 (著), 土屋 一彬 (著)

人間は生物種として登場して以来、生態系から様々な恩恵を享受し、それを利用しつつ文明を発達させてきました。ところが、こうした20世紀以降の人工増加と科学技術の顕著な進歩は、大規模な土地改変、自然資源の過剰利用、資源の枯渇、処理しきれない廃棄物の発生等、深刻な地球規模の環境問題を引き起こし、人間社会の持続可能性を大きく低下させています。

そうした中で、生態系には多様な機能があり、それが社会の持続性にとって不可欠であるという認識が次第に社会に浸透し始めています。たとえば、生態系の保全や持続利用に対し国や自治体が支援する制度、生態系の価値を市場メカニズムに組みこむ試み、生態系の保全と地域活性化を連動させる試みなどが胎動しています。こうした動きは、人と自然の関係を再構築するポジティブなものとみなすことができます。

ところが、こうした動きは依然として、効果が限定的かつ先行きも不透明です。近年、国や企業はICT(情報通信技術)やAIが招く新たな価値創造を目指した社会づくりを進めようとしており、その典型例が国際競争力を高めるためのスマート農業といえます。しかしこうした政策はしばしば危険もはらんでおり、生産性や効率のみを追い求めた過去が、予期せぬ環境問題や社会問題を引き起こしてきたことを忘れてはならないでしょう。

つまるところ、逆説的かもしれませんが、これからの時代の要請を踏まえつつも、今こそ過去の失敗の歴史に学び、「価値の復権」を探ることが必要なのではないでしょうか。すなわち、人間と環境の関係を加害者と被害者のように単純化するのではなく、双方が動態的に相互作用してきた歴史的文脈の中で「環境問題」を捉えて、未来を創造していくことが必要なのです。そのためには生態学、特に都市生態学を学ぶことが大切になってきます。

そこで、今回は都市生態学分野で世界をまたにかけて活躍なされている曽我昌史先生をお招きして、こうした問題を様々な角度からお伺いしたいと思います。都市生態学という分野は自然科学と社会科学を統合したアプローチ(コンシリエンス)が前提とされるものであり、純粋な学術的視点からみて実に興味深いです。また実践的視点からいっても、都市生態学の積み重ねられた知見を知り、自然と人間の調和のあり方を理解することで、我々は哲学者ピーター・シンガーが批判する種差別(speciesism)や人間中心主義に陥ることなく、より俯瞰したリベラルな見地から地球規模での幸福を実現していくことができると思われます。

プロフィール

曽我昌史

東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授/東京大学卓越研究員。2010年に東京農工大学農学部を卒業し、2012年に同大学大学院農学府修士課程を修了、2015に北海道大学大学院農学研究院で博士(農学)を取得。学位取得後、日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科助教を経て、2019年11月より現職。
専門は生態学だが、その他に環境心理学や都市計画学、公衆衛生学にも精通し、人と自然の相互作用に関する学際的な研究に従事。主な著作に、『都市生態系の歴史と未来』(朝倉書店、2020年)がある。

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