シノドス・トークラウンジ

2021.07.20

2021年8月28日(土)開催

歴史を刻んだ名著にしてデビュー作35年後の増補版、井上達夫『共生の作法』を読む!

井上達夫 法哲学 司会:橋本努

開催日時
2021年8月28日(土)15:00~17:00
講師
井上達夫
司会
橋本努
場所
Zoom
料金
1100円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

対象書籍

増補新装版 共生の作法: 会話としての正義

井上 達夫

35年前に刊行された井上達夫著『共生の作法 会話としての正義』が、このたび勁草書房より増補新装版として再刊されました。本書は井上氏のデビュー作であるとともに、これまで10刷を重ねるロングセラーでもあります。トークラウンジでは、いまや現代日本の思想を代表する『共生の作法』の意義を、掘り下げて議論したいと思います。


35年前といえば、日本の思想界はポストモダン全盛期でした。生真面目なアカデミズムの知が軽視され、記号消費論などの軽やかな現代思想が流行りました。真理や正義といった主張は相対化され、「価値相対主義」の立場に立って相手を尊重することが、一つの支配的な考え方でした。しかし井上氏の『共生の作法』は、そうした態度の欺瞞を暴き、「正義」の概念を哲学的にストレートに探究するという、反時代的な思考を開拓します。『共生の作法』をきっかけにして、その後の日本の思想界では、規範理論の研究がすすみます。どんな社会がいいのかについて、ストレートに語る哲学が発展していきました。その意味で本書は、現代哲学の原点であるともいえます。


井上氏はその後、本書を基礎として、正義の普遍化可能性を基礎におくリベラリズムの思想を展開します。マルクス主義やコミュニタリアニズムを批判するだけでなく、おなじくリベラリズムの立場に立つロールズの理論に対しても批判の矢を向けて、リベラリズムの哲学を発展させます。氏のいう「正義の普遍化可能性」は、他者の立場との反転可能性を求めるものであり、それは合意できない考え方をする他者と共生するための、一つの政治的な装置であります。その場合の正義とは、異質な他者との共生の作法であり、それはハーバーマスのいう「透明なコミュニケーション」ではなく、マイケル・オークショットのいう「社交体」のリベラルな解釈を基盤にすることが、本書で明らかにされています。


私たちは『共生の作法』の哲学を、いまどのように受けとめるべきでしょうか。当日は参加者の皆様と、哲学の会話を楽しみたいと思います。皆様、どうぞよろしくご参加くださいませ。(なお本増補版は、本体としては、基本的に以前の創文社版と同じであり、そこに小論を付したものであります。)

プロフィール

井上達夫法哲学

1954年、大阪生まれ。東京大学名誉教授。『法という企て』(東京大学出版会、2003年、和辻哲郎文化賞受賞)、『現代の貧困――リベラリズムの日本社会論』(岩波現代文庫、2011年)、『世界正義論』(筑摩選書、2012年)、『自由の秩序――リベラリズムの法哲学講義』(岩波現代文庫、2017年)、『立憲主義という企て』(東京大学出版会、2019年)、『普遍の再生――リベラリズムの現代世界論』(岩波現代文庫、2019年)、『生ける世界の法と哲学――ある反時代的精神の履歴書』(信山社、2020年)、『増補新装版 他者への自由――公共性の哲学としてのリベラリズム』(勁草書房、2021年)など。

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