シノドス・トークラウンジ

2021.12.10

2022年1月26日(水)開催

ケアに満ちた社会を作るには――『ケア宣言』を読む

冨岡薫 ケアの倫理、生命倫理 ホスト:橋本努

開催日時
2022年1月26日(水)20:00~21:30
講師
冨岡薫
ホスト
橋本努
場所
Zoom【後日、アーカイブの視聴も可能です】
料金
1500円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

対象書籍

ケア宣言 相互依存の政治へ

ケア・コレクティヴ / 岡野 八代、冨岡薫、武田宏子(翻訳)

このコロナ禍で、家事や看護などの「ケア労働」の大切さがあらためて認識するようになりました。家族、コミュニティ、福祉施設などにおいて、ケア労働は重要な役割を果たしているにもかかわらず、私たちはこれまで、ケアをおとしめたり、おろそかにしてきたのではないでしょうか。

シノドス・トークラウンジでは、最近翻訳されたケア・コレクティヴ著『ケア宣言 相互依存の政治へ』(岡野八代+冨岡薫+武田宏子訳、大月書店)を取り上げて議論します。本書は、2017年からロンドンを拠点に活動をはじめた研究者・活動家たち(5人)が書いたもので、小著ながらパワフルなマニフェストです。ケアを中心に据えた社会のビジョンをたくましく描いています。従来の英国労働党の理念にとらわれない、新しい思想(イデオロギー)の誕生といってもよいでしょう。「ケアに満ちた政治」「ケアに満ちた親族関係」「ケアに満ちたコミュニティ」「ケアに満ちた国家」「ケアに満ちた経済」「世界へのケア」などについて論じています。私たちはいま、政治社会のなにを批判すべきなのか。本書に大きなヒントがあります。

ケアの倫理をめぐる議論は、理論的にはギリガン著『もう一つの声』(1982年)にさかのぼります。通常の規範から外れる声に耳を傾けたギリガンは、「正義の倫理」に対比される「ケアの倫理」を浮かび上がらせました。公的な領域では「正義の倫理」を優先して、私的な領域では「ケアの倫理」を優先すべきだと考える人もいるかもしれませんが、しかしそのような発想でいいのでしょうか。例えば、患者や高齢者や子どもの福祉(ウェルフェア)を最大化するためには、ケアの倫理を中心に据えて、福祉政策を検討すべきかもしれません。ケアの実践は、個人的なものではなく、ユニバーサルなものであるというのが本書の着眼点です。トークラウンジでは、訳者の一人である冨岡薫さんをお招きして、ケアの倫理と新しい左派政治の可能性に迫ります。

プロフィール

冨岡薫ケアの倫理、生命倫理

慶應義塾大学 文学研究科 哲学・倫理学専攻 倫理学分野 後期博士課程。国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 生命倫理・医事法研究部特任研究員。専門はケアの倫理、生命倫理。論文に「ケアの倫理における「依存」概念の射程:「自立」との対立を超えて」『エティカ』(2020年)、共訳書に『ケア宣言――相互依存の政治へ』(大月書店、2021年)など。

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