シノドス・トークラウンジ

2022.04.03

2022年5月20日(金)開催

科学的社会主義vs自由の哲学――マイケル・ポランニー/ハリー・プロシュ『ミー ニング』を読む

小島秀信 社会経済学・社会哲学 司会:橋本努

開催日時
2022年5月20日(金)20:00~21:30
講師
小島秀信
司会
橋本努
場所
Zoom【後日、アーカイブの視聴も可能です】
料金
1500円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

対象書籍

ミーニング 人間の知的自由について

マイケル・ポランニー,ハリー・プロシュ / 飯原栄一,小島秀信,山本慎平(翻訳)

ロシアのウクライナ侵略は、これをプーチンの個人的な野心の問題として捉える人もいますが、プーチンを生んだのはロシアの共産主義/社会主義であり、そのイデオロギーの必然的な帰結として、この侵略の問題を捉える必要があるでしょう。

とりわけ19世紀後半に、「科学的社会主義」という独善的なイデオロギーが生まれました。エンゲルスに由来するこの科学的社会主義は、ロシアの共産党が「科学的真理」を把握できる、あるいは把握している、と考えます。反対に、共産党の方針に合わない理説は「科学的ではない」とみなされます。科学的社会主義の考え方は、共産主義における独裁政権を正当化する知的風土を醸成しました。マイケル・ポランニー(1891-1976)は、この科学的社会主義の考え方に反対し、「暗黙知」をキーワードにして、独自の自由主義思想を築いた偉大な思想家の一人です(経済思想家のカール・ポランニーは兄です)。

本書『ミーニング(意味)』、マイケル・ポランニーの最晩年の著作であり、読者は、芸術論、宗教論、社会論など、多岐にわたる氏の思想の全体像を知ることができるでしょう。共同執筆者のプロシュは、マイケル・ポランニーの連続講義記録を起こして編纂する役割を果たしました。

マイケル・ポランニーは、ハンガリーに生まれ、その後、ドイツの研究所で物理学の研究に従事しますが、ユダヤ人であったため、1933年にドイツでナチス政権が誕生すると、イギリスに亡命します。その後はマンチェスター大学で教えつつ、社会哲学に大きな影響を及ぼす思想家になりました。

彼は元々、ナチスのファシズムに反対しましたが、1957年に母国のハンガリーで革命が起きると、当時のロシア(スターリン政権)のハンガリー侵攻を深刻に受け止め、科学的社会主義の欺瞞性を、科学哲学の次元で明らかにしていきます。

科学的な思考を操る社会主義政権(「党の真理」)に対抗するために、科学的真理を還元主義的に捉える立場を批判して、科学における創発的な構造を強調します。科学といえども、私たちの認識はすべて、ある理解をその要素には還元することができず、暗黙知の構造を通じて可能になっている。この暗黙知が科学の重層的な全体構造をもたらしている、というのがマイケル・ポランニーの思想の中核です。「暗黙知」の理論は、芸術や文芸の理解や評価にも応用され、ニヒリズムを批判する思想へと発展しました。共産主義やファシズムに対抗するためには、私たちはどんな「知」を必要としているのでしょう。私たちはいまこそ、マイケル・ポランニーの思想に学ばなければなりません。

トークラウンジでは、訳者の一人である小島秀信氏をお招きして、マイケル・ポランニーの新しい翻訳書、『ミーニング』について語り合います。皆様、どうぞよろしくご参加ください。

プロフィール

小島秀信社会経済学・社会哲学

同志社大学商学部准教授。博士(経済学・大阪市立大学)。社会経済学・社会哲学専攻。
主要著作『伝統主義と文明社会――エドマンド・バークの政治経済哲学』(京都大学学術出版会、二〇一六年)。The Value of the Feudalistic Relationship in Edmund Burke’s Political Economy, in Interpretation: A Journal of Political Philosophy, 47(1), 2020.

この執筆者の記事