シノドス・トークラウンジ

2023.03.08

2023年4月5日(水)開催

【トーク】オルタナティブはありえないのか――左/右の対立を乗り越える新しい経済圏

荒谷大輔 哲学、倫理学 ホスト:代麻理子

開催日時
2023年4月5日(水)20:00~21:30
講師
荒谷大輔
ホスト
代麻理子
場所
Zoom【アーカイブ動画での視聴も可能です】
料金
1500円(税込)

「オルタナティブは存在しない」と言われ福祉政策が切り詰められはじめた1980年代以降、新自由主義はすっかり日常として定着した感があります。対抗する言説はメインストリームを変える力まで獲得できず、かつての左翼も中道化することによって勢力を保つ努力を積み重ねている状況です。近年では気候変動の危機に呼応した新しい動きが起こっていますが、これは新しいかたちの「オルタナティブ」となりうるのでしょうか。

荒谷大輔氏の『資本主義に出口はあるか』(講談社 2019年)は、現代に至るまでの左右の対決の歴史的な過程を、ロックとルソーという対立する2つの社会契約論を軸に鮮やかに描き出す好著ですが、同書によると1980年代以降の左翼的言説の影響力の低下は、ある種の必然だったとみなされます。

戦後民主主義における高福祉政策は、労働者を消費者化するといった特定の経済的要因によって実現した高度経済成長を背景としてはじめて成立したもので、1970年代にはすでに地盤を失っていたと述べられています。さらに、歴史的に「オルタナティブ」とみなされてきた諸々の社会改革の運動は、資本主義経済の発展の裏側でともに「近代」を作り上げてきましたが、その役割はすでに終わっていると言われます。

それでは、資本主義経済を基盤とする現在の社会のあり方とは別に「オルタナティブ」はもはやありえないのでしょうか? 荒谷氏は、近代の成立基盤自体を問い直し、「ルソー」の系列に還元されない「オルタナティブ」は可能だと言います。「ハートランド」と呼ばれる、荒谷氏自身が昨年立ち上げたプロジェクトがその試みだそうです。

今回のトークラウンジでは荒谷氏をお招きして、現代の社会における「オルタナティブ」の可能性や、ハートランドの実効性について、お話をうかがいたいと思います。左/右の対立を超える新たな経済圏の形成について、みなさんと議論できたら幸いです。どうぞふるってご参加ください。

参考書籍:『資本主義に出口はあるか』(講談社現代新書)

ハートランド概要:https://heart-land.io/ja/

プロフィール

荒谷大輔哲学、倫理学

慶應義塾大学文学部教授。専門は哲学/倫理学。主な著書に『資本主義に出口はあるか』(講談社現代新書)、『ラカンの哲学:哲学の実践としての精神分析』(講談社メチエ)、『「経済」の哲学:ナルシスの危機を越えて』(せりか書房)、『西田幾多郎:歴史の論理学』(講談社)、『ドゥルーズ/ガタリの現在』(共著、平凡社)など。

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