シノドス・トークラウンジ

2023.04.10

2023年4月26日(水)開催

【トーク】ウクライナ戦争の本質とは何か?

井上達夫 法哲学 ホスト:橋本努

開催日時
2023年4月26日(水)20:00~21:30
講師
井上達夫
ホスト
橋本努
場所
Zoom【後日、アーカイブ動画での視聴も可能です】
料金
1980円(税込)

ロシアによるウクライナ侵攻がはじまって以来、一年余りがすぎました。私たちはこの侵略を、どのように受け止めるべきでしょうか。また、戦争解決の糸口はどこにあるのでしょうか。

シノドス・トークラウンジでは、昨年9月に著書『ウクライナ戦争と向き合う――プーチンという「悪夢」の実相と教訓』信山社(法と哲学新書)を刊行された井上達夫氏をゲストに迎えて、ウクライナ戦争の本質に迫ります。

プーチンは当初、ウクライナに傀儡政権を打ち立てることを狙っていましたが、その作戦は失敗しました。ウクライナ軍は反撃に転じ、敵味方ともに多数の死傷者を出しつつも、出口の見えない戦いが続いています。

そもそもなぜプーチンはこの戦争を始めたのかというと、近い将来、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟すれば、ロシアにとって脅威になる。だからこれを未然に防ぐ必要があった、という説明があります。しかし井上氏はこのような説明を批判します。例えばプーチンは就任当初、ロシアがNATOに加盟することに積極的でした。ところがイワノフ国防相に反対されたために実現しませんでした。ロシアがNATOに加入する可能性は、その当時は十分にあったのです。またプーチンは2019年に、NATOの加盟国であるトルコに対して、ロシアが誇る地対空防衛ミサイル「S-400」を売却しています。プーチンの見るところ、NATOの加盟国に最強の武器を売っても問題はなかった。米国と仏・独のあいだには亀裂が生じており、NATOは機構として弱体化している。ロシアにとってNATOは、大きな脅威ではありませんでした。

ではなぜ、プーチンはウクライナに戦争を仕掛けたのでしょうか。それはプーチンが自らの独裁体制を維持するためであり、自分の保身のためであります。かつて英国のアクトン卿は、「権力は腐敗する。絶対的な権力は、絶対的に腐敗する」と述べましたが、プーチンは絶対的な権力を手に入れたがゆえに、絶対的に腐敗することを免れえないようです。プーチン体制に対する国民の不満は高まっています。プーチンは国民のそのような不満をそらして、国民の忠誠心をつなぎとめるために戦争を始めたのだと考えられます。

ロシアは、日本にとっても脅威となる国の一つです。長期的にみれば、ロシアに第二のプーチン、第三のプーチンが現れないともかぎりません。ロシアによるウクライナ侵攻というこのような無謀な戦争が実際に起きてしまった以上、私たちはこれにどう対応すべきなのか。改めて国際政治の本質を考えなければなりません。シノドス・トークラウンジでは、井上氏とともに、ウクライナ戦争とその意味について深堀します。皆様、どうぞよろしくご参加ください。

なお井上氏の立論は、小林よしのり氏の近著『ゴーマニズム宣言SPECIAL ウクライナ戦争論2』扶桑社(2023年3月21日刊)のなかで、対談形式で展開されています(92-132頁)。あわせてご高覧ください。

プロフィール

井上達夫法哲学

1954年、大阪生まれ。東京大学名誉教授。『法という企て』(東京大学出版会、2003年、和辻哲郎文化賞受賞)、『現代の貧困――リベラリズムの日本社会論』(岩波現代文庫、2011年)、『世界正義論』(筑摩選書、2012年)、『自由の秩序――リベラリズムの法哲学講義』(岩波現代文庫、2017年)、『立憲主義という企て』(東京大学出版会、2019年)、『普遍の再生――リベラリズムの現代世界論』(岩波現代文庫、2019年)、『生ける世界の法と哲学――ある反時代的精神の履歴書』(信山社、2020年)、『増補新装版 他者への自由――公共性の哲学としてのリベラリズム』(勁草書房、2021年)など。

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