シノドス・トークラウンジ

2024.01.24

2024年2月21日(水)開催

【トーク】リベラルをグローバルに考える――地に足の着いたコスモポリタン?

鈴木弥香子 ホスト:橋本努

開催日時
2024年2月21日(水)20:00~21:30
講師
鈴木弥香子
ホスト
橋本努
場所
Zoom【後日アーカイブ動画での視聴も可能です】
料金
1500円(税込)

近年の欧米の先進諸国では、移民に対する心理的反発やゼノフォビアから、ナショナリズムの国民感情が湧き上がっています。移民を受け入れるリベラルと、これに反対する保守(右派)という構図が、政治の中心的な対立軸の一つになっています。

しかしリベラルというのは、ただ「移民をどんどん受け入れればいい」と主張している立場ではありません。その意味でリベラルは、ナショナリズムに真っ向から反対しているのでありません。

リベラルはまた、私たちが国民国家を超えて、たんにグローバルな世界に浮遊するコスモポリタンになればいい、と考えるのではありません。それはほとんど不可能ですし、また望ましいというわけでもありません。

ではリベラルは、どんなコスモポリタンの理想を描くことができるのでしょう。この問題をめぐって、最近、瞠目すべき著作が刊行されました。鈴木弥香子著『新しいコスモポリタニズムとは何か』(晃洋書房)です。

コスモポリタンというと、「自分は違うな」と思われるかもしれません。けれどもその理念を検討してみると、私たちの日常の思考スタイルの一つであることが分かります。例えば、いまの現実を、変更不可能なものとして受け入れるのかどうか、オルタナティヴを探るのかどうか、という問題です。とりわけ原発や地球環境の問題について考えるとき、オルタナティヴを探る態度は、重要な意味を持ちます。現実政治を動かすためには、コスモポリタンな視点を持った政治感覚が不可欠です。

この点を本書は、リスク社会学とエコロジーの問題を牽引した、ドイツ人社会学者のウルリッヒ・ベックに即して検討しています。晩年のベックは、コスモポリタンの理想を語り直すのですが、これをどう評価するか。本書はベックの立場を豊かに再構成しています。

さらに重要な問いは、はたしてローカルなものに根差したコスモポリタンは、いかにして可能か、です。本書は、災害時の国際支援と国際連携を例に、コスモポリタンの新しい可能性を探ります。災害時に助け合うために、私たちは何をすればいいのでしょう。本書は、コスモポリタニズムの新たな可能性を提起しています。

かつて社会学者カール・マンハイムは、「浮遊する知識人」の理想を語りました。本書はこのコスモポリタンの理想を、地に足のついた仕方で練り直しています。シノドス・トークラウンジでは、本書の著者である鈴木弥香子先生をお招きして、私たちの社会のオルタナティヴを語り合いたいと思います。皆さま、どうぞよろしくご参加ください。

プロフィール

鈴木弥香子

1989年生まれ。慶應義塾大学、立教大学、東京都立大学非常勤講師。
慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学、University of South Australia, Division of Education, Arts & Social Sciences, Doctoral Course 修了。社会学博士(慶應義塾大学)、Ph.D in Sociology (University of South
Australia)。
主な著書に『新しいコスモポリタニズムとは何か――共生をめぐる探究とその理論』(晃洋書房、2023年)など。

この執筆者の記事

橋本努社会哲学

1967年生まれ。横浜国立大学経済学部卒、東京大学総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、北海道大学経済学研究科教授。この間、ニューヨーク大学客員研究員。専攻は経済思想、社会哲学。著作に『自由の論法』(創文社)、『社会科学の人間学』(勁草書房)、『帝国の条件』(弘文堂)、『自由に生きるとはどういうことか』(ちくま新書)、『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社メチエ)、『自由の社会学』(NTT出版)、『ロスト近代』(弘文堂)、『学問の技法』(ちくま新書)、編著に『現代の経済思想』(勁草書房)、『日本マックス・ウェーバー論争』、『オーストリア学派の経済学』(日本評論社)、共著に『ナショナリズムとグローバリズム』(新曜社)、など。

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