シノドス・トークラウンジ

2024.04.24

2024年5月18日(土)開催

【トーク】リベラリズム批判を考える

萱野稔人 ホスト:橋本努

開催日時
2024年5月18日(土)14:00~15:30
講師
萱野稔人
ホスト
橋本努
場所
Zoom【後日アーカイブ動画での視聴も可能です】
料金
1500円(税込)

自民党の裏金問題で、岸田政権の支持率が低迷しています。しかしリベラルな諸政党の支持率も低迷しています。どうも政治不信が広がっているようです。いま日本人は、保守政党にもリベラル政党にも、「ノー」を突きつけている。既存の政党に対して、失望しています。そうはいっても、日本人はポピュリズムや排外主義に向かっているわけでもありません。いま必要な政治理念とは、何でしょうか。

シノドス・トークラウンジでは、政治哲学者の萱野稔人先生をお迎えして、現代のリベラル、あるいはリベラリズムの問題点について掘り下げます。萱野稔人著『リベラリズムの終わり その限界と未来』(幻冬舎新書、2019年)は、リベラリズムに一定の共感を示しながらも、その限界や制約がどこにあるのかについて深く論じています。

例えばリベラルは、同性婚を認めよ、と主張します。しかしこの主張を拡張して、私たちは、一夫多妻制や一妻多夫制を認めることができるでしょうか。これらの家族形態がなぜ認められないのか。その理由は決して自明ではありません。リベラルな原理でもって、承認できないわけではありません。それでも承認しない。これはリベラルの思想的限界を示しているでしょうか。

あるいはまた、リベラルは、生活保護の捕捉率(生活保護を受ける権利がある人で、この制度を利用している人の割合)を上げよ、と主張します。2016年において、日本の生活保護の捕捉率は、22.6%でした。これに対して英国では、87%に達しています。日本も英国のように、生活保護を必要とする人たちの高い補足率を実現すべきでしょうか。しかし本書によれば、捕捉率を8割にするには、新たに15.2兆円が必要であり、そのためには消費税を少なくとも5%上げる必要があるといいます。リベラルは、このような増税に同意するでしょうか。

こうした家族形態や生活保護の問題は、いずれもリベラルに対して難問を突きつけます。自分はリベラルだという人にとっても、リベラルの思想は、どこかで限界にぶち当たるはずです。ではその限界について、どうやって折り合いをつければよいのでしょう。それはリベラル以外の思想によって、与えられるでしょうか。

ではそれはどんな思想なのでしょうか。これはきわめて哲学的な問いであると同時に、私たちの社会問題を考えるうえでアクチュアルな意味をもっています。一般に、リベラルは弱い者の味方だ、といわれます。しかし例えば、所得の再分配は、功利主義やナショナリズムの側からも擁護できます。リベラルに特有の考え方というわけではありません。ではリベラルとは何か。シノドス・トークラウンジでは、萱野稔人先生をお招きして、リベラルの可能性と不可能性について議論します。皆様、どうぞよろしくご参加ください。

プロフィール

萱野稔人

1970年、愛知県生まれ。津田塾大学教授。
『国家とはなにか』(以文社、2005年)、『カネと暴力の系譜学』(河出書房新社、2006年)、『権力の読みかた』(青土社、2007年)、『新現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか』(NHK出版、2011年)、『暴力と富と資本主義 なぜ国
家はグローバル化が進んでも消滅しないのか』(角川書店、2016年)、『死刑その哲学的考察』(筑摩書房、2017年)、『リベラリズムの終わり その限界と未来』(幻冬舎、2019年)など。

この執筆者の記事

橋本努社会哲学

1967年生まれ。横浜国立大学経済学部卒、東京大学総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、北海道大学経済学研究科教授。この間、ニューヨーク大学客員研究員。専攻は経済思想、社会哲学。著作に『自由の論法』(創文社)、『社会科学の人間学』(勁草書房)、『帝国の条件』(弘文堂)、『自由に生きるとはどういうことか』(ちくま新書)、『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社メチエ)、『自由の社会学』(NTT出版)、『ロスト近代』(弘文堂)、『学問の技法』(ちくま新書)、編著に『現代の経済思想』(勁草書房)、『日本マックス・ウェーバー論争』、『オーストリア学派の経済学』(日本評論社)、共著に『ナショナリズムとグローバリズム』(新曜社)、など。

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