少子化対策・両立支援についての各政党の政策の比較・評価

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7月4日公示、7月21日投開票の第23回参議院議員選挙。衆参ともに自公が過半数の議席を獲得し「ねじれ」が解消されるのか、またネット選挙運動の解禁など、注目すべき点は多い。一方、従来の選挙同様、各党の掲げる公約・政策は、投票前に十分に検討しなくてはならないことは変わらないだろう。そこでシノドスでは、21日の投開票日に向けて、さまざまな専門家に、各党の公約・政策を特定のテーマに着目した論考をご寄稿いただく。本稿を参考に、改めて各党の公約・政策を検討いただければ幸いです。(シノドス編集部)

 

 

日本の少子化の現状

 

日本の出生率の現状は、「回復傾向にあるが、上昇が進むことについては悲観的で、依然として低調」であるという見方が一般的である。たしかに日本の合計出生率は極端な低出生率に悩む他の東アジア地域(台湾、韓国、シンガポール、香港)と比べれば高い水準にある。2005年には過去最低の1.26を記録したが、それ以降は上昇しており、2012年には1.41にまで回復した。

 

この回復の背景には、団塊ジュニア世代の駆け込み出産の効果もあるが、子育て支援政策の効果が徐々にみられてきた、という見方もある。他方で、晩産傾向には歯止めがかかっておらず、また現在出生している人たちはすでに少子化世代であるためそもそも出産の母体数が少なく、出生率が上昇してももはや子どもの数は増えない、という現状がある。移民というオプションを考えずに高齢化に対処するためには、ドラスティックな少子化対策が必要になるだろう。

 

このようななか、2013年7月の参議院選挙に向けて、各党が選挙期間前にマニフェストの基礎となる政策方針を発表している。以下、順次みていくことにしよう(検討対象は、2013年6月3日時点で衆議院において10以上の議席をもつ政党にかぎってある)。

 

 

各党の子育て支援関連政策

 

■自由民主党

 

今回検討の材料としたのは、「参院選公約」、「総合政策集」のほか、「女性手帳」で有名(?)になった少子化危機突破タスクフォースによる「少子化危機突破」のための提案(2013.5.28)である。

 

自民党の基本方針は、2007年12月(自民福田内閣時代)に採択された「ワーク・ライフ・バランス憲章」、2012年(民主党時代)に成立したいわゆる「子ども・子育て関連3法」に基づいた「子ども・子育て支援新制度 」(*1)の延長線上にありつつも、安倍内閣が政権をとってからは子育て支援を加速化する動きがみられる。特に都市部の待機児童問題については、「待機児童解消加速化プラン」のもと、期限と数値目標を伴った具体的な自治体支援が模索されている。

 

(*1)親の就労の有無にかかわらず利用できる「認定こども園」の改善・拡充についての施策。幼保一体の推進を目指した認定こども園制度は、制度の複雑さなどの理由から設置の数値目標を大幅に下回っている。「新制度」により手続きを簡素化し、この問題を緩和することが目指されている。また、消費税増税による財源の一部(0.7兆円)を保育サービスの拡大にあてることもうたわれている。

 

「ワーク・ライフ・バランス憲章」の方針に沿った両立支援については、中小企業の両立支援、女性の管理職登用、男性の働き方の見直し(長時間労働の抑制)などが掲げられているが、具体的な制度化や数値目標については触れられていない。また、ひところ話題になった「育児休業3年」については、首相官邸のウェブサイトにも関連した情報(「女性が輝く日本へ」)があるが、現時点では(報道されているように)経済団体への依頼という位置づけにとどまるもので、党の公約にも「3年育休への企業の自主的な取り組みを後押しする」としか書かれていない。おそらく制度化するという話にはならないだろう。

 

少子化危機突破タスクフォースの提案文書には、以上の「子育て支援」「両立支援」と並んで、「結婚・妊娠・出産支援」の拡充が提起されている。前二者は育児期に焦点を当てた施策であるが、「結婚・妊娠・出産支援」はより直接的に出生率の上昇を狙った支援方針である。

 

タスクフォースの文書には「女性手帳」という発想の基盤にある「妊娠・出産等に関する情報提供、啓発普及」のほか、「新婚世帯の税制優遇措置についての検討」が掲げられている。ただ、「総合政策集」の方には直接該当するものは見当たらなかった。なお、年少扶養控除は復活が明記されている。

 

 

■民主党

 

民主党の少子化対策といえば2009年の衆議院選挙の争点の一つになった「子ども手当」であるが、現在は自民・公明の当時の要望で名称が「児童手当」に戻っている。結果的には旧児童手当に比べて手当の額が1万円前後増額されている。2012年は名称をめぐる政治の茶番ぶりが目立った一年であった。

 

子ども手当の実施にともなって2011年から年少扶養控除が廃止され、子育て家庭の負担感が緩和されない状態であった一方で、2009年衆院選のマニフェストにも書かれていた配偶者控除の廃止は見送られた。「女性の就業を推し進めつつ出生を促す」という方向からすれば、民主党政権時代の両立・出生支援政策はかなりちぐはくしたものであったと言わざるを得ない。民主党政権時代の実績としては、「子ども・子育て支援関連3法案」(現在の「子ども・子育て支援新制度」、内容については上の注を参照)、そして高校無償化の2つだといえるだろう。

 

7月の参議院選挙に向けた政策方針としては、マニフェストではないが6月に発表されている「民主党政策集」および「民主党重点政策」がある。(「政策集」の方はなんだか内容の重複も多くていい加減なので、あまり参考にできない。)

 

子育て支援については、自民党の方針と根本的に異なった方向を向いている印象は受けない。これは自民党も同じであるが、晩婚化の一因となっている若年層の雇用の不安定化については、抜本的な提案はみあたらない。ただ、非正規雇用の均等待遇や労働時間の上限規制の法制化について言及されており、働き方の改革については多少踏み込んだ方針であるという見方もできる。

 

全体的な印象として、やはり民主党時代に進められた幼保一元化(民主党の言葉では幼保一体化)が強調された政策文書になっている。しかしこれについては自民党も基本的に同じ方向を向いており、差異は目立たない。自民党はさらに幼児教育の無償化に向けた検討の開始を掲げており、積極性という面ではやや劣る印象を受けた。

 

(本論と関係ないが、「重点政策集」のあのみえすいたコミック、そのまま受け止める人なんているんだろうか。それこそ、少々ややこしい政策方針に関心を持ってもらう手段として使えばよいと思うのだが……)

 

 

■公明党

 

公明党の子育て・両立支援政策は、6月に発表された「参院選重点政策」に記されている。全体的によく練られているという印象を受ける。

 

「女性の労働力の活用」が強調されているあたり、安倍政権と歩調をそろえているのだろう。具体的には、自民党も掲げている「待機児童解消加速化プラン」のほか、両立支援に力を入れる企業への税制優遇、短時間正社員とテレワークの推進などが掲げられている。

 

若年者雇用・非正規雇用問題については、企業への助成金を通じた総合支援がうたわれている。

 

ワーク・ライフ・バランスについては各所で強調されている。自民党の政策集にもある幼児教育無償化の導入の検討が明記されている他、「育児休業については正規・非正規を問わず3年まで取得できることを目指す」と書かれているあたり、自民党よりも積極的な部分もある。

 

全体的には、大筋で自民党の支援方針に沿いながらも、より明確なかたちで個々の政策を進めようという姿勢がみられる。

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.265 

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