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前回の拙稿(『東日本巨大地震の経済的影響をどう考えるか』)では、3月13日時点までに判明している地震の影響を念頭におきながら、東北地域および北関東地域の経済規模や産業構造を念頭に整理を行った。

 

ただし、その後明らかとなった被災地の状況や、福島原発事故の深刻化を考慮すると、見込むべき被害額は数兆円単位ではないことは明らかである。東北地域の経済活動の停滞が他地域に及ぼす波及効果や、原発事故の深刻化にともなう東北・関東地域の電力供給量の低下が家計や企業の経済活動を収縮させる影響といった間接的な効果を考慮すれば、数十兆円規模の対策を実行する必要があることはたしかではないか。

 

以下では3月14日以降の動向を主に敷衍しつつ、論じてみることにしよう。

 

 

やはり「しょぼい」といわざるをえない日銀の対応

 

さて前回の拙稿(『東日本巨大地震の経済的影響をどう考えるか』)でも予想した通りだが、3月11日の震災から土日を挟んだ最初の月曜日である14日以降、円高・株安が進んだ。為替レートは16日夕方(日本時間17日早朝)のニューヨーク外国為替相場で一時76円25銭まで急騰し、1995年4月の最高値(79円75銭)を16年ぶりに更新。その後79円台まで戻すものの、日本時間17日の深夜には再び78円台を目指す動きをみせた。

 

なぜこのような急激な円高が生じているのだろうか。たしかに76円25銭の最高値を更新した局面では薄商いの時間帯を狙った投機筋による円買注文が契機となって、それが投資家の損失確定にともなう円買いにつながり、円の急騰をもたらしたといえるかもしれない。だが11日以降の継続的な円高の進展を考慮すれば、震災以降の円高の進展は、決済のための資金需要が増大し、円に対する需要が海外通貨と比べてより高まるのではないかという期待を払拭できないことが影響しているだろう。

 

「国際金融のトリレンマ」に照らせば、我が国は「国際資本移動の自由化」と「独立した金融政策」のふたつにコミットしており、為替レートを直接コントロールすることは不可能である。ただし日銀が行う金融政策は円に対して影響を与えることができ、そのことで為替レートにも影響を及ぼすことが可能だ。

 

14日以降、日銀は円高に対して断続的に短期資金を供給し、緊急即日オペの総額は14日から17日までの4日間で総額34兆円に達している。ただし、大量の即日オペ(先日付オペ含む)にもかかわらず円高は止まっていない。もちろん、断続的に即日オペを大規模に実行することにより流動性不安を鎮めることも重要だが、市場の動きはより長めの資金供給を行うことの必要性を告げている。

 

そうすると、14日に行われた日銀政策決定会合の結果は残念ながら「しょぼい」といわざるをえない。

 

14日の政策決定会合では、政策金利である無担保コールレート(オーバナイト物)を0~0.1%程度で推移するよううながすとともに、2012年6月末を目処に資産買入等の基金を5兆円程度増額し、40兆円程度(内訳は長期国債0.5兆円、国庫短期証券1.0兆円、CP等1.5兆円、社債等1.5兆円、指数連動型上場投資信託0.45兆円程度、不動産投資信託0.05兆円程度)とする決定を下した。

 

まず着目すべきは、量的拡大が十分でないという点、つまり15ヶ月後を目処に資産買入等の基金を5兆円増加するという「しょぼさ」である。直近の当座預金残高は上述の即日オペの影響もあって30兆円を超える規模となっているが、当座預金残高を30兆円とした場合の1ヶ月5兆円増額した場合の変化率は17%程度、15ヶ月かけて5兆円増額させた場合には1ヶ月あたり1%台の伸びにとどまる。

 

そして、今回の資産買入等の基金増額の特徴は、リスク資産の買取りの比重を高めていることにある。15日に公表された総裁記者会見の議事録によれば、リスク資産の買取りの比重を高めたのは、市場のリスク回避の影響を、日銀がリスク資産を買取ることで抑制するという狙いがあるとのことだ。社債や指数連動型上場投資信託のリスクが高いことは分かるが、14日以降のリーマン・ショック時をこえる株安や過去最高値を更新した円高という「結果」を考えると、やはりこれも「しょぼい」といえるのではないか。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.264 

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