ソ連型システム崩壊から何を汲み取るか──コルナイの理論から

さて、30年前ぐらいから世界中で迫られた「転換X」の正体は何か──国家主導体制が崩れて、「小さな政府」に転換することだと思われていたけど、そうでなかったのなら何だったのか──ということをこれからお話ししていくわけですが、これを、当時この転換を提唱していた経済学者の言っていたことを振り返ってみる中から、確認したいと思います。

 

このときキーワードになるのは……

 

リスクと決定と責任

 

ということです。

 

さらにもう一つ、

 

予想は大事

 

ということも覚えておいて下さい。

 

それで、まず、一番典型的だったソ連型の経済システムがなぜ崩壊したのかを検討することから始めたいと思います。

 

ソ連も崩壊して20数年になりますので、若い人たちには「ソ連」と言ってもピンとこない人も多いかもしれません。いまのロシアを中心とする15カ国を支配していた国ですけど、私の少年時代には圧倒的に「悪くて怖い国」のイメージでしたね。もっと前の時期には、左翼側にはソ連礼賛していた人たちも多かったのでしょうけど、さすがに私の若い頃ともなれば、日本共産党もソ連共産党と大げんかしていて(のみならず中国とも北朝鮮とも大げんかしていて)、他方の、日本共産党と対立している急進左翼の人たち(世間で「過激派」って呼ばれている人たち)もだいたいはみんな反ソ連でしたから、右も左も反ソで当り前みたいになっている頃でした。

 

私たちはこんな中で育ってきた世代ですので、だいたいはソ連体制が潰れて大喜びしたクチだろうと思います。なぜソ連型システムが崩壊したかの理解のしかたで言えば、やっぱり私たちの場合、「個人の自由を力で抑えつける独裁体制は必ず打倒されるものだ」というようなストーリーでとらえた人が多かったんじゃないですかね。周りはみんなそうだったように思います。「どんなに厳しい現実がそびえていても、いつか理想は実現するものだ」みたいなまとめ方をしてたわけです。

 

ところがその後、いつのまにか世間の理解の仕方が、「競争がないとみんな怠けて国が潰れるよね」みたいなまとめ方に変わっていったような気がします。「きれいな理想を掲げても、現実はうまくいかないんだよ」みたいな、逆のニュアンスのストーリーになった感じ。

 

だいたいソ連型システムは、あまりにも多くの愚かなことや、人として許せないことをやったために、そのうちどれが本質的問題なのか一見わからなくなってしまうところがあります。だから、ソ連型システムに多少でも未練のある人にとっては、そのうちどれか一つでもなかったらうまくいったのではないかという言い逃れができてしまいます。「一党独裁さえなければ」「全面国有でさえなければ」「スターリンさえいなければ」等々。

 

そうではなくて、体制の根幹にかかわるところに、どうしてもうまくいかなくなるところがあったのですが、それが何かを、ここではっきり見ておきたいと思います。

 

連載『リスク・責任・決定、そして自由!』

第一回:「『小さな政府』という誤解

第二回:「ソ連型システム崩壊から何を汲み取るか──コルナイの理論から

第三回:「ハイエクは何を目指したのか ―― 一般的ルールかさじ加減の判断か

第四回:「反ケインズ派マクロ経済学が着目したもの──フリードマンとルーカスと『予想』

第五回:「ゲーム理論による制度分析と「予想」

第六回:「なぜベーシックインカムは賛否両論を巻き起こすのか――「転換X」にのっとる政策その1

第七回:「ケインズ復権とインフレ目標政策──「転換X」にのっとる政策その2

第八回:「新スウェーデンモデルに見る協同組合と政府──「転換X」にのっとる政策その3

 

 

 

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