被災地の子どもたちはうつむいてはいない ―― OECD東北スクールから生まれる新しい可能性

東日本大震災から1年5ヶ月が過ぎ、被災地は「復興」へ向かううねりの中にある。子どもたちはどのような目で震災後の今をとらえ、近い未来を見ているのだろうか。未来へ向けた子どもたちの可能性を引き出そうと、7月31日から8月4日まで5日間、いわき市で開催された「OECD東北スクール」を訪ね、参加している中高生や、その学びをサポートする大人たちに話を聞いた。

 

 

OECD1

約90人の中高生が参加したOECD東北スクール

 

 

中高生約100人が参加、2年後にパリでイベントを予定

 

OECD東北スクールは、東日本大震災からの復興を支援するOECD(経済協力開発機構・本部:パリ)が、震災後に立ち上げた。福島、宮城、岩手の被災3県と、東京、奈良の中高生、合わせて約100人が参加している。同機構の教育局と、我が国の文部科学省、福島大学をはじめとする地域の関係者の連携により、今年3月に第1回目のスクールがいわき市で開催された。

 

今回は第2回目の開催で、91人が参加。今後も春、夏を中心に東北各地でワークショップを重ね、2014年にフランス・パリで、東北および日本の魅力と創造的復興をアピールするイベント開催を予定している。

 

ワークショップでは、ジャーナリストで東京工業大学教授の池上彰氏をはじめ、企業のトップ、芸術家などがスピーカーやファシリテーターとなり、リーダーシップ、建設的な批判のできる思考力、協調性、交渉力などを伝授。参加者は、イベントの企画・実施に向けて話し合いや作業をつづける過程で、様々なことを学んでいく。

 

 

「元気です」という声を上げていきたい

 

 

フランス人ジャーナリストの話を聞く参加者

フランス人ジャーナリストの話を聞く参加者

 

 

サマースクール3日目、8月2日の午前中は、「情報を引き出す力」「インタビューする力」を学ぶ時間となった。まず、フランス人ジャーナリストのLucie Mei Dalby(ルーシー・メイ・ダルビー)さんから、取材などの話を聞く。

 

じっと耳を傾ける参加者の中に、漁港に近い福島県いわき市小名浜地区から参加した佐藤陸くん(磐城高校1年)の姿があった。

 

 

「元気を発信したい」と話す佐藤くん

「元気を発信したい」と話す佐藤くん

 

 

彼は昨年の震災後、中学校の生徒会の仲間とともに大漁旗を作った。彼らの中学校の体育館も避難所になり、自宅が無事だった佐藤くんは、「地域の人たちに何か応援のメッセージを届けることはできないか」と考えた。そして、地元で多くの漁師が働く地域性から、大漁旗をつくることを思いついた。

 

各クラスに声を掛け、みんなで完成させた大漁旗は、クラスの数と同じ22枚。それぞれの思いが込められた色鮮やかな応援フラッグを、地域で復旧・復興に取り組む海上保安庁や地元のコミュニティFM、給食センターなどに届けた。

 

佐藤くんは、その活動の中で、「被災地が支援を受けるだけではなく、自ら『元気です』と声を上げていくことの大切さを感じた」という。今回、東北スクールに参加したのも、被災地で自分たちがどう暮らしているか、いろいろなことに取り組んでいる様子を発信したいとの思いからだった。

 

パリに行く2014年には高3の受験生になる。「受験勉強と両立しつつ、学校の授業では体験できない出会いや交流の中から多くのこと学びたい」と話す。そして、そんな「自分たちの姿を、パリの人たちにもぜひ見て欲しい」と考えている。

 


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