「ふくしまインドアパーク」の活動について ―― 放射能の影響で外で遊べない福島の子どものために

東京のNPOが始めた、福島の屋内公園

 

2011年12月8日、福島県郡山市にて、放射能の影響で外で遊べない子どもたちのための屋内公園「ふくしまインドアパーク」がオープンしました。運営をしているのは東京に本部をおく、NPO法人フローレンス(代表理事:駒崎弘樹)です。フローレンスは、2005年から病児保育問題解決のための訪問型病児保育事業を行なっている団体です。病児保育事業だけでなく、2010年から待機児童問題解決のための小規模保育園事業を、2011年から孤育て(孤独な子育て)問題解決のための子育て支援施設の運営など、保育に関する様々な社会問題解決ための事業に携わっています。

 

ふくしまインドアパーク設立のきっかけは、代表理事の駒崎弘樹の妻の実家が福島県須賀川市にあり、実家の家屋が震災により大きく壊れ、避難してきた親戚を駒崎家に受け入れたところから始まります。親戚から震災の現状を聞くにつれ、須賀川市含めて、福島の子どもたちはどのように過ごしているのだろうか、そのことが駒崎の頭の片隅から離れなかったといいます。

 

そうした中、須賀川に住む子どもを持つ友人との話から、「放射能の影響で外で遊べない」「毎日家の中にいなくてはならず、子どもも親もストレスが溜まっている」「体を使っていないので、体力の低下が心配」と、子どもの遊べない実情を知りました。そして、これまで当たり前だった「外で体を使って遊ぶこと」ができなくなってしまった福島の状況にとても心を痛めました。遊びは子どもにとって、欠かすことのできない心の栄養であることを知っていたからです。

 

保育事業をしている者として何かできることはないか……フローレンスのスタッフとのディスカッションを重ねていく中で、フローレンスが東京都中央区で行なっている子育て支援施設「グロースリンク勝どき」にある屋内公園のノウハウを活用すれば、効率的かつ迅速に屋内公園を提供できるのではないかという結論となり、2011年7月にふくしまインドアパークプロジェクトが始まりました。

 

 

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課題を打開したきっかけはソーシャル・メディア

 

プロジェクトが始まり、最初に行ったのは、現地の親御様の屋内公園に対する考えを聞くことでした。東京から来たNPOが決まりきった構成の遊具を置いた公園を作ったとしても、利用者から「自分たちの公園」と愛着を持ってもらえません。郡山市・須賀川市にお住まいの数組の親子に集まってもらい、震災前は公園にどれくらいの頻度で行き、どんな遊具で、どれくらいの時間遊んでいたかや、屋内公園ができるとしたらどんなスペースや料金体系を望むかといったことを聞き、どんな遊具を配置するかを固めていきました。

 

一番難航したのが、物件探しでした。

屋内公園に適した物件があり、ここでインドアパークを作ろうと契約を進めようとしたところ、市の担当者から電話がかかってきました。

市担当者:「もしもし、×××市 ×××課のものですが、おたくが契約しようとしている物件は都市計画法により屋内公園では使用できません」

今給黎:「3月の震災から5ヶ月経った今、子どもが外で遊べません。遊べる場所をどうしても提供したいので、なんとかならないでしょうか?」

市担当者:「法律なので無理です」

今給黎:「市の屋内遊び場施設も震災で壊れて、子どもが遊べない状況だと思うのですが、市ではどのようにお考えなのでしょうか?」

市担当者:「それは、本件とは関係ない内容です。ともあれ、この物件は法律なので無理なことをご理解の上で別の場所を探して下さい」

今給黎:「……」

次に、不動産業者から某店舗の跡地が候補地として紹介されました。

不動産業者:「店舗の跡地なので駐車場完備で広さも充分です」

今給黎:「この物件は、国道沿いでアクセスしやすくていいですね。ここを検討したいのですが賃料はいくらでしょうか」

不動産業者:「月100万円で1年契約で更新時に家賃が上がります」

今給黎:「月100万円は予算的に払えないので、地主さんにこの事業の社会性についてご理解頂いて賃料を下げられるように交渉してもらえないでしょうか?」

不動産業者:「ここの地主さんは、どんな事業であっても値引きはしませんし、1年契約と更新時に家賃を上げるやり方は変えません」

今給黎:「地元の子どもが放射能の影響で遊べない状況を訴えてもだめでしょうか?」

不動産業者:「地元の子どもの状況と、資産の運用は関係がないとお考えの方です」

今給黎:「……」

このあとも、他の物件がないか複数の不動産業者に問い合わせしましたが、震災直後で物件数自体が少なかった上に、使用する前に大規模に改装しないといけなかったり、山間部でアクセスに難があったりと、なかなか見つかりませんでした。

そこで、屋外に倉庫用テントを作って、その中に遊具を置いてみようとも考え、現地の親御様に提案してみました。

今給黎:「なかなか適した屋内の物件が見つからない状況ですので、空き地にテントを立ててその中に、アンケート結果でご意見頂いた遊具を配置したいと思っていますが、いかがでしょうか?」

現地の親御様:「屋外にテントだと放射能値が外と変わらないと思います。そのような場所で開園されるなら、小さい子どもがいる私はいかないです。その案はやめたほうがいいですよ」

今給黎:「ご指摘ありがとうございました……」

 

と結局、テント案はボツとなりました。

 

こうした行き詰まった状況の中、急転したのはTwitterがきっかけでした。フローレンスの活動に共感してくださった坂之上 洋子さん(@sakanoue)が物件を探していることをTwitterで呟いたところ、西友の方から連絡があり、副社長をご紹介して下さいました。そこから、ザ・モール郡山店(合同会社西友様)からの空きテナント情報を頂くことができ、現在の場所に確定しました。

 

資金面では、ハタチ基金、東日本大震災復興支援財団、グラクソ・スミスクライン株式会社といった財団や企業から支援を受けることができ、人材面では、地元の保育士・幼稚園教諭の方の求人ご応募があったことで、2011年12月8日にオープンにこぎつけました。

 

 

どんな屋内公園であるべきか

 

郡山にはニコニコこども館、Pep Kids郡山といった自治体で運営している大規模な屋内公園が複数あります。また近隣のショッピングセンターの中にも子どもの遊び場があります。こうした屋内公園が多い郡山の環境で、どんなインドアパークにすればよいのか。フローレンスの考える安全・安心・楽しさを検討しました。

 

・安全:
ふくしまインドアパークは40坪の広さのため、体を使って遊ぶ屋内公園としては少し狭いです。そのため、よそ見をして走ってぶつかる、遊具から飛び降りてぶつかるといった、不意な衝突や転倒で大きなけがにつながるリスクが他の屋内公園よりも高くなります。それを軽減するために、床と壁にウレタンマットを敷設したり、什器の角に緩衝材を設置しました。また、子ども用のAEDをパークの中に準備することで緊急時に使用できるようにしています。

 

・安心:
保育士や幼稚園教諭の資格を持っていて、地元の保育園や幼稚園で勤務経験のある現地スタッフがパークリーダーとして常駐しています。このことで、非常時の対応(たとえば突然の嘔吐や怪我など)や育児上の相談などをすることができます。利用者からも「親以外に子どもを見てくれる専門スタッフがいてくれると安心」というお声を頂いています。

 

また、体を使って遊ぶ「Kidsスペース」、ままごとやプラレールをする「知育スペース」、赤ちゃん向け玩具のある「Babyスペース」と、目的別にスペースを区切ることによって、子ども同士の衝突を防いでいます。

 

・楽しさ:
どんな立派な遊具を置いても「飽きて」しまうことは避けられません。いつ来ても楽しい屋内公園を実現するために、定期的に入替えられる遊具を設置しています。たとえば、12月に設置したトランポリンを、1月に滑り台のエア遊具に変更したり、ミニカーをプラレールに変更したり、定期的に絵本を入替えたりしています。

 

 

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