変容し続ける「復興情報」をとらえ、災害の過去、現在、未来をつなぐ

東日本大震災からまもなく3年、そして阪神・淡路大震災から19年が経った。被災地はいまだ復興の途を歩み続けている。そんな中、日本災害復興学会は、災害後を生きるために「復興情報」という新たな概念を提唱し始めている。山積する復興の課題にいかに取り組んでいくか。われわれは災害から何を学び、語り継ぐことができるのか。共に弁護士である岡本正氏と津久井進氏が、防災情報や災害情報ではない「復興情報」について語った。(構成/金子昂)

 

 

『復興情報』の展開

 

津久井 今日は岡本正さんと、「復興情報」についてじっくり話をしたいと思います。

 

阪神・淡路大震災から数年後、関西を中心として日本災害復興学会が立ち上がりました。そして復興のあり方について見解をまとめ、仕組みついて提唱し、いろいろな提案をしてきたつもりです。しかし東日本大震災が起きて、様々な情報が、“届いていない”、“活かされていない”、むしろ“復興を後退させていることがある”という現象を目の当たりにして、阪神組の私としては、無力感を覚え、ときには罪悪感すら感じることもありました。

 

復興に関する情報は、次第に質が高くなってきています。しかし、「復興情報」という概念は、ありそうな言葉なのに、意外と聞いたことがありません。これからは「復興情報」という考え方をよりよいものとし、広く浸透させていく課題に取り組んでいかないといけません。そこで今日は、2013年10月12日に日本災害復興学会で開かれた、「『復興情報』の展開」という分科会を振り返り、「復興情報」の意味を考えたいと思っています。

 

岡本 分科会では、RCF復興支援チーム代表理事の藤沢烈さん、神戸新聞編集委員の磯辺康子さん、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員の開沼博さん、震災当時、岩手県庁法務学事課に所属されていた山本和広さんにパネリストとして参加いただきました。皆さんのお話から、「復興情報」とはどんなものなのか、なぜ必要なのかを改めて考えていきます。

 

 

2013.10.12_災害復興学会分科会_復興情報の展開_岡本まとめスライド(仮)0003

 

 

「あと一歩」を届けるコーディネーター

 

津久井 さっそく具体的な話に入りたいと思います。最初に、なぜ被災者の皆さんに情報が届かなかったのかを考えてみましょう。

 

私が2011年の4月に岩手県の避難所に法律相談に行ったとき、行政からの張り紙が、壁に隙間がなくなるほど貼ってありました。「神戸から弁護士が法律相談に来る」という張り紙もありました。しかし、避難所にいる人たちは誰も私たちが来ることを知らなかった。情報はなかったわけではありません。むしろあふれていた。それがなぜ被災者の皆さんに届かなかったのでしょうか。

 

岡本 津久井さんのご指摘の通り、避難所には無数の張り紙があり、入り口には支援情報の冊子が積み上がっていました。また政府、メディア、NPO、民間企業は、様々な情報をHPなどで発信していました。しかし被災地には情報の受け皿がなかったんですね。

 

物理的なインフラ被害が原因である場合もあれば、情報があまりにも多すぎて優先順位の取捨選択をする時間もなかったというのが、自治体の職員さんの本音だと思います。いままでに経験したことのないような災害の中で、平時とは比べ物にならない数、さらには普段は扱わない情報を振り分けないといけなかった。

 

そうした状況で、たとえば、被災地で無料相談を始めた弁護士は、災害直後の情報の整理という役割を果たしたと思います。ずっと寄り添っていられたわけではなく、避難所を訪問した一時ではあるものの、顔をあわせてその方の悩みを整理し、役に立つ情報のメニューを提示することができました。当初から情報伝達の困難性を克服しようという意識があったわけではなかったのですが、結果的に情報提供のコーディネーターとしての役割を果たせたと思います。

 

津久井 岡本さんはいま重要なことを2つ指摘されました。ひとつは「顔をあわせて」ということですね。やっぱり人と人が実際に触れ合い、向かい合う機会を設けないと情報は伝わらないということ。そしてもうひとつは、情報を発信するだけでなく、コーディネートする役目が必要だということ。そしてその重要な担い手として、行政ではなくボランティアをはじめとする民間セクターがあげられるということです。

 

パネリストのひとりであるRCF復興支援チーム代表の藤沢烈さんの発表の中で、「復興支援員」の存在が重要だというお話がありました。

 

岡本 国によってできた「復興支援員」という制度の人的なサポートをされるなかで、情報を伝える難しさを体感されてきた藤沢さんは、必要な人に必要な情報をどのように伝えるか、そしてその情報を地域に行き渡らせるようなコミュニティづくりに専念されています。国や大企業など、いわば縦からくる情報を整理し、しっかりと横、すなわち被災者一人ひとりに伝えていくことの重要性についてお話いただきました。

 

津久井 藤沢さんは、復興支援員の役目を語るなかで、「情報のラストワンマイル」というキーワードを提示されました。

 

たとえば、仮設住宅と借り上げ住宅の違いに目を向けると、どちらにも広報紙は届いているのに、仮設住宅の住人にはしっかり情報が伝わり、借り上げ住宅には伝わっていないという現象があります。仮設住宅では住人間で、区画整備や高台移転の議論など自分たちに関わる情報が口コミで広がっていく。一方、借り上げ住宅にはそうした口コミがないので、情報が詰まった広報紙が届いていても、その意味や価値に気付かない。その「あと一歩」をつなぐところに復興支援員の役目があるというお話です。

 

岡本 藤沢さんは、「防災情報」や「災害情報」よりも長いフェーズでの、まさに「復興情報」のお話をしてくださったと思います。

 

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シノドス国際社会動向研究所

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