「あちらを立てればこちらも立つ」――『ソーシャルインパクト』他

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『ソーシャルインパクト』(産学社)/玉村雅敏編著 横田浩一・上木原弘修・池本修悟著

 

社会的なことは儲からない――そう思っている人は多いだろう。企業活動によって、社会に好ましくない影響が出てしまう可能性があるからこそ、企業には社会的責任を求められる。企業活動と社会貢献は、トレードオフの関係としてこれまで語られてきた。

 

しかし、最近では、社会的課題から様々なビジネスチャンスが生まれている。しかも、NPOやベンチャー企業のみならず、大企業にまでその取り組みが広がりつつあるのだ。

 

今回紹介する『ソーシャルインパクト』は、ソーシャルなつながりを生かしながら、価値を共創し、ビジネスに生かしていく仕組みについて、豊富な事例と共に紹介している。

 

たとえば、ヤマト運輸では「プロジェクトG」と銘打ち、行政などとタイアップしながら地域の課題解決を行う。その中でも、高知県大豊町では、行政や地域の小売店などと連携して、高齢者を中心とした買い物支援と見守り支援に取り組んでいる。

 

ユーザーが電話やFAXで小売店に注文すると、それをヤマト運輸が配送し、配達時に高齢者の様子に不安があれば、行政に通達する仕組みだ。同一の配達センター内で荷動きが完結しているため、多くの手間をかけることがない。なので、非常に安価な配達料で提供できる点が特徴だ。

 

この支援がはじまる前まで、住民は一番近い店舗まで車で30分かかり、気軽には買い物が出来ない環境であった。この取り組みは顧客からの反応も良く、地域に根差しつつある。

 

自分たちの持つ運送業の特性を活用しながら、地域の課題解決に取り組み、さらにはビジネスとして成り立たせている。企業活動と社会貢献をうまく両立させていることがよくわかる。

 

他にも、日本マイクロソフトの「東日本大震災被災地支援」、王子ネピア「nepia千のトイレプロジェクト」、フェリシモ「フェリシモ猫部」、アールプロジェクト「遊休施設の市場創造」など興味深い事例が豊富に掲載されている。企業活動と社会貢献が両立する最先端の取り組みを、ぜひ確認して欲しい。(評者・山本菜々子)

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.268 

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