イスラエルのガザ攻撃を海外メディア・専門家はどう見たか

イスラエルが7月8日(火)に軍事作戦を開始して以来、パレスチナ自治区ガザでイスラム武装組織ハマスとの激しい戦闘が続いていたが、イスラエル軍は8月5日(火)、ハマスとの合意した約束に従ってガザ地区から完全撤退すると発表した。

 

ただし、イスラエル軍のピーター・ラーナー報道官は、三日間の停戦開始と同時に部隊をガザ地区の外で防御的に配置すると述べており、事態がはまだ流動的な状況にあることを示唆していた。そして、実際72時間の停戦期限が切れた8日(金)、ガザ側から発射されたロケット弾への報復としてイスラエル軍が空爆を再開し、戦闘が再開された。

 

事態がここに至るまでの過程で、7月24日(木)にイスラエル軍が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営しているガザ北部ベイトハヌーンの小学校を砲撃し、子供を含む避難民に200人以上の死傷者が出るという惨劇が起こった。さらに、7月30日(水)にはまたもガザ北部のジャバリア難民キャンプでUNRWAが運営する学校が攻撃を受けている。

 

本稿では、イスラエルのガザへの軍事侵攻について、米国、ドイツ、英国、中国のメディアや専門家の立場から見た報道および情勢分析に注目したい。

 

 

米国の非営利調査報道メディア「Mother Jones」の報道

 

イスラエル軍によって、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の運営するガザ北部ベイトハヌーンの小学校が攻撃される前日の7月23日(水)に、調査報道を行っている米国の非営利メディア「Mother Jones」が米国政府の対イスラエル・パレスチナ政策について興味深いことを報道している。その内容を以下にまとめてみたい。

 

7月21日(月)、パレスチナ自治区ガザに対して、イスラエル軍によって、軍用機から182発のミサイル、艦船から146発の砲弾、戦車から721発の砲撃が行われた。この攻撃で、66の建物が破壊され、107人のパレスチナ人(そのうち子供は35人)が死亡した。これに対して、イスラム武装組織ハマスもイスラエルに101発のロケット砲を発射し、イスラエル兵に13人の死者が出ている。

 

 

イスラエルへの軍事支援とパレスチナの人道支援を同時に行う米国の矛盾

 

イスラエルとハマスの双方による攻撃が行われたこの日、米国務省は「ガザの人道状況の改善を支援するために」4,700万ドルの財政支援を行うと発表した。そのうちの3分の1は、戦争に苦しむガザの何万人ものパレスチナ人に食料、水、避難所を提供している国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動支援金として使われる。

 

ところが、税金を払っている米国民は矛盾した立場に置かれている。というのも、米国民はイスラエル軍の活動支援とパレスチナの人道状況改善の両方に対して税金を払っていることになるからだ。米国は毎年イスラエルに対して、約31億ドルの軍事支援を行っており、これは1978年当時のカーター大統領の仲介によってイスラエルとエジプトの間で結ばれたキャンプ・デービッド合意に基づいて米国が負っている義務によるものだ。

 

軍事支援金は大きく二つの用途に分かれている。約8億ドルはイスラエル軍の兵器と軍需品の製造に使われ、残りの23億ドルは、イスラエル軍が米国の軍需企業から武器と装備品を調達するために使う商品券のようなものだ。ある米国のイスラエル支援専門家は、「イスラエル国防軍の全ての部隊(ガザ攻撃を行っている部隊を含めて)が米国の支援によるメリットを享受していると考えていい」と語っている。そのため、イスラエルのガザ攻撃による破壊には「米国製」という刻印が入っていると考えることができる。

 

しかし、その一方で、米国政府はイスラエルの攻撃によるおぞましい結果に対処するための活動に対しても財政支援を行っている。UNWRAが21日に発表した活動状況報告書によると、同機関は67の避難所を管理し、そこで84,000人以上のパレスチナ人を保護しているという。UNWRAは避難所に、食糧、水、赤ん坊の衛生管理用品、毛布、マットレスを提供し、21の診療所も運営している。子供たちに不発弾を触らないよう指導する教育も行っている。

 

UNRWAの話では、ガザの75の施設が戦闘によって物理的な被害を受けているという。UNRWAが要請した6,000万ドルの緊急支援金の4分の1に当たる1,500万ドルが米国によって拠出され、その中から一部が米国の財政支援を受けているイスラエル軍の攻撃によって破壊されたUNRWAの施設の修復や再建に使われるものと考えられる。

 

米国の新たな支援プログラムにはNGOに対する350万ドルの財政支援が含まれている。国務省の説明によると、この支援金は、パレスチナ難民への食料以外の物資の提供、ガザのパレスチナ人3,000人を対象とした短期雇用プログラムおよび2,000世帯を対象とした社会心理学的支援プログラムの延長、医療施設への医薬品と燃料の提供に使われるという。

 

さらに、国務省の話では、米国はUNRWAに対する最大の資金援助国であり、今年に入ってからガザや他の中東地域のパレスチナ難民支援のためにUNRWAに2億6,500万ドル以上を拠出しているという。この中には、ザガの新しい学校や配給所の建設に使われる900万ドルが含まれている。

 

以上が「Mother Jones」の記事のまとめだ。

 

なお、米国のイスラエルに対する軍事支援に関連して、ドイツ誌『シュピーゲル』が8月3日付掲載記事で、8月1日に米国議会でイスラエルのミサイル防衛システム「アイアンドーム」に2億2,500万ドルもの巨額の財政支援を行う法案が可決されたことを報じていることを、ここに付記しておきたい。

 

 

CIAの中東専門家アンドリュー・リープマン氏のインタビュー

 

ここで米国の軍事シンクタンクであるランド研究所のサイトに7月22日付で掲載された記事をご紹介したいと思う。このサイトには、米国中央情報局(CIA)の職員として30年以上中東問題に関わってきたアンドリュー・リープマン氏のインタビューが掲載されているので、米国の中東政策をよく知る専門家の見方に注目してみたい。

 

このインタビューは、イスラエル軍がガザ地区から完全撤退すると発表した8月5日(火)の二週間前に公表されたものであるが、直近の情勢変化の中でのイスラエルとハマスを含めた関係当事者の状況を考え合わせながら今後の展開を考える上での一つの判断材料としてご紹介しておきたいと思う。

 

 

Q:イスラエルとハマスの交渉を仲介できる国はアラブ世界にあるか?

 

リープマン氏「ムスリム同胞団の幹部であるムハンマド・モルシ前大統領が政権を握っていた時のエジプトはハマスの信頼を得ており、考え方もハマスと近かったため、ある程度の影響力を持っていた。しかし、この関係はハマス側の一方的なものであり、イスラエルはモルシ氏と関係を築くための時間が足りなかった。そのためエジプトの実質的な影響力が足りず、イスラエルとの距離感も限られていた。現在の軍事政権はハマスに対する影響力は前政権よりも弱いが、それでもイスラエルとパレスチナの仲介役として中東で最も重要な国だと私は考えている」

 

 

Q:仲介役としてトルコはどうか?

 

リープマン氏「トルコは、以前はイスラエルと緊密な同盟関係にあったため、アラブ諸国に対する信用を失くしていた。ただ、この関係が過去数年の間に変わってきていることは確かだ。南にシリアとイラク、北にクリミアを抱えているトルコとしては、解決できそうもない紛争にはたして時間をかける余裕があるのだろうかという疑問がある。また、トルコとイスラエルの関係は非常に疎遠になってしまった。そのため、トルコは公平な仲介役としての立場が相対的に弱くなり、また仲介役になろうとする関心も薄れている。そういう中で、米国はイスラエルとパレスチナの両者を一旦引き離し、その後で仲介役として再度引き合わせることができる唯一の国だ」

 

 

Q:パレスチナ問題は本当に「解決不可能」なのか? 五十年後もパレスチナ人とイスラエル人は戦争を続けているのか?

 

リープマン氏「それがわかればいいのだが。悲観的な見方をすると前途多難で、課題が山積している。問題解決に向けたこれまでの交渉は失敗に終わっており、少なくとも中断している。しかし、問題解決まであともう少しというところまで行ったこともある。過去に問題解決に最も近づいたのは2000年のクリントン政権末期だった。当時、イスラエルの和平推進派のエフード・バラク首相が和平に向けた譲歩案を提示し、それは永久的な解決の少なくとも基礎になるものと思われた。しかし、パレスチナ解放機構(PLO)のヤセル・アラファト議長は一切妥協を見せなかった。それがきっかけで第二次インティファーダ(イスラエルの占領に対するパレスチナ人の抵抗運動)が始まり、イスラエルとパレスチナの離反はさらに進み、対立は深まった。その結果が今日の状況につながっている。

 

しかし、複雑な状況の中でもパレスチナ自治政府の存在を忘れてはならない。事態の進展は遅々としたものだが、パレスチナ人が一定の独立を手にしているという事実は、飛行機がハイジャックされたり爆撃されたりしていた時代とは状況が違っていることを表している。事態に前進は見られるが、1993年9月のオスロ合意から二十年以上が経過した今でも、最も難しい問題が残っている」

 

以上がアンドリュー・リープマン氏のインタビューのまとめだ。

 

 

 

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○シン・編集後記(山本ぽてと)