もしインターネット、英語、ソーシャルメディアがなければ、AMP MUSICは始められなかった

アフリカのインディーズミュージシャン、特にスラムや貧困エリアに住むミュージシャンの音楽を、インターネットを通じて世界中の音楽ファンに届けようというAMP MUSIC(アンプ・ミュージック)のビジネスは、次の3つの存在が前提となっている。インターネット、英語、ソーシャルメディア、だ。(参考)第一回掲載記事「AMP MUSIC、アフリカのインディーズ音楽を世界で販売するという挑戦」(2011月11年29日)

 

iTunesをはじめとする音楽販売プラットフォームと、YouTube、Facebook、SoundCloudといったウェブ上のプロモーションツールがなければ、資本のない私たちが世界規模で音楽を販売し、ミュージシャンたちを世界デビューさせることはできなかった。津々浦々の小売に商品を届け、在庫を抱え、それを複数国で行うようなことができるのは資金力がある企業に限定される。

そして販売面だけでなく、アフリカ(ナイロビ)の通信環境がこれほど進んでいて、スラムのミュージシャンたちが英語とソーシャルメディアをこれほど使いこなしていなければ、少なくとも今のような効率性をもってアルバムを制作し事業を行うことは難しかっただろう。

 

 

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「Koch music compilation LIFE」

ケニアのインターネット事情

ケニアのインターネット普及率(アクセス率)は25.9%(*1)、これは最近BRICSの仲間入りをした南アフリカより高い。接続は主にモバイルから(携帯端末かUSBタイプの通信モジュール)。都市部ではインターネットカフェも多く、スラムでもgmailかyahooの無料アドレスを持っている人はたくさんいる。

 

(*1)IDC, Kenya ICT Board Monitoring and Evaluation Survey Results 2011

 

首都ナイロビの街中では、感覚的には東京並みかそれ以上のスムースさでネットに接続できる。3Gのカバレッジ率はまだ低いものの、携帯キャリアのシェア上位3社ともすでに3Gサービスを展開している。AMP MUSICが、音源データやプロモーション写真のような重いデータさえもケニアと日本の間でやりとりできるのは、このおかげだ。

携帯電話はこの5年ですっかり普及した。2006年に20%だった普及率は、2010年には6割を超えた(*2)。彼らにとって携帯は、固定電話やPCから買い替えるものではない。はじめから携帯なのだ。レガシーがなく競合商品がないので、コミュニケーションや情報享受という人間の基本ニーズを満たす役割を、携帯が一手に引き受けている。テレビや銀行口座の役割さえも果たしている。彼らの環境にあった商品がやっと現れたのだ。

 

(*2) ITU, World Telecommunication/ICT Indicators Database 2011

 

たとえばケニア発のモバイルバンキングサービスであるM-Pesa(エムペサ)。携帯端末から仮想マネーを用いて送金、預金、支払いなどができる。M-Pesa登場以前、都市に出稼ぎにでた人が故郷の農村に仕送りするためには、高い交通費をかけて手持ちするか、バスの運転手に預ける(!)しかなかった。今では相手の番号と金額を入力してSMSで送ればすぐに送金できてしまうのだ。お金の盗難も防げる。M-Pesaユーザは現在ケニアで1,380万人、これは18歳以上人口の7割に該当する(*3)。これが、彼らの環境にあった金融インフラだったのだ。

 

(*3) Safaricom, FY2011 Results Announcement

 

AMP MUSICも、ミュージシャンたちに売上を送金するのに一部M-Pesaを使っている。彼らは仕事を求めて移動することが多い。M-Pesaがなければ、銀行口座を持たない彼らに滞りなく売上を渡し続けるのは難しかっただろう。(参考)M-Pesaについてはこちらもご参照ください。

 

 

「M-Pesaの送信画面」

「M-Pesaの送信画面」

 

 

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