わたしたちの自由はどうやって守られているのだろう ―― 繊細な憲法を壊さないために

大好評「高校生のための教養入門」シリーズ。第七回目にご登場いただくのは憲法学者の木村草太先生です。一票の格差問題や憲法96条の改正など、ここのところ頻繁に話題にあがるようになった憲法。いまこそ、改めて憲法がなぜ必要なのか、どんな法律なのかを考えるタイミングなのかもしれません。憲法ってなに? 憲法学ってなにを研究するの? 木村先生にお話をうかがってきました。(聞き手・構成/金子昂)

 

 

憲法ってなに?

 

―― 木村先生のご専門である憲法学はどんな学問なんでしょうか?

 

憲法学は国家のルールを研究する学問です。

 

憲法という言葉は、1)国家を成り立たせている国民の頭のなかにあるルールという意味と、2)それを明文化した文書という二つの意味があり、専門的には、1)頭の中のルールの方を「憲法」、2)文書の方を「憲法典」と呼んで区別します。多くの人がイメージする憲法は、後者の「憲法典」の方でしょう。

 

憲法と憲法典にはズレがあるのが普通です。たとえば、大学の教室で「飲食禁止」と張り紙がしてあっても、先生や学生が「飲み物くらいは許される」と考えている場合は多いでしょう。ここでは、実際に適用されているルール(食べ物禁止)と、文書(飲食禁止)の間にズレがあるわけですね。

 

憲法典の場合も同様で、憲法の内容が、憲法典に書きつくされていなかったり、憲法典の文言からは少し違和感のあるルールが適用されていたり、というケースはよくあります。

 

 

―― 憲法ってどうして必要なんですか?

 

近代国家とは、領域内の権力を独占する国家です。もし国家が権力を濫用して、無理やり個人の自由に介入してしまったら、国家の正統性は失われてしまうでしょう。

 

 

―― すいません、「正統性」ってよく耳にしますが、いったいどういう意味なんでしょうか……?

 

「統治の正統性」とは、国民にとってそれが正統な統治として受容される性質のこと、簡単に言えば、国家がすることに納得して従おうと思える性質のことです。

 

国家にとって、正統性の確保は重要な問題です。現代の世界では、どの国家の国民になるかを自分で選ぶことは、原則としてできません。両親の国籍や産まれた場所によって、強制的に国家に加入させられ、その国家のルールに従わせられるわけです。そうなると、どうして国家への強制加入が許されるのか、どうしてその国のルールを押し付けることが許されるのか、ということが当然問題になるでしょう。

 

この問題への憲法学の答えは、国家が国民から集めた資源を公共の利益のために使うこと、また、国家が国民の人権や自由・平等を尊重することを約束するから、というものです。国家がこうした約束を守ることによって、国家が権力を独占し、国民を強制的に加入させ、ルールに従わせる正統性が確保できるわけです。

 

そして、いまお話ししたような公共の利益の追求や人権尊重を憲法典に書き込んで、国家の正統性を確保しようとする構想を立憲主義と言います。この構想を前提にした憲法典には、権力分立や人権保障が明記されています。

 

 

kimurasensei

 

 

 

 

 

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