2013.08.19
湖の、ひとつひとつが小宇宙――南極の湖で生きる植物たち
2013年8月6日に出版された『すてきな 地球の果て』(ポプラ社)。世界中を旅し、南極・北極に魅せられた研究者・田邊優貴子さんによる本書は、普段私たちが暮らしている世界とはまったく違う世界が描かれている。そこで今回の「高校生のための教養入門」では、植物生理生態学と陸水学を研究されている田邊先生が、なぜ南極に魅かれたのか、そしてどんな研究をされているのかをお伺いしました。ぜひ『すてきな 地球の果て』とあわせてお読みください!(聞き手・構成/金子昂)
海以外の水のある環境を研究する
―― 最初に田邊先生のご専門についてお話をお聞かせください。
私の専門は、大きくわけて植物生理生態学と陸水学のふたつあります。
植物生理生態学ですが、一口に植物を研究するといってもいろいろな切り口での研究があります。例えば植物生理学は植物学の一分野なんですが、植物の生理機能(植物の内部でどんなことが起きているのか)を調べる分野です。光合成や呼吸はどのようなシステムで行われているのかとか、タンパク質はどんな構造になっているのかとか、環境によってストレスを受けている植物の内部では、なにが破壊され、それがどのように修復されているのかなどといった研究をします。
また植物生態学の場合は、この植物はどういうところに分布していて、どういう環境で生きているのか、進化してきたのか、植物が生きている場所と生き方、つまり、植物と環境の相互作用を調べる学問です。
植物生理生態学は、生理学と生態学が融合したような分野で、ある環境のもとでの植物の生き方に加えて、そのとき植物の内部ではどのようなことが起きているのかの両方の側面から、全体的に調べる分野になっています。
生物の中でも、動物を研究する人たちはその動き(行動)に注目することが多いのですが、植物は生育場所から動けないので、その場の環境にうまく応答したり適応して進化してきたわけです。だからこうやって環境へ応答するメカニズム(生理)とその意義(生態)を明らかにすることが重要なんです。
もうひとつの陸水学は、湖やダム、湿地、川、地下水などのような、海を除いた陸上に存在する水のある環境を研究する学問です。その中で、例えば水そのものの物理的な動きを研究する人がいたり、水の化学的な成分を研究する人がいたり、私のように生物や生態系を研究したり、それらを応用してどのようにダムを建造すべきかといった土木的な研究をされている人もいます。いろいろな研究を包括的に扱うのが陸水学という分野なんですね。
―― なぜこの分野をご専門にされたのでしょうか?
私は大学生のときに世界中を旅していたのですが、その中で何度か尋ねたアラスカで、大自然の風景や植物の急激な移り変わりに心を奪われ、北極をフィールドにして植物を研究したいと思ったんです。でも北極って結構いろんなことがもう研究されているんです。
でも南極はまだまだ手つかずなところがあって。「だったら北極ではなくて、南極の湖の植物を研究しよう!」と思ったんです。
―― そもそもどうして北極の植物を研究したいと思ったんですか?
『すてきな 地球の果て』にも書いていますが、小さいころに、極北を取りあげている自然ドキュメンタリー番組をみて、「すごい世界がある!」と驚いてから、ずっと極北の地に行ってみたいと思っていました。
小学生、中学生のときは、星も好きだったので、天文学者になるのが夢でした。それが高校生になってから「もしかしたら私は、宇宙のことよりも地球の自然のほうが好きなんじゃないかな」と思い始めます。そして、まだはっきりと夢がわかっていないまま大学の工学部に入りました。
そして世界中を旅しているうちに、「私は自然科学の、しかも植物や生物が好きなんだ」とわかったんです。そして大学院の博士課程から植物生理生態の研究を始めました。
「なんだろう?」から始まる理学部、社会に役立つための工学部
―― 田邊先生は世界中を旅されていますが、大学にはちゃんと通っていたんですか?
まじめには通っていませんでした(笑)。講義そっちのけで、ひたすらバイトでお金を貯めて、世界を旅していました。
というのも私は工学部に入ったのですが、いま思うと理学部を選ぶべきだったんです。
理学部と工学部って、よく理学部は基礎的なことを、工学部はそれを応用した研究をしていると考えられがちですが、これは完全に間違っていて。工学部と理学部は同じ科学の法則を使って研究をしているのですが、思想がまったく違うんです。
理学部の場合、純粋な知的好奇心、「これってなんでだろう?」という疑問を糧に、一見何のために役立つのかわからないようなことを研究する、どちらかというと芸術や哲学に近い学問だと思います。一方の工学部は、社会に役立つためのものづくりを行うという目的をもって研究を進める学問なんです。私は自然現象の中で疑問に思うことが多く、そしてそれを明らかにしたくてうずうずするタイプなので、例えば「エネルギー問題を解決するために、こういうモノを作ろう」といわれても全然興味が持てなくて(笑)。
だから振り返ると、初めから理学部に行っておけばよかったなあって思います。
生きることを考えるために旅をする
―― 大学在学中にはどんなところを旅したんですか?
初めての海外は小さいころに家族でハワイに行ったときですが、そのときは特に衝撃を受けませんでした(笑)。そんなわけで、私の心の中の初めての海外は、高校時代からの親友に「インカ帝国を見に行こう」と誘われていったペルーとボリビアです。
―― 『すてきな 地球の果て』には、ペルーの標高3800mに位置するチチカカ湖でみた星空について書かれていましたね。
チチカカ湖に浮かぶ島で、丘の向こうで催されているお祭りを見に行こうと屋外にでたら、満点の星空に包まれて。そのまま別の星に飛び立って行けそうな感覚に陥りました。そのままお祭りに行くのをやめて、親友と二人ずっと星空を眺めていました。
ヨーロッパやアメリカのような文明都市では味わえない、古代のロマンとか大自然といったものに触れることで、生きることを考えるために私は旅をしているところがありました。それはペルーの星空をみて、私が大自然に心を動かされる人間だということに気がついたからです。
ペルーに行った翌年は、タイ、ラオス、ミャンマーに、その年の冬にはカナダのロッキー山脈に行っています。さらにその翌年にはアフリカに行ったり、北極圏に行ったり(笑)。とにかくいろいろな場所を旅しました。
―― 一体なにがそこまで田邊先生をひきつけるのでしょうか?
私が普段生活をしている、人間が息づく社会とはまったく違う世界が広がっていることだと思います。
文明とかけ離れた世界にも、同じ時間が流れていて、普段の生活とはまったく関係ないところで、いろいろな生き物が私たちの時間と並行して生きていることに感動したんです。
昔の探検家は、きっと国の領土を拡大するためとか、航路を開発するために探検・冒険をしていた人が多かったと思います。でも100年前にイギリスのある有名な探検家が、探検をすることは知的好奇心や知的情熱を肉体で表現することだと言っていました。
私は、研究のために定期的に南極や北極に行くようになりました。南極や北極のようなあまり人がいないところ、誰も見たことのない世界で、フィールドワークや研究をして誰も知らないさまざまな現象を解明することは探検的要素を持っていると思ってます。
大学生の頃は、授業がつまらなかったことも世界を旅する理由のひとつでした。でもいまは試行錯誤しながらも地道に自然の中に潜む疑問を研究して、学術的な発見をし、それを公表することにこの上ない面白さを感じるようになっています。
好きなもの:湖沼全般
―― 大自然の中でも、とくに湖を選ばれた理由はあるのでしょうか?
もともとカヤックが好きだったり、水辺の風景は大好きでした。でも自分が湖を研究するようになるとは思っていませんでした
湖を研究することに決めたのは、南極の湖を研究されている先生にお話を聞きに行ったことがきっかけです。その先生は、湖の神秘性や湖を研究することの面白さ、なぜ海じゃ駄目なのかをお話してくれたんですね。
湖って世界中と繋がっている海と違って、なにもない閉鎖的な環境から始まって、それぞれの湖が独自の生態系を築きます。その限られた空間に生まれる生態系を考えることの面白さは、まるで宇宙ができて、たくさんの星が生まれた中で、地球という一つの惑星に生態系が形成されたことや、その中での生物の進化の過程を研究する面白さに繋がるものがあると思うんですね。だから湖って、ひとつひとつが小宇宙みたいなものなんです。先生がこれに近いような話をしてくれて、「それだ!」と湖を研究することにしたんです(笑)。
―― ちなみに湖と池ってなにか違いがあるんですか?
湖と池と沼には学術的な定義がありますが、私たちが普段目にする「なんとか池」って名前はこの定義に関係なくつけられていて、実際には湖であることもよくあります。
湖は一番深いところに植物が生えていないもので、沼は一番深いところまで植物が生えているものと、学術的には定義されています。あと池の場合は、人工的につくられたものになります。
―― 池や沼には興味がないのでしょうか?
私は湖沼全般ならなんでも大好きです(笑)。
湖ごとに生態系が違っている
―― 南極では、どういった方法で調査や研究をされているんですか?
南極の湖の調査に限ってお話をすると、まずゴムボートをかついで調査地まで向かい、湖にボートを浮かべて、水質の測定をしたり、水や湖底に生えている植物を採取しています。
水質を測定するときは、水温や酸性・アルカリ性、塩分濃度などを測定するセンサーが8つくらいついた円筒状の機械をボート上からゆっくりおろして、水深ごとの水質を調べます。
また水を採取するときには、ラムネの瓶を思い浮かべてもらうとわかりやすいと思うのですが、採取したい水深までおろしてピタッと止めると、ビー玉のようなものが蓋をしてその水深の水を採取してくれるような道具を使っています。
湖底の植物を採取するときは、南極の湖は透き通っていてボート上からも湖底がのぞけるので、UFOキャッチャーのような道具を湖底まで降ろしてつかみ取っています。
―― 『すてきな 地球の果て』では湖の中に潜って調査した経験についても書かれていました。
はい、エアタンクを担いで潜水することもあります。水温は夏で2度くらい。潜った瞬間は頭がギンッとなりますが、すぐに寒さは忘れます。でも30分くらいで寒くなってきて、潜水調査を終えて陸に上がると、身体は冷え切ってガチガチになっています。同時に、髪の毛も凍りついていきます(笑)。
ボートの上からでは、湖の中がどうなっているのか見えないので、湖に潜るのはわくわくしてとても面白いです。ボートの上からでは想像できないような、まったく違う世界がそこには広がっているんです。
―― 測定や採取したあとはなにをされているんですか?
採取した植物や水は、まず現場で、例えば光に対してどのような応答をするかを調べたり、もとあった環境とは違う条件下で浮かべて現場実験してみたり、あるいは培養するといった室内実験を行います。
その後、日本にサンプルを持ち帰って、水の中に含まれている栄養や植物の成分について分析をします。例えば、炭素や窒素はどのくらい含まれているのか。海や空などどこから由来する栄養を使っているのか、植物の内部ではどのような現象が起きているのかといった分析などです。
あと湖底に堆積した植物を円柱状の機材で採取するんです。それを分析すると数万年前にできた湖の生態系が、現在までにどのような変化を経てきたのか、植生はどう変わってきたのかもわかります。
―― 普段ぼくたちが見ている植物と南極の植物に特徴的な違いってあるんですか?
南極の湖底にいる植物と日本の近縁種には、温度に対する耐性に違いがみられます。南極の植物の場合、だいたい10度くらいの温度下でもっとも成長するのですが、日本の植物の場合は、25度くらいが好き。10度ではほとんど光合成ができなくて、成長しません。これは内部で働いている酵素の機能が違っているんです。あと植物ではありませんが、南極の菌類の一部は低温状態でも動けるように不凍タンパク質を内部で作っているという特徴があります。
そもそも南極って、数万年前の最後の氷河期には大陸全体が氷で覆われていました。氷におおわれる過程では、徐々に氷が侵食して陸地が削られていくので、生えていた植物も他の生物もダンプカーのようにガガガッと削られてしまい、生物はほぼなにもいない状態になりました。
そんなわけで、いま南極に生えている植物は、最後の氷河期が終わったあとに例えば南米といった他の土地から飛んで来たものだと言われています。
ガラパゴス諸島に棲んでいるダーウィンフィンチという鳥は、島によって少しずつ違う生態系に適応・進化してクチバシの形が少しずつ違っていることで有名ですが、南極の湖もそれぞれに環境が違っているので、同じ時期にできた湖でも、生態系は独自のものになっているんです。最後の氷河期のあとに外からやって来た生物は、それまで生きていた環境からまったく違う環境にきて、しかもそれが南極のような極限環境であったために、進化に強い選択圧がかかってきていると考えられています。
南極の湖底に生える植物はサングラスをかけている?
―― 田邊先生は具体的にどういった研究をされているのでしょうか?
まず一つ目に、南極の湖の栄養起源を追っています。
南極の湖って、とても栄養が少ないのに、湖底一面に植物が生えているんです。普通の植物は水に溶けているアンモニアや硝酸やリンなどを吸収しないと成長できないのに、栄養の少ない湖で南極の植物はいったいどこからどうやって栄養を吸収して成長しているんだろうって気になって。
シアノバクテリアといって、約30億年前に、地球上で最初に酸素を発生させる光合成をはじめた生き物とほぼ同じ細菌があります。このシアノバクテリアは、空中にある窒素ガスを直接取り込んで栄養にできるすごい生き物なんです。
普通、私たち人間は窒素ガスを空気中から取り込んで栄養源にすることはできませんよね。食べ物から窒素の化合物を取り入れていますし、それは植物も同様で、水に溶けている窒素化合物を吸収しています。しかしシアノバクテリアは空中から直接取り込むことができるため、南極のような厳しい環境で、しかも、まだ栄養も生物もなにもいなかった状態でも生きることができたと言われています。そして、たくさんの窒素源を取り込み、湖底にたくさんの栄養を蓄積していったんです。南極の湖の水中には栄養はとても少ないですが、今では湖底の内部に大量の栄養があって、それは、例えば日本の富栄養湖(窒素やリンといった栄養濃度が高い湖)である宍道湖の湖底内部よりもなんと高い濃度だったんです。
おかげで南極の湖底も、他の藻類やコケが生きられるような環境に変わってきたんだ、という研究を最近はしています。
南極の湖にも栄養があることはわかったので、次に、他にはどういった要素で南極の植物が成長しているのかも調べてみました。
普通の植物って光からエネルギーをたくさん手に入れるために光に向かって成長していきますよね。でも南極の場合、水が透明なので、光と紫外線が水中にバンバン入ってしまって、むしろ悪影響を及ぼしていることがわかりました。それじゃあどうして湖底の植物はちゃんと成長できているのか調べてみたところ、強い光や紫外線を防御する物質を表面にたくさん作って、サングラスみたいにカットしていることがわかったんです。
ボートの上から湖底に生えている植物をみると緑色に見えますが、採取したものを陸の上で見ると、表面がオレンジ色に日焼けしています。この部分が上手に有害な光をプロテクトして、その下で頑張って光合成しているんですね。
陸水学・植物生理生態学は水辺好きの天国
―― 田邊先生が野外調査や研究をしていて面白いと感じる瞬間はどんなときですか?
現場で新しいことを発見したときです。
例えば、南極の湖には植物プランクトンはほとんどいない、さらに動物プランクトンはまったくいないと考えられていたのですが、ある湖でサンプルをとったところ、湖底の堆積物の近くで動物プランクトンが泳いでいるのを発見したんです。普段動く生き物がいない世界ですから「なんだこれ!? 動物プランクトンがいる湖もあるんだ!」って大興奮しました。
あとは初めて湖に潜ったときの興奮は忘れられません。
それから、とても地道で時間はかかりますが、帰国してデータや試料の解析をしていく過程で、誰も知らないことを発見したときの興奮もすごいです。
―― 反対につらいときってありますか?
野外調査でつらいと思うことはあまりありません。でも、今年の二月にウガンダのルウェンゾリ山地というところで調査したとき、高山病みたいになったのはちょっとつらかったですね。
それから調査や実験で得られたデータ解析や試料分析をして、論文を書いたり、学会で発表したりといった研究成果の発表をしていくわけですが、なかなか思った通りに進まないことが多くて、それが続くととてもつらいです(笑)。
―― 最後に高校生にむけてメッセージをお願いします。
私は自分自身、研究をする分野を植物生理生態学や陸水学に限らなくていいと思っています。ただ、植物を見ることや育てること、自然の中を歩き回ることが好きな人は、植物を実際に生えている野外で研究することができるこの分野を研究することは楽しいと思います。あと自然の中でも、とくに湖や川のような水辺の環境や風景が好きな人は、きっとこうやってフィールドに出て仕事をすることが天国のように感じるんじゃないかなと思うんです。
研究をしていると、現場で得たものを解析したり、ストーリー展開を考えたりするときに行き詰まってつらいと思うこともあります。でも野外でのフィールドワークが好きで、目の前で起きていることに対して「なぜだろう?」って気持ちを抑えられない人は、陸水学や植物生理生態学の視点で研究することで、たくさんのワクワクと疑問を感じて、どうすればそれを明らかにできるかを自分なりに考えて、実際に解明していくという過程の面白さを体得して欲しいと思います。そうすればこの分野や学問に限らず、自分の生きる世界で起きているものごとを深く見ることができるようになりますよ。
―― ちなみに、次の調査はもう決まっているんでしょうか?
来年の夏は北極、日本の冬、といっても南半球の夏に南極に行く予定です。
(2013年8月13日 東京にて)
陸水学・植物生理生態学がわかる! 高校生のための3冊
陸水学と植物生理生態学には限ったわけではありませんが、陸水学・生物学・フィールド自然科学への入門になる本です。
湖にまつわる大小さまざまな疑問を通して、湖の保全を訴えるとともに、身近にありながら実はなかなか知らない湖の中で起きている現象や生き物のことが書かれています。湖の中にはどんな生き物が棲んでいるのか、湖の色はどうやって決まるのか、環境悪化した湖をどうやったら元の美しい姿へ戻せるのか。専門的で難しくなりがちな陸水学・生態学的な内容をとてもやさしく解説しています。
動物行動学者であり、生き物に関する数多くのエッセイを世に残した日高敏隆さんの本の一つ。日高さんの本はどれも分かりやすく面白く、驚きに満ちた生き物の世界を教えてくれます。その中でもこの本は、生前の日高さんの講義をテープ起こしして作られたせいか、まるで教室で生き生きとした講義を受けているような気分になります。人間とは一体何かという疑問に迫るために、生物学を体系的かつユニークに語っています。
今から100年以上も昔、1890代に北極点到達を目指したノルウェー人のナンセンの探検の記録。当時30代半ばであったナンセンはそれまでの北極海の海流の研究結果から、北極海の氷に乗って漂流すれば北極点へ近づけると言う仮説を立てました。それを実証するため、13名の隊員とともに探検船・フラム号に乗って出発し、北極海の氷に閉じ込められますが、3年という長い年月ののちに一人も犠牲者を出すことなく帰国します。その過酷で偉大な探検はもちろん、北極の生き物との遭遇の様子にも驚くばかり。
地球上で人間が決して息づくことの出来なかった遥か遠い場所、南極。私たちが普段暮らしている日常とはかけ離れた、地球の果てで暮らす生き物とそこで繰り広げられる大自然の表情が美しい写真とともに綴られています。私が南極を舞台に生物を研究するに至ったのにはどんな理由があったのか。このインタビューだけでは語りきれなかった、自然科学者を志して進んできた経緯も書かれています。自然科学の道を目指す高校生には特に刺激になるのではないかと思います。
植物生理生態学者・田邊優貴子「すてきな地球の果て」インタビュー(byポプラ社)
『すてきな 地球の果て』の刊行を記念して
田邊優貴子さんのトーク&サイン会が開催されます!
「私が極地で出会った、不思議な自然と生き物たち」
日時:2013年8月29日(木) 19時00分~(開場18時30分)
参加費:無料
★詳細は八重洲ブックセンター本店のイベント情報をご参照ください。
http://www.yaesu-book.co.jp/events/talk/1509/
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プロフィール
田邊 優貴子
1978年、青森市生まれ。早稲田大学高等研究所・助教。博士(理学)。2006年、京都大学大学院博士課程退学後、2008年、総合研究大学院大学博士課程修了。国立極地研究所、東京大学での勤務を経て現職。2007~2008年に第49次日本南極地域観測隊、2009~2010年に51次隊、2011~2012年に53次隊に参加。その他にも北極・スヴァールバル諸島、ウガンダ、国内の高山をフィールドに生態系の研究をしながら、地球やそこに息づく生命の不思議さ・素晴らしさ伝えるべく講演や執筆活動を行っている。