支援者の「バカの壁」 ―― 「どうせ・しゃあない」を乗り越えて

11月8日に出版された『権利擁護が支援を変える――セルフアドボカシーから虐待防止まで』(現代書館)の著者・竹端寛氏は、支援現場には、生きづらさを抱える人々を無力化させる「専門家支配」という権威主義的な構造があると指摘し、その構造を転換するために、「権利擁護」を主軸にした新しい支援のありかたを提示する。当事者と支援者が共に物語を紡いでいく「権利擁護」支援とは一体どんなものなのか、お話をうかがった。(聞き手・構成/金子昂)

 

 

「説得モード」ではなく「納得モード」で

 

―― 本書では、現在の高齢者・障害者支援には専門家支配という権威主義的な構造があると指摘されています。どういった構造で、何が問題なのでしょうか。

 

そもそも支援とは、その人の願いや思いを支えるものです。でも実際の「支援」現場では、支援者と当事者が対等な関係にある支援ではなく、上下関係にある「支配」となってしまう場面があります。そこには、権威主義的な構造が働いています。

 

「裁判を起こす」「入院して手術する」といった場合、情報の非対称性が大きいので、何を目指すのかという目的も、どうやってそこに至るのかという方法論も、弁護士や医者にお任せしなければうまくいかないことが多いですよね。でもそれは裁判所や病院という限られた空間で、ある目的を果たすための、時間と空間が限定された出来事です。一方、地域で生活支援に関わる支援者は、対象者が暮らしている世界の中で、対象者と全人的かつ継続的に関わることになりますから、「専門家支配」と言われるような「支援」をしてしまうと、まさに対象者の全生活を支配することになります。

 

当然のことですけど、支援の主人公は本人です。対象者が子供でも患者でも障害者でも高齢者でも同じです。対象者にとって支援とは、生活を継続していく上でより自分らしく生きられるようになるために必要なものです。教育・福祉的支援、あるいは在宅医療の支援なども、支援対象者にとって、それらの支援は生活のすべてではなく、自分の人生の一部分でしかないはずです。

 

そのような地域生活での病気や障害の「しんどさ」や生活の「しづらさ」の内実を、誰が一番把握しているか。それは言うまでもなく、その「しんどさ」「しづらさ」を抱えるご本人ですよね。しかし権威主義的構造においては、専門家がある種の思い込みでそれらを「知っているふり」をして、さまざまな「支援」を本人に押し付けて、対象者を結果的に「支配」してしまう。それはときに、本人の実存に破壊的なダメージを与えることだってあります。

 

「支配者」という位置づけでは、一方的に「~しなければいけない」という「説得モード」になります。しかし誰もがそうだと思いますが、いくら他人に「~すべきだ」と言われても、納得できなかったら、いくら良いアドバイスであっても、自分の行動変容につながりませんよね。支援を求めているということは、何かに困ってるということ、まさに「困ってるズ」なわけですが、そのとき「~すべきだ」と一方的に規範を押し付ける上下関係ではなく、「何に困っておられるのですか? よかったら、どうしたらいいか一緒に考えてみませんか?」と共に考え合う中で、本人が納得して行動変容できるような支援が必要です。つまり、「納得モード」においては、対等あるいは斜め上から引っ張っていく関係が大切なんです。これは支援する側とされる側が、対話する関係の中から、一緒に支援の物語を紡ぐ関係になっている。「説得モード」とは違って、めっちゃ面白いですよね。

 

 

kenri

 

 

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