地方議会の現状をどのように考えるべきか

最近、地方政治における対立が顕著に表れるようになっている。

 

市長が議会や職員と激しく対立した上に専決処分を繰り返した鹿児島県阿久根市、市長自らが議会のリコール請求運動の先頭に立つ名古屋市、知事が新会派を自ら立ち上げて議会多数派の確保に動く大阪府など、いずれも従来あまり例がなかった感のある動きである。

 

 

議会そのものの否定

 

とはいえ、地方政治にはこれまで対立がなかったと信じられているのだとすれば、それは単なる思い込みか「神話」というべきであろう。

 

現在の地方自治制度が形成された戦後にかぎっても、首長と議会、議会と職員、首長と職員、さらには議会内部に、さまざまな対立が形成されてきた。とくに、首長と議会多数派が異なった政党を基盤としている場合には、両者の対立は先鋭的なものになりがちであった。1970年代を頂点に、大都市やその近郊で多く見られた革新自治体は、その典型例である。

 

ただ、これら過去の例と最近の例のあいだに大きな違いもある。

 

それは、近年の対立の場合、とりわけ首長と議会が対立する際に、首長が議会内の反対派だけではなく、議会を全体として否定的に扱う傾向が見られることである。上に挙げた阿久根市や名古屋市は代表的で、市長は政策や政治姿勢の差異を、首長と議会の部門間対立、さらには議会の制度的否定に置き換えているようにも思われる。

 

なぜそのようなことが起こるのだろうか。本来、議会多数派と政策や政治姿勢が異なる場合にも、首長を支持する議員も存在するはずだから、議会に対する制度的否定にはつながらない。

 

その意味では、議会そのものの存在意義は否定せず、首長シンパの議員を糾合してその数を増やそうとする大阪府の場合は、実は比較的オーソドックスな手法をとっている。それに対して名古屋市や阿久根市の場合は異例の手法ということになるが、注目すべきは議会の制度的否定が相当数の市民の支持を獲得していることである。

 

 

選挙制度の問題

 

地方議会が制度的に否定され、それが一定以上の支持を受ける理由としては、選挙制度の問題があるように筆者には思われてならない。

 

現在の地方議会の選挙制度は、都道府県においては市町村や郡を単一選挙区とする定数1~10以上の混合、政令指定都市を除く市町村では当該自治体全体を単一選挙区とする大選挙区制、政令指定都市は行政区を選挙区とする中選挙区制であることが多い。人口の少ない一部の町村から選出される都道府県議会議員を除くと、地方議員の多数は中選挙区か大選挙区から選出されている。

 

中選挙区や大選挙区の特徴は、当選に必要な得票率が低くなることである。たとえば、定数1の小選挙区ならば通常50%程度の得票率(相対得票率)が当選には必要だが、定数4の中選挙区であれば20%程度、定数10の大選挙区になると10%ほどまで当選ラインは下がる。

 

言い換えれば、中選挙区や大選挙区では選挙区内の有権者の一部を代表することで当選できるのである。

 

この仕組みには良い面もあって、たとえば社会文化的な少数派のために活動している新人が当選しやすいのは、小選挙区ではなく中選挙区や大選挙区であることは間違いない。だがその一方で、自治体内の20%とか10%の有権者からの支持しか受けていないことは、議員をマイナーな利益の代弁者にしてしまいがちでもある。

 

 

自ら積極的な意義づけを

 

だとすれば、議会批判の源泉のひとつは、首長から否定的な扱いを受けた議会側が、自治体内の少数派を代表していることの積極的な意義や理由を自ら提示できていないところにあるのかもしれない。

 

違法な専決処分や、政策論争をすり替えるための根拠なき議員特権批判は論外であり、それらにはあらゆる手段を駆使して対決するのが当然である。同時に、自治体全体の利益への目配りを欠き、かつ少数派を代表する意義づけが十分にできないというのであれば、地方議会の選挙制度も再検討される必要があるだろう。

 

 

推薦図書

 

地方財政の行政学的分析 (大阪市立大学法学叢書)

著者/訳者:北村 亘

出版社:有斐閣( 2009-02 )

定価:

Amazon価格:¥ 13,952

単行本 ( 192 ページ )

ISBN-10 : 4641049807

ISBN-13 : 9784641049802


 

地方政治を考える上では、本文に述べた地方自治体内部での対立だけではなく、中央政府と地方自治体の関係も大きな意味をもつ。本書は、主として1970年代以降の地方財源が中央政府においていかに確保されてきたかについて、制度構造上の特徴とその下での政党や省庁の行動に注目しながら分析を試みた学術書である。近似したポイントに注目しつつ、公共経済学の立場からより批判的な検討を加える、土居丈朗『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社)もお薦め。

 

 

 

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