「脱原発ロードマップ」と新エネルギーの展望

3.11以降日本では、原発推進・反対を超えて、原子力発電の巨大なリスクの認識と、中長期的なエネルギー供給の見通しを共有していくことが大きな課題となっている。どのようなロードマップをもとにエネルギー政策を進めていくのか、政治が具体的な見取り図を示すことが必要だ。

 

6月23日、東京都三鷹市の国際基督教大学で、同学の在校生・卒業生が中心となる「武蔵野エネルギーシフト」が企画し、同学社会科学研究所が主催となって「ローカルから考えるポスト3.11の新エネルギーの展望」と題したイベントが行われた。企画者からの問題提起を受けた菅氏は、「脱原発ロードマップ」の内容を提示し、党派を超えた「国民の選択」を問いかけた。講演での発言を記録しここに公開する。(構成/宮崎直子)

 

 

原発に依存しないことが最も安全な道

 

これから3つのことを申し上げようと思います。1つは今回の福島原発について何があったかということに触れたいと思います。もう1つは今日の主要テーマである「脱原発ロードマップ」について。そして、最後にこれからの再生可能エネルギーの可能性について紹介できることを含めて申し上げたいと思っております。

 

昨年の3月11日、皆さんもあのとき自分がどこにいたかということを、たぶん一生記憶に残されるのではないでしょうか。私も決算委員会でちょうど野党から激しく責め立てられておりました。シャンデリアが揺れて、私の上ではなかったのですが、落ちたらこれは大変だなという状況の中で、休憩になり官邸にすぐに戻ってという記憶を鮮明にいたしております。その後1時間ほど経って津波が来襲し、全電源喪失、さらには供給機能停止ということが続いたわけであります。

 

端的にいいまして、今回の原発事故がここまで大きな事故になった原因は、3.11以前の備え、あるいは以前の考え方がまったく不十分であったということに尽きると思っております。2、3例を挙げてみます。

 

たとえば福島原発のある場所は、もともとの地形は海面から35メートルぐらいの高さの崖、高台でした。しかしその35メートルの高さにあった崖、高台を海面から10メートルの高さまで土を切り取り、その上に現在6基の原発が設置されています。海から水をくみ上げるのに35メートルでは高すぎるという理由で低くしたわけですが、そのことは大変先見の明があったと、東電の会社の歴史を書いた本には自ら述べておられます。

 

しかし、私が知るかぎりでも、今から数十年前にはチリの津波がありましたし、その後の歴史を見ても、何十年、何百年かおきには非常に高い津波が起きています。東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)では、作るときに当時の副社長の方が東北出身で、「これでは低すぎるからもっと高くしないと」ということで、一段と高いところに設置しました。おかげで、同じぐらいの高さの津波が襲ったわけでありますが、女川原発はそうした事故に至らないですんでいます。つまりは、まったく津波を想定しなかったという現実がありました。

 

また、比較的最近のことでいえば、アメリカは9.11のテロのあとに、原発の全電源喪失がテロによって起きる可能性があるといいました。その場合にはどの班が対応するのか、かなりしっかりしたマニュアルを作って、日本の原子力安全・保安院にも伝え、あるいは保安院からもアメリカに行って話を聞いたといわれています。

 

しかし日本でそのことについてどうしたか。「いや、日本ではテロなんか起きないからそんなことを考える必要はない」となったわけです。つまり、全電源喪失ということは、津波も来ないしテロもないから「考えない」というのではなくて、「考えることはやめろ」ということが、3.11前の原子力委員会などの指針の内容になっておりました。

 

そういった意味で、今回の事故がここまで大きな事故になった原因というのは、残念ながらといいましょうか、私は日本の科学技術というのはかなり高い水準にあって、当然安全性については十分に考えられているというふうに私自身も思っていたわけでありますが、結果としてそうではなかったことが、こういった大きな事故につながったわけです。

 

 

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