どのエネルギーをどれだけ選ぶ?――これからのエネルギー政策を考える

6月22日公示、7月10日投開票の第24回参議院議員選挙。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから最初の投票となります。シノドスでは「18歳からの選挙入門」と題して、今回初めて投票権を持つ高校生を対象に、経済、社会保障、教育、国際、労働など、さまざまな分野の専門家にポイントを解説していただく連載を始めます。本稿を参考に、改めて各党の公約・政策を検討いただければ幸いです。今回は、エネルギー政策の観点から、古屋将太さんにご寄稿をいただきました。(シノドス編集部)

 

 

エネルギー政策と選挙

 

現代社会を運営していく上で、エネルギーは必要不可欠であることは誰もが理解できると思います。

 

たとえば、朝起きてまずスマートフォンで情報をチェックするとき。そのスマートフォンは充電ケーブルにつながっていて、その充電ケーブルはコンセントにつながっていて、そのコンセントは地域の配電網につながっていて、その配電網は送電線につながっていて、その送電線の先には火力発電所、原子力発電所、自然エネルギー発電所などがあり、それらが発電した電力を私たちは日々使っています。(電力)

 

また、毎日洗面台やシャワーで使うお湯も、蛇口のもとをたどっていけば給湯器があり、そこでは多くの場合ガスを燃やした熱でお湯がつくられています。(熱)

 

さらに、電車での通勤・通学であれば電力が動力になっていて、自動車やバスを利用するのであればガソリンが燃料として使われています。(輸送燃料)

 

このように、ほんのちょっと日々の行動を振り返ってみるだけでも、「電力・熱・輸送燃料」というエネルギーの3つの柱に、誰もがかかわっていることがわかります。もちろん、企業が生産活動をおこなう上でも、さまざまなかたちでエネルギーが使われています。

 

私たちの生活に必要不可欠なエネルギーですが、現在のエネルギーの使い方でいつまでも使いたい量を使いたいだけ使えるわけではありません。

 

現在エネルギー供給の多くの割合をまかなっている化石燃料(石油、石炭、天然ガス)は、埋蔵量が有限であるため、資源量そのものに制約があります。その上、化石燃料は使えば使うほどCO2を排出して温暖化問題を加速させてしまうため、炭素排出に対する制約を考える必要もあります。

 

では、原子力はどうでしょうか。福島原発事故で明らかになったように、事故が発生した場合の影響は計り知れません。仮に、さまざまな安全対策をとることで事故が起こらなくなったとしても、原発を稼働することで使用済み核燃料が発生します。誰がどのように責任をもって長期的に管理するのかを考える必要があります。

 

それでは、風力発電や太陽光発電などに代表される自然エネルギーはどうでしょうか。風、太陽、水、地熱、森林など植物由来のバイオマスといった自然にある資源を再生可能な範囲で利用するかぎり、化石燃料のような資源制約や炭素制約はありません。その上、原子力のような計り知れない影響を生む事故リスクもなく、使用済み核燃料の問題もないのです。理想のエネルギーのように思うかもしれませんが、いままでよりもコストがかかってしまう面もあります。

 

このように、「エネルギー」と一口に言っても、非常に多くの制約や課題を考える必要があり、その方向性やルールを「政策(=法律)」で決めることが求められるのです。そして、国としての「エネルギー政策」をつくり、決めるのが国会議員の重要な仕事であり、国政選挙はその国会議員を選ぶ機会なのです。

 

では、エネルギー政策の観点から選挙での投票先を考えるには、どういった点に注目すればいいのでしょうか。選挙では経済、社会福祉、外交、農業……とさまざまな社会課題の一つとしてエネルギー政策が取り上げられます。

 

そのため、エネルギー政策についての記述や発言は、ごく簡単なものにならざるをえません。そういった限定的な情報の中から投票の判断を下すには、いくつかの重要なポイントについて、それぞれの政党や政治家個人がどのような考え方をもっているのかを読み解くことが重要になります。(重要なポイントであるにもかかわらず、政党や政治家が言及していない場合は、直接問い合わせてみることも大事です。)

 

ここでは、エネルギー政策を読み解く、4つのポイントについて解説したいと思います。

 

 

長期的なエネルギーのあり方についての方向性

 

第一に、長期的な日本のエネルギーのあり方の方向性についてです。各政党や政治家がどのように考えているのかを読み解くことがポイントになります。具体的な指標になるのは、2030年や2050年といった将来の時点で日本がどのようなエネルギー供給の構造になっているかを示す「目標値」です。

 

現在の政権与党は、2015年7月に「長期エネルギー需給見通し」を発表しており、今回の選挙でもここで示した内容を踏襲することになるでしょう。長期エネルギー需給見通しでは、2030年の電力供給に占める望ましい電源構成は石油3%、石炭26%、天然ガス27%、原子力20〜22%、自然エネルギー22〜24%(水力8.8〜9.2%、太陽光7.0%、風力1.7%、バイオマス3.7〜4.6%、地熱1.0〜11.%)と示されています。(図1)

 

 

図1

図1. 2030年の電源構成 出典:長期エネルギー需給見通し

 

 

この数字からわかることは、現在ほとんど停止中の原子力発電を再稼働していくという方向性です。また、自然エネルギーについては、今後も増やしていく一方で、国際的な動向から見ると、先進国の目標値としては必ずしも意欲的とは言えない数字として見ることができます。(多くの先進国で2030年の目標値は30〜40%以上)

 

参考

現在の日本の「エネルギー基本計画」および「長期エネルギー需給見通し

世界の自然エネルギーの動向については、REN21「自然エネルギー世界白書2015」(英語最新版は ”Renewables 2016 Global Status Report”)

 

一方、野党である民進党は、民主党時代に掲げていた2030年代原発稼働ゼロ、2030年に自然エネルギー30%という目標値を引き続き掲げていくことが述べられています。

 

参考

民進党「分散型エネルギー社会推進4法案を衆院に提出」(2016年04月28日)

 

野党各党が考える長期的なエネルギーのあり方については、必ずしもすべての政党が将来の電源構成といったかたちで示しているわけではないため、単純に比較することは難しいかもしれません。ですが、原発の再稼働と自然エネルギー促進ついて、各党がどのような見通しをもっているのか知ることができます。

 

ただし、基本的に目標値は政党レベルでまとめて発表するものです。党内でも意見は多様であり、政治家によってはもっと原発を増やすべきという意見をもつ人や、自然エネルギーをもっと増やすべきという意見をもつ人もいるため、党だけでなく、政治家個人のレベルでどのような考え方をもっているのかも注目していきましょう。

 

 

原子力について

 

第二に、原子力発電についてです。福島第一原子力発電所事故をきっかけに、原子力発電所の動向は大きな注目を集めています。

 

今後も再稼働する/しないにかかわらず、使用済み核燃料および高レベル放射性廃棄物の処理について、各政党や政治家がどのように考えているのかを読み解くことがもっとも重要な参照ポイントになります。

 

原子力発電を続けるのであれば、避けて通ることができないのが使用済み核燃料および高レベル放射性廃棄物の処理の問題です。

 

スペースの都合上、本稿で日本の原子力政策に詳細に立ち入ることはできませんが、河野太郎さんが福島原発事故以前から指摘している通り、高速増殖炉は実用化する見込みがなく、核燃料サイクル計画は破綻しています。

 

ですので、すでに発生している分も含め、どのようなかたちで使用済み核燃料および高レベル放射性廃棄物の暫定保管に向けた道筋をつくるのか、どのような議論の場をつくるのかが、なによりも重要なポイントです。

 

参考

河野太郎の指摘「日本のエネルギー政策」シリーズ1原子力発電(2009年8月12日)

もんじゅ君のブログ「もしも高速増殖炉もんじゅをやめたら、どんな影響があるの?が5分でわかる、25のQ&A」(2013年5月13日)

 

長年、エネルギー問題に取り組んできた政治家であればこの問題に対する明確な意見をもっているかもしれませんが、多くの政治家は必ずしもこの問題に対する意見をもっていないかもしれません。また、「暫定保管に向けた国民的な合意形成は重要ですね」といったかたちで、一般論として受け止められてしまう可能性もあります。

 

しかし、使用済み核燃料および高レベル放射性廃棄物の問題にどのように対処するかによって、原子力発電所の再稼働問題だけでなく、将来世代がどのような負担を抱えることになるのかが決まるため、一般論としてではなく、個別の重要な政策課題として政治家や政党に問いかけることが必要です。

 

なお、この問題については、2010年9月に内閣府原子力委員会から、科学者の代表機関である日本学術会議に審議依頼が出されました。3.11をはさんで審議がおこなわれ、2012年9月11日に「高レベル放射性廃棄物の処分について」という回答レポートが出されています。さらに、このレポートをフォローアップする検討委員会が「国民的合意形成にむけた暫定保管」というサブタイトルをつけた政策提言を2015年4月25日に発表しています。

 

参考

日本学術会議「高レベル放射性廃棄物の処分について」(2012年9月11日)

日本学術会議「高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策提言 – 国民的合意形成に向けた暫定保管 」(2015年4月24日)

 

つまり、すでに科学者の間ではこの問題についてさまざまな角度から審議がおこなわれており、現状の問題点と進むべき方向性も提示されていると言えます(政策の抜本的な見直し、暫定保管と総量管理、多段階合意形成の手続き)。

 

そのため、いま有権者に問われているのは、こうした提言を受け止め、実際に国民的合意形成に向けた議論の場をつくり出すことに真剣に取り組む政治家かどうかを選挙の機会に見極めることだと言えます。【次ページにつづく】

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シノドス国際社会動向研究所

vol.220 特集:スティグマと支援

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・内田良「児童虐待におけるスティグマ――『2分の1成人式』を手がかりに考える」

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